第1490話 運送屋の密会。8(追手が来ない。陛下の評価。)
会合場所からブリアーニ王国の王都までの街道沿いにある町にて。
「イグノト殿、追手がないようですが?」
「そう思わせて襲ってくる奴らですよ。
すみませんが、馬を替えたらすぐに出立してブリアーニ王国の王都で様子見です!
そこまではお願いしますよ?」
「ええ・・・まぁ警戒はしておきますが・・・それらしいのは居ませんよ?
回りはエルフばっかりですし。
なんならあそこの喫茶店でお茶をしながら休憩しませんか?」
「ダメです、殺るか殺られるかなのです・・・しっかりとした建物がある所まで行くべきです。」
「はぁ、そうですか・・・」
イグノトが建物に背を預けながら警護をしてくれている2名と話している。
「お待たせ、話は付いたぞ。
馬の交換は少しの上乗せで済んだ、はい、おつり。」
交渉をしてきた警護の1人が近寄って来てイグノトに報告する。
「では、すぐに出立しましょう。」
「え?え?襲撃者居ない感じだが?」
「そう思わせて・・・というのがあるかもしれませんからね。
出立です。」
「そうかぁ・・・
説得は無駄だった?」
「「ええ。」」
残っていた2名が頷く。
「はぁ・・・依頼を受けたんだ、やるしかないだろう!」
自分に言い聞かすように喝を入れる。
「はいはい、準備、準備。
で?馬は?」
「お!あっちだ!」
交渉をしてきた者が3人を連れて馬の居る所に行くのだった。
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会合をしていた広間からの小道の1つ。
「くそっ!
指揮官とか言っていたが、あの呼称は魔王国の王軍か!
今回は間抜けな現場指揮官だったが次はこうも行かないだろう!
この会合場所も変更だ!
イグノトめ!!」
オリーヴが愚痴を言いながら小道を駆け抜けていた。
その後ろを同じ速度で森の中をほぼ無音で追っていく一団が居た。
「・・・あの爺さん、何かしゃべってないか?」
「良く聞こえるな。」
「耳が良いのは種族のお陰でね。」
「ふーん、ん?どうした?」
「匂いが薄くなった。
風が変わったか?」
「風か・・・結構来たのかも。
てか爺さんの匂いなんて嗅ぎたくもないな。
嗅ぐならせめて女性にして欲しい物だ。」
「「全く全く!」」
「婆さんでも良いのか?」
「若いのに限ります!」
「ほら!雑談は後にしろ!
尾行に集中!」
「「「はい!班長!」」」
意外と余裕で付いて行っているようだ。
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イグノトがさっきまで居た町。
「あれ?・・・居ない。
小隊長~!連絡できませんでした!小隊長!」
幼女と見間違えるような小柄な少女がとある喫茶店内を見て大声を上げていた。
「小隊長とか大声で言わない!
1回呼べばわかる!」
「げふっ!」
と後ろから来た男性に頭を殴られる。
「報告は直ぐに!大声で!って習いました!小隊長!」
「時と場合による!
それと連呼するな!」
「ぐふっ!」
再び頭を殴られる。
「さて・・・この調子だと先に向かっ・・・」
とすれ違い様に歩行者からこっそりとメモ書きを手渡される。
「了解。」
小隊長と呼ばれた男性が顔を動かさないままボソッと呟く。
「小隊長?」
「・・・彼らが居なかったのは残念だ。
皆の所に戻るぞ。」
「おぉぉお茶~!?」
「無駄に経費は使えないし、お前が騒ぐから入れない。
行くぞ!」
「そんなぁ~・・・」
小隊長がどんどん先に進むのだった。
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魔王国 王城 第1軍指揮官執務室。
「ふぅ・・・静かで良いですね。」
第1軍指揮官フレッディがお茶を片手に書類を見ている。
「指揮官殿、ヴァレーリ陛下が現場視察に行かれてから寛いでいらっしゃいますね。」
同室の指揮官補佐が書類を仕分けしながら聞いてくる。
「まぁな。
居なかったら書類が溜まるが、居たら居たで面倒な陛下だからな。」
「実務はされていると認識しておりますが?」
「しているが、被害は大きい。
厨房に行ってのつまみ食い、菓子と酒を貯め込み夜な夜な酒盛り、勝手に軍の訓練に参加、仕事の途中で抜け出し街中を徘徊・・・上げだしたらキリがない。」
「最初の2個は可愛らしい物ではないですか。
それに訓練参加は部下達の激励、街中の視察は皆への領民が不満はないかの確認。
施政者として好感が持てますね。」
「・・・ふっ、指揮補佐官は陛下の事がわかってないな。
つまみ食いは皆の夕食が1品なくなる程度まで持っていくぞ?」
「ん?」
「菓子と酒は陛下の給料と陛下への特別経費をほぼ全部使っている感じだ。」
「んん?」
「第2軍へのしごきは知っているだろう?」
「まぁ、医務室送りの新記録でしたか?」
「視察中に勝手に物を購入して自室に貯め込んでいるぞ?
メイド長が相談に来た。」
「陛下の部屋そこまで大きかったでしたっけ?」
「はぁ・・・静かで良いな。」
フレッディがお茶を飲んで気分をリフレッシュする。
「でも・・・傍若無人ではないですよね?
自分のお金で買いたい物を買って楽しんでいらっしゃいますから。」
「・・・まぁ良く見ればな・・・
はぁ・・・もうそろそろ帰ってくるのかな?」
「現場視察はどうなっているのでしょうかね?」
「陛下と第2軍、第4軍指揮官が一緒に動いて何もないというのはないだろうな。
仕事持って帰ってくるんだろう。
お茶、おかわり。」
フレッディが指揮補佐官に言うとすぐに指揮補佐官がお茶を持って来て注ぐ。
「指揮官殿は酷評しますけど、ああ見えて陛下は政治力も統率力もありますし、先も良く見通せます。
どちらかというと理想的な上司ではあると思います。」
「・・・政治力と見通す力があり過ぎだ。
次の者が可哀そうなくらい優秀でそして欲がない。
対外的には押されれば反発するだろうが、それ以外はなあなあに済ませるのが一番と考えておいでだ。
今回の戦争も最後にして最初のわがままだろう。」
「全兵力投入なんて過去類を見ませんね。
2つか3つは同時に動かした事はあるようですけど。」
「はぁ・・・5軍が動くと費用がこんなにかかるとはな・・・」
「良い経験ですね。」
フレッディの愚痴に指揮補佐官が普通に答えるのだった。
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