第1474話 追いかけるのも大変です。(ジーナは真面目だなぁ。)
「私達と同時に監視組の1つがエイミー殿下の警護についたようです。」
「あれですか。
付かず離れず一体となって・・・これが尾行警護なんでしょうね。」
「ああも動けるものなのですね。
凄い物です。」
「まったくです。
・・・それにしてもジーナ様、結構慣れておいでですね。」
「直線で行くのが一番ですので幾度か。
ドネリー様もお上手でいらっしゃいます。」
「ええ、ちょっと嗜んでおります。」
「では、私も今度から嗜んでいると答えます。
っと、10m程で曲がるようです。」
「わかりました、先を急ぎましょう。」
「はい。」
実はジーナとドネリーは会話しながら屋根伝いに走っていた。
なぜかと言うとエイミーとスミスが尾行を撒くかのごとくいきなり走り出したのだ。
なんとなく行き先をわかっている2人はパラスの距離感覚を元に主2人を等距離で追っていた。
・・
・
例のお店。
「はい!到着!
エイミー殿下来ましたかね?」
「スミス様達も今到着しましたよ。」
2人が店の対面の家の屋根からひょこっと顔を出して店に入って行く2人を見ている。
「見ましたか!ジーナ様!手を!手を!」
「はい、エイミー殿下が引っ張って来てくれたのですね。」
「さぁ!エイミー殿下!ここが攻め時ですよ!」
「つつがなく指導頂ければ良いのですが・・・あ、王都守備隊の試験組も来ましたね。」
「展開が遅いですね~。」
「私達が自由なんですよ。」
ドネリーとジーナがのほほんと見守っている。
「ジーナ殿、ドネリー殿、お疲れ様です。」
ジーナ達の後ろに王都守備隊の4人が居た。
「ラック隊長、お疲れ様です。」
ジーナが挨拶をする。
「本日はご協力ありがとうございます。
若手の訓練に最適です。」
「いかがですか?」
「まぁ初めてに近いのでこの結果はしょうがありません。
今後の訓練次第でしょう。」
ラックが愛想笑いをしながら言ってくる。
「あまりされないので?」
「今回の実施者で追跡が上手いのはいないですね。
武力という点では皆合格ですが、なかなか出会えないですね。
まぁ各騎士団ではこういった事はしませんし、致し方ありません。」
「・・・前に・・・騎士団もいらっしゃったのでは?」
ジーナが「お店で騎士団も潜入うんぬんの説明を受けましたが?」という目をラックに向ける。
「あ~・・・各騎士団で追跡が上手い者をどうやら囲っているようですね。
今回はこっちに来ませんでした。
これはこれで教育のし甲斐があると思えば良いのでしょう。」
「そういうものですか。」
「そういうものです。
望んだ能力を持っている人材が来るなんて滅多にありません。
私も含めうちの隊のほとんどは未経験に近い状態で王都守備隊で訓練してここまでなっているのです。
何とかなりますよ。」
「そうですか・・・
そういえばご主人様の第二研究所は今後4年にかけて、毎年10名ずつ採用枠があると言われています。
今年はどんな状況でしょうか?」
「まだ何とも・・・
各位の異動調査等々については総長のみが知るとしか言えませんね。」
「そうですか・・・確かご主人様の希望では第1騎士団か王都守備隊のベテランをとの事でしたが・・・
難しい状況なのですか?」
「ん~・・・今回は王都守備隊も第1騎士団も各方面から多くを抜かれましたからね。
育成がどう行くかによりけりとしか言えませんかね。
新人と途中参加組が順調に成長する事を期待したい所ではありますが・・・」
「そういえばあの3名はどうなっていますか?」
「順調ですよ。
既存の隊員に遜色ない動きをしてくれています。」
「そうですか。
日延べになっている私とスミス様の訓練はいかがしますか?」
「んん~・・・現在、王立学院に入っている私達の協力者の育成中なのでもう少し待っていただきたいですが・・・
ジーナ殿の催促もあったと総長には伝えます。」
「お願いします。
それとマイヤー様のご子息は?」
「彼・・・魔法師専門学院に入っていれば特別待遇でしたでしょう。
そのぐらい才能があります。
まぁ本人の希望で王立学院に入ったそうですね。
そちらでの成績はわかりませんが、魔法師になるのならいつでも歓迎されるでしょう。」
「才能かぁ・・・」
ジーナが呟く。
「多くの者から才能の塊と言われているジーナ殿にお悩みが?」
「私は・・・特筆する才能がありません。
知識ではお父さまが、発想ではご主人様が、武力ではアリス様が居ますので常に壁を見上げています。
努力するしか私には残されていません。」
ジーナが掌を見ながら、何回かグーパーを繰り返しながら言ってくる。
「ジーナ殿の見上げる壁は高く厚いですね。
私達凡人では見上げたいとも思えない壁ですが。
身の丈にあった壁を探すとしましょう。」
ラックがジーナの意識の高さに呆れる。
「身の丈にあった・・・」
「ジーナ殿も見上げてばかりいると小さな小石に躓くかもしれませんよ。
たまには息を抜いて足元を確認したり、観察したりしてみてはいかがでしょうか?」
「息抜きをしろと?」
「ええ、目標に向かって努力するのは当然ですが、その意識を維持するのは精神上大変疲れます。
体もそうですが、精神も休ませないともちませんよ。
私なんかは仕事上、娘達のフォローが大変で・・・休みの日は酒場に繰り出すのが精神を休める方法になっている次第です。」
「体に悪そうですね。
奥様とお子様に注意されませんか?」
「良くされますが、こればっかりは趣味ですのでね!」
「趣味かぁ・・・」
「まぁなんであれ作業をしている間は目標が忘れられるような趣味を持たれた方が良いでしょう。
まだ若いんです。
楽しい事を楽しんでも誰も怒りませんし、キタミザト様ならジーナ殿が滞在中『何か楽しい事始めましたか?』とか聞いてくるのではないですか?」
「確かにご主人様なら仕事以外の事を聞いてきそうです。
仕事が忘れられるような趣味・・・検討してみます。」
「まだまだ固いですね。」
ジーナの言葉にラックが苦笑するのだった。
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