第1466話 馬車と船の打ち合わせ。1(ベアリングとコンテナの規格を考えよう。)
ローチ工房の会議室にて。
ローチ、キャロル、ダンとクローイが会議室で打ち合わせをしていたのでそこに武雄達も合流した。
「「よ・・・よろしくお願いいたします!」」
武雄に向かってダンとクローイが自己紹介をしていた。
「ええ、頑張りましょうね。」
「主、こちらが以前のこの場での議事録とその後に行われた整備局港湾部での議事録です。」
ヴィクターがここから合流し、アスセナが書記をしている。
ヴィクターから議事録を受け取り武雄がメガネをかけて議事録を流し読んでいく。
「えーっと・・・ローチさんとキャロルさんとで船と荷馬車の話は終了していると。
・・・金属摩耗?」
「はい、そちらはスズネとテイラーから提案を受け、試作を開始しています。」
キャロルが言う。
「ふむ・・・ここか。
なるほどね、オイルで浸して、隙間埋めに消しゴムを使うのですか。
良く考え付き・・・うん?・・・」
武雄が書類から目を放し、目線を上に向け首を傾げて考えている。
「キタミザト様、どうされましたか?」
キャロルが聞いてくる。
「いや・・・この文面だと・・・これオイル漏れませんか?」
「「「「え!?」」」」
ローチとキャロル、ダン、クローイが驚き顔をさせる。
「ど・・・どこがでしょうか?」
キャロルが聞いてくる。
「いや文面だけですけど『外側と内側のカバーの隙間』とありますよね?
金属摩耗を抑えるのにオイルを封入するというのは問題ないです。
この考えは革新的で楽しいですが・・・外側と内側の隙間にとは何ですか?
外側というのは荷台側に固定する部分で内側というのは軸側、可動部ですよね?
可動部と取付部との間にゴムパッキ・・・消しゴムはないですね。
これでは可動部の負荷を消しゴムが受けてしまいます。
漏れを防ぐよりも先に損傷してしまって隙間埋めの性能が出せないでしょう。
こういった消しゴムを使った隙間埋めは固定部と固定部の隙間に対して使うというのが良いと思います。」
「となると・・・この案はダメと?」
ローチが聞いてくる。
「先ほども言いましたが発想は問題ないです。
となるとこのベアリングの周りにカバーを付ける事で対応出来るでしょうね。
良いですか?
まずベアリングの外側と内側の両内面にオイルを封入する、これは問題ない。
この時に隙間は出来るだけ小さくしてください。
そして軸側の内側のカバー端が、取付側の外側のカバー端の内側に来るようにします。
ここに漏れ防止の為に軸に干渉しないように外側の固定部を覆うようなカバーを取り付けるのです。
筒状にして荷台側の固定部の両端にすっぽりと合わさるようにしてね。
筒の底に消しゴムの板を敷いておき、外側のカバー端に密着するように取り付けます。
そしてもう片面を蓋にしておいて蓋と筒の間に消しゴムの薄板を入れ閉じる。
こうすれば道等にまき散らす事もなく、また、ベアリングが風雨にさらされないので耐久力が増えます。」
武雄が黒板に落書きをする。
「なんとも難しい事を・・・とりあえずキタミザト様の考えはわかりました・・・ベアリングの内外の誤差はどのくらいでしょうか?」
キャロルが聞いてくる。
「0.1㎜以下。」
武雄が即答する。
「え゛!?」
キャロルが固まる。
「ははは、流石にそれは無理でしょうから、無理なく製品品質が均一化出来るようにした誤差で構いません。
なので、ある程度は漏れる事を前提としておくのは大事ですね。
このベアリングは補給が出来るようにするみたいですので、例えば出立前のチェックの際に補給しておくという依頼をしておくべきでしょう。」
武雄が楽しそうに言う。
「ず・・・図面を描いた際にご確認いただけますでしょうか。」
「ええ、わかりました。私がわかる所は見ますよ。
あとは図面を見ながらわからない事は項目化していきますから確認と検討をお願いします。」
「はい。了解しました。」
キャロルが返事をする。
「さて・・・えーっと・・・クレーン?」
武雄が次のお題を書類から見つける。
「はい!こちらを考えています!」
クローイが武雄の前に出来合いのクレーンの図面を広げる。
「・・・細いし、やわそうですね・・・」
武雄が図面を見ながら言う。
「「え!?」」
ダンとクローイが驚く。
「どどどどどこに改善点がございますでしょうか!?」
クローイが緊張しながら言う。
「いや・・・木造ってなんですか?
これだと持ち上げられて数百kg程度か1000㎏行くかどうか。
コンテナの総重量は・・・ローチさん、標準的な幌馬車では最大積載量はいくつなんですか?」
「詰めれるだけと言いたいですが・・・人間にして12名が限度でしょう。」
「成人男性を基準として75㎏程度としても900kgでしょうか。」
ローチとキャロルが答える。
「なら900㎏が荷物としてそれのコンテナサイズは幅1.7m×高2.0m×奥行3.0m・・・鉄との比重は1/4だったけど補強材の混入を見込んで1/3程度になると仮定して・・・えーっと・・・5㎜厚で・・・扉や補強の改造を見込むと・・・」
武雄がメモ書きにササっと簡易計算をしていく。
「コンテナ単体で400㎏としますか。荷物と合わせれば1300㎏、安全率を見込んで2割増しの1560㎏、面倒なので約1600㎏としましょうか。」
武雄が頷く。
「あの~・・・キタミザト様、一応なのですが、ベアリングの試験で現在1.7倍程度までは輸送できそうなのですが・・・」
ローチが手を挙げて恐る恐る言ってくる。
「・・・安全率1割にしますかね。
これなら現状を保てるでしょうし余裕がありそうなら増やせますよね。」
「はぁ・・・荷台の軽量化を頑張ります。」
ローチが諦めながら言う。
「ええ、よろしくお願いしますね。」
武雄がにこやかに言うのだった。
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