第1493話 エルヴィス伯爵邸に戻ってみると。3(伯爵達との会話。)
片付けも終わらせ、夕霧達と武雄は客間に戻ってくる。
「ほぉ、エリカ殿、そこに攻め入るか。」
「はい、ここが空いております。」
「へぇ~・・・そこなんですね。」
エルヴィス爺さんとエリカが将棋をしており、アリスが2人の対局を観戦していた。
「ん?タケオ様、終わったのですか?」
アリスが聞いてくる。
「はい、夕霧、時雨、初雪が迅速に動いてくれましたからね。
あっという間です。」
「3人共ご苦労様。」
「ん、お仕事ですから。」
「そうっス。」
「3人だとすぐに終わる。」
夕霧達3人が席に座りながら答える。
「で、何をしているのですか?」
「今は、変則的な将棋をしていますよ。」
「また変な事を考えたのですね。
どんな感じでしているのですか?」
「3列目の兵士はそのままでその他の駒を2列以内ならどこに初期配置しても良いとしました。」
「・・・うん・・・なるほど。」
武雄が考えながら頷くが「確かそういうのって結果的にいつもの配置が臨機応変に対処出来て良いとなるはずなんだけどな」と思っていたりする。
「で、エリカさんは隅にまとめて、お爺さまは中央にまとめたのです。」
「うん・・・で・・・どちらが優勢ですか?」
「ん~・・・私の目からだと・・・エリカさんがお爺さまの隅の陣地を取りに行っているのですけど。」
「アリス、そこは招き入れて殲滅をする気なのじゃがな?」
「そうはいかないと・・・思います。」
エリカが次の手を指す。
「・・・ふむ、ならここじゃの。」
エルヴィス爺さんがすぐに駒を動かす。
「あ・・・ん~・・・となると・・・」
エリカが考え出す。
「まぁ2人とも楽しそうなら良いですけどね。
コノハは厨房ですか?」
「はい、さっきヴィクターとアスセナさんが退出していきましたけど。
どこに向かったのですか?」
武雄が席に着くと対面にアリスが座り、リバーシを用意し始めながら聞いてくる。
「明日、ベルテ一家とステノ技研の面々に玄米の作り方を見せようと思ってですね。
ベルテ一家の所に取りに行って貰っています。」
武雄が何も言わないでリバーシを始める。
「あ~・・・今日してしまいましたしね。
ではベルテ一家には食べて貰って米の大切さを説くというのは何となくわかりますが、技術工房のステノ技研はどうして呼ぶのですか?
スズネさんだけでもよろしいのでは?」
アリスも話しながらリバーシを開始する。
「ステノ技研にはさっきまでしていた玄米作りを楽にさせられるであろう装置の開発をして貰います。
今、結構人手が必要でしょう?
これを1人か2人で出来ればその分他の人が違う事が出来ますからね。」
「ならもっと米が食べられるのですね!」
アリスが嬉しそうに聞いてくる。
「アリス、米はそんなに美味しかったのかの?」
エルヴィス爺さんが将棋盤から顔を上げてアリスに聞く。
「はい!お爺さま!
カレーに合うんです!今日の夕食はトリカツとカレー!
これは期待ですよ!
お爺さまも驚かれると思います!」
アリスが満面の笑みで言ってくる。
「ほぉ、アリスがそこまで言うとは。」
「確かにあのカレーは美味しかったですよね。
タケオさん、米の増産が出来たらぜひに装置と一緒に第3皇子一家にも売ってくださいね。
出来れば早急に!
出来ればカレーも!」
エリカも期待に満ちた目を武雄に向ける。
「カレーはまだ出来ませんよ。
ですが、増産や輸入が大量に出来たら卸すかもしれませんね。」
「早急!早急!」
「はいはい、まずは生産者であるベルテ一家を納得させないといけないのですが・・・
まぁブリアーニ王国の方々の食べっぷりを見れば問題はなさそうというのがわかりますけどね。」
「そうですね。
魔王国側の方々は凄かったですよね。」
「ほぉ、皆が皆凄かったと言うと相当期待が出来るの。
タケオ、厨房に行かないのかの?」
エルヴィス爺さんが「より良き料理を作ってくれ」と言ってくる。
「あ~・・・コノハが監督しているのならとは思うのですが・・・」
武雄が次の駒を置くと。
「タケオー!ちょっと来て!」
コノハが扉を開け客間に入ってくる。
「・・・呼ばれました。
多分・・・米の研ぎが出来ないのでしょう?」
「タケオ!わかってたの!?なら来てよ!」
コノハが怒る。
「普通なら米研ぎなんてしませんからね。
洗うと口で説明しても難しいでしょうからね。
はい、ではアリス、エルヴィスさん、エリカさん、厨房に行ってきます。」
武雄が席を立つ。
「うむ、頼むの。」
「はーい、待ってます。」
エルヴィス爺さんとエリカが手をヒラヒラ振ってお見送り。
「じゃあリバーシはおわ」
「アリス、続きは私が相手です。」
夕霧がアリスの対面に座っていた。
「わぁ・・・負けだぁ。」
アリスは敗戦を覚悟したのだった。
武雄とコノハは連れ立って厨房に向かっていた。
「コノハ、さっきも言いましたが、明日の玄米の作業が終わったら木臼を貸してくれませんか?
あれを量産化してきます。」
「いいわよ~、さっきはステノ技研でするとか言っていたけど。
本当にステノ技研に頼むの?」
「ん~・・・木の事なのでハワース商会か、唐箕を作るステノ技研かの2択。
で、仁王様が居るのでステノ技研の方が早いかなぁとは思ったのですよね。」
「まぁ玄米関係はステノ技研に集約すれば良いかもね。」
「唐箕にも木臼は使うでしょうしね。」
「・・・??・・・タケオ、唐箕で木臼は使わないわよ??」
武雄の言葉にコノハが首を傾げながら聞いてくる。
「唐箕に取り付けて、籾状態の米を投入すれば木臼を通して籾摺りから玄米までを一連の工程で済ませられるかと思ったのです。」
「・・・あ~・・・うん、タケオの言いたい事はわかったわ。
チャレンジをするのね。」
「はい、足踏みミシンの機構を使えば木臼を回しながら唐箕とかいう装置も動かせそうじゃないですか。」
「・・・なるほどねぇ。
これはこれで面白いのかなぁ。」
コノハが考えながら頷くのだった。
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