第1495話 エルヴィス伯爵邸に戻ってみると。5(追加の試作と部下の評価。)
米の用意も終わり、皆が夕食の準備をしていた。
「で・・・タケオ、仕分けをしている時に出てきた割れちゃった玄米だけど・・・」
「ちょっとした量がありますね。
東町では捨ててましたが、勿体ないですよね。
何か出来ますかね・・・」
武雄とコノハは厨房の一角で著しく割れた玄米を見ながら話し合っている。
「玄米を食べた感じはうるち米というよりもち米寄りだった感想ね。
それはタケオもでしょう?」
「そうですね。
したいのは白玉ですかね。
あんこがあるのでぜんざいを作ってみようかと。」
「あれはもち米が原料よ。
うるち米よりモチっとしていると言ってても・・・難しいかな。」
「ん~・・・団子かせんべい?」
「せんべいとなると上新粉かぁ・・・あれ精米したうるち米を使うのよね。
でも完璧でなく近い物で良いなら、炊いた玄米を薄く円にしてフライパンで焼いてみるという手はありそうよ。」
「・・・ふむ・・・ちょっとしたおこげですね。」
「あ、そうね。
薄焼きおこげという感じになるわね。
やってみる?」
「とりあえず準備しましょうか。
失敗したらまた違う事を考えましょう。」
「タケオのその労力を惜しまない所は好きよ。
漬け置きしている間に味は考えれば良いよね。」
「はいはい、では研いでいきますか。」
「よろしく~。」
武雄とコノハの料理が始まる。
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エルヴィス家総監部の庁舎内のキタミザト家執事室(仮)。
「ふぅ・・・歩き回りましたね。」
アスセナが机に座りお茶を飲んでいる。
「そうですね。
主と歩いて緊張しましたか?」
ヴィクターもアスセナが淹れたお茶を飲みつつ話をし始める。
「はい、ヴィクター様。
それと同時に途中から呆れましたが。」
「そこはそのうち慣れます。
今回の収穫はアスセナが常に利益を考えているというのがわかりましたね。」
「出過ぎた事を言ってしまい申し訳ありません。」
「構いません。
主も言っていましたが、身近に苦言や疑問を呈する者が居るというのは心強い物です。
主も常に自分が絶対正しいとは思っていない証拠です。
良い施政者です。」
「柔軟という所なのでしょうか?」
「言い方としては柔軟という感じですね。
主は自らが求める結果が得られるなら多少の変更は良い事だと思っているという事ですね。
こちらの提案と相手の提案を見比べて良い方法を採択する事を望まれるという事でしょう。
それにほとんどの生産品は新たに作り出す物なのです。
こちらが提案する物より良い製作方法が提示されても驚きはいたしません。
彼らは専門家なのです。」
「はい、私も今後はそう考えます。
しかしローチ工房ではああも簡単に新素材をお教えするとは思いませんでした。」
「無理に隠す必要はないと考えたのでしょう。
むしろほぼ正確な素材を示す事によって設計者と製作者に対してこれから起こりうる事を想像し易くしたと言えるかと思います。
船の設計をするダン様はどういった図面が必要か必死に考えるでしょう。」
「なるほど。
それにしても今の船が木を材料にしているという所を今後は液体を固まらせて作るというのは求められる図面はそれほどまでに違うのでしょうか?」
アスセナが首を傾かせて聞いてくる。
「4名の顔色・・・正確にはダン様の顔色を見る限りでは、相当大変な事なのでしょう。」
ヴィクターが頷く。
「キャロル様も些か放心状態でしたが。」
「遠くを見ておいででしたね。
あそこはコンテナの設計と製作でしょう。
これからの工程を考えるのに顔の筋肉を使う力も頭に回したのでしょう。
それほどまでに必死になって仕事を請けるという姿勢は大したものですね。」
ヴィクターが真面目に言っている。
「・・・はい。」
アスセナがヴィクターが真面目に言っているので冗談だと薄々わかっていても頷くしか出来ない。
「さて・・・アスセナは今日の議事録のまとめを。
私は総監部で研究所の人員に食券は購入出来るのかの確認をしてきます。」
「はい、畏まりました。
いってらっしゃいませ。」
「留守を頼みますよ。」
ヴィクターが部屋を出て行く。
「まとめ・・・こんなにいっぱいかぁ・・・定時までに終わるのかなぁ・・・」
アスセナが今日のメモを取り出して少し愚痴るのだった。
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総監部の小会議室。
「では銅貨10枚という事でしょうか?」
ヴィクターが着いて早々すぐに総監部から提示されたキタミザト家向けの食券の費用を聞かされて確認をしている。
「はい、1食当たりの予算が銅貨10枚となっております。
これと同額です。
また販売枚数は10枚1組としております。
食券がない場合は銅貨12枚を払って頂く事になります。」
「そちらは了解しました。
献立のような物は出るのでしょうか?」
「はい、担当の料理人より2週間前までにメニューが来ます。
そちらを各部局に配布し、総監部にも予備をご用意いたします。
ヴィクター殿も取りに来られますか?」
「はい、所長室用と総監殿用にそれと研究室と試験小隊向けにも頂けたらと思います。」
「予備も入れて追加で5枚ですね。
わかりました。
ご用意しておきます。」
「よろしくお願いします。
それと他に注意点はありますか?」
「そうですね・・・研究所の方々向けには特にはありません。」
「畏まりました。
では、失礼します。」
ヴィクターが席を立つのだった。
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