第1480話 運送屋の密会。2(奴隷船への乗船許可書を入手しよう。)
小道の先には明らかに人の手で広げられた広場があり、奥には洞窟の入り口も確認出来る。
また広場には同じような小道への入り口が2か所も確認出来た。
4人は馬から降り、入ってきた小道の入り口近くに馬を繋ぎ、周囲を警戒している。
「誰も居ないな。」
「ん~・・・まだ来ていませんか・・・」
護衛者の2人が見まわす。
「さてと・・・一応契約ではブリアーニ王国の王都に戻るまではとなっていましたが、ここで契約料を払っておきます。」
イグノトが革袋を取り出しながら3人に言ってくる。
「「「ん?」」」
3人が首を傾げる。
「これからの交渉はちょっと訳ありで。
交渉内容も貴方達に聞こえないよう私1人でしてきます。
ですが、万が一の際は私を置いて帰ってくださって結構です。
戦闘をする必要はありません。」
「万が一・・・それほど危ないので?」
「危なくはないですが、まぁ相手の気分次第ですからね。
命の危険はない・・・と思いたいです。」
イグノトが考えながら言う。
「わかった。
イグノト殿、前金は頂く。
我々は騎乗して交渉を見守ろう。」
「ええ、それでお願いします。」
イグノトが頷くのだった。
・・
・
しばらくして、数十人の男達が広場に集合していた。
そして護衛3人から離れたイグノトは同じく警護している者達から離れた代表と思われる男達の前に立って話をしていた。
「イグノト・・・生きていたんだな。」
中央に居る一番風格を持った老人がイグノトに話しかけていた。
「おかげさまで・・・結果は聞いているのでしょう?」
「あぁ、届かなかったそうだな。
積み荷は?」
「破棄・・・蟲に襲われてね。
私の命だけしか残りませんでした。
荷台も馬も積み荷も・・・全部失いましたよ。」
「そうか・・・最近は多少は大人しくなったが、活性化しているからな。
俺らも注意している。
あぁそれとお前が使っていた道は破棄が決定されて迂回路が作られている。
あとで詳細は渡そう。
今後も運送業を続けるのだろう?」
「いや、すまんが私は行方不明のまま、死亡した事にしてください。」
「運送業しか出来ないお前が?
今後はどうする。
皆に頼めばどこかしら所属は出来るだろう。」
「信用が失墜した者が戻っては変な噂が立ちかねない。
その方が皆に迷惑はかけないでしょう。
今後はウィリプ連合国のドローレス国に行こうと思っています。
ついては迷惑ついでに輸送船に乗る紹介状を書いてくれないか。」
「ふむ・・・ドローレス国か・・・
ちなみにあれは?」
老人が護衛の3名を見る。
「冒険者ですよ。
積み荷があればそれなりのナイフを持たせて対応もさせられますけど・・・流石にここまで1人では危険すぎますからね。
ここの事も仲間内の会合としか言っていないし、この距離なら会話は聞こえないでしょう。」
「そうか・・・足を洗うか・・・」
「足を洗うというより逃げるといった感じですけど。
向こうで生きて行けるのかすらわかっていません、ですが、客先に知られる前に出て行かないと皆の評判が下がるでしょうからね。」
「お前がそこまで仲間思いだったとはな。」
「仲間思いでもなんでもないですよ。
ここでさらに運送業者皆の評判が落ちれば私の命が危ないだけです。
なら新天地に逃げるしかないでしょう?
ほら、無記名の乗船許可書もしくは推薦状をください。
貴方の事だし持ち歩いているんでしょう?」
「ふむ・・・」
老人が顎に手を当てながら考える。
「はぁ・・・ほら。」
イグノトが革袋を取り出し老人に見せる。
「持ち金は金貨245枚だ、向こうに渡るにしても金貨200枚で譲ってくれ。」
「・・・乗船許可書を金貨230枚で売ろう。」
「・・・向こうで金貨15枚でどうやって暮らすんだよ!
それに輸送船へ乗り込むにしても食費がかかるかもしれないだろうが!
金貨200枚で納得してください。」
「輸送船は積み荷の関係上、食料が多い。
乗船する者にも振舞われるぞ。」
「積み荷と同じものは食えません。
それは貴方もわかっているでしょうが・・・金貨205枚でどうだ。
ん?・・・ちょっとまってください、その乗船許可には身分の保証も入っているでしょうね?」
「それは当然だ。金貨225枚の乗船許可書だぞ?
一等船室とは言わないが、個室は用意してくれる・・・らしい。」
「・・・それが嘘なら出るとこ出ますからね。」
「はっ、その時はお前はもう船の上だろう。
出来ない事を交渉に乗せるな。
だが、安心しろこれは今の身分で向こうに送ってくれるちゃんとした書類だ。
狭い個室と不味い食事は付いている。
金貨228枚だが。」
「増やすな!
・・・奴隷として乗せられないだけマシか。
わかった・・・金貨223枚でお願いします。」
「・・・端数を上げろ。」
「普通は切るものです。」
「・・・」
「・・・わかった、金貨223枚で売ろう。
持っていけ。」
老人が書類を後ろの男から貰い受けイグノトに渡す。
「・・・」
イグノトが書面を確認する。
「・・・今まで世話になりました。
これが金です。」
イグノトが用意していた革袋から数枚抜き取って老人に渡す。
「今生の別れだろう。
向こうでそこそこ生きな。」
「随分と優しい言葉をかけてくださいますね。
この後、後ろからバッサリは嫌ですよ?」
「するか。
さっさと行きな。」
「爺さん、元気でな。」
「ガイオ、生きろよ。」
イグノトが許可証を懐にしまい護衛が待つ方に歩いていくのだった。
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