第1460話 研究所視察。5(そういえば喫茶店は?)
武雄とマイヤー、ヴィクターとアスセナは3階の確認を終えて1階に戻って来ていた。
「では、私はアンダーセンと打ち合わせをしに行ってきます。」
マイヤーは先程の話をアンダーセンに伝える為に試験小隊の部屋に武雄達は喫茶店の視察に向かうのだった。
喫茶店内では料理長が空いている机で書き物を他の数名の料理人が開店に向けて食器や調理器具を出し入れさせている。
「お、タケオ来たのか。
慌ただしくてすまんが、お茶なら少し時間がかかるぞ。」
料理長が気が付き顔を上げて言ってくる。
「作業を止めなくて平気ですよ。
飲みに来たのではありませんし、店中の視察です。」
「そうか・・・ん~・・・タケオ、これがこの店のメニューなんだが、どう思う?
あ、朝は前の打ち合わせの通りだ。」
料理長が今まで自分が書いていた物を指して聞いてくる。
「前を失礼します。
ん~・・・朝は前に話した通り固定で自ら取りに行くスタイルで昼が日替わりと固定が3つ、サンドイッチセットとパスタセットとピザセット?
すべてにスープが付くと。
・・・料理長、ピザを出すのですか?」
武雄が顔を上げて聞いてくる。
「ああ、伯爵とフレデリックの了承は取れた。
あれは今すぐの普及も可能だろうとの判断だな。
まぁ実際は伯爵邸で出すよりも1回り小さくするがな。」
「味は?」
「基本はタケオが最初に教えてくれたトマトソースを下地にキュウリのビネガー漬けの輪切りとソーセージの輪切りを添えた物だな。
あとは前日の残りを使って焼くか・・・そこは検討としておこう。」
「日替わりピザですか・・・まぁこれもこれで面白そうですね。」
「タケオも了承してくれるか?」
「ええ、味が問題なければね。
ちなみに食券は日替わりのみなのですね?」
「ああ、そのつもりだ。
固定の3つの価格は銅貨12枚、一般への日替わり価格と同額としている。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
「それと当面・・・2週間程度は一般の客は入れないし、固定メニューの販売はしない事になった。
料理人達と給仕係の練習の為に配膳に注力しようと思ってな。」
「初めてですし、当初から福利厚生の一環ですからね。
問題ないのではないですか?」
「そうか・・・で、タケオ、これが今後3週間の日替わり内容になった。」
料理長が懐から紙を出し武雄の前に置く。
「・・・へぇ~・・・これを?」
「ああ、総監部には提出している。
2週間前に担当の料理人から発表させることになった。」
「担当の料理人は月替わりでしたか。」
「そうだ、もう順番は決まっていてな。
月の予算も決まっていて内容決めに大忙しだ。
皆、楽しそうにしているぞ。」
料理長が笑いながら言う。
「えーっと・・・ここの開店はいつですか?」
「開所日が4月15日だが・・・4月19日の週初めからを予定している。
最初の2週間は皆の訓練も兼ねるから週毎に料理人が変わる事になっている。
まぁ今は月毎だが週毎に替えるかもしれないがな。
それはやってからの検討する事だろう。
あ、それとベルテ一家のお嬢さん方に頼んでくれたか?」
料理長が武雄に聞く。
「・・・まだですね。」
武雄が一瞬「何が?」という顔をしたが一生懸命に思い出し、ボソッと言う。
「そうかぁ・・・参加して欲しいんだがなぁ。」
料理長は武雄の顔を見て「難航しているのかぁ」と考える。
「今日、この後行きますので聞いてきます。
確認ですが、毎日でなくて良いんですよね?」
「ああ、構わない。
給金は種族問わずに銅貨80枚だ。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
と研究所側の扉が開き鈴音が入ってくる。
「武雄さん、こっちは何をしているんですか?」
「ん?鈴音、どうしましたか?」
「あっちはトレーシーさんがワーワー騒いでいるのでこっちに来ました。」
「・・・泣いてましたか?」
「はい、懇願していましたよ。
『同期のよしみで!優しくして!』とアンダーセンさんに言っていましたけど。
『あはははは、任せろ!勘を取り戻させてやる!』とアンダーセンさんはやる気です。」
鈴音が苦笑している。
「そうですか・・・アンダーセンさんなら問題なくしてくれるでしょう。
こっちは喫茶店の日替わりメニューと固定メニューを見ていましたよ。
鈴音、見てごらんなさい。」
「はい、失礼しまーす。」
鈴音が武雄の横に座りメニューを見る。
「え・・・ピザ・・・こっちにはカレー!ん?焼きパスタ?」
「それは焼きそばに近い感じですよ。
パスタを焼きそば風に焼くんです、ほぼ焼きそばになっています。
青のりはありませんけど、十分に美味しかったですよ。」
「よし!武雄さん、これここのメニューなんですよね?
私達も食べられるんですか?」
「ええ、そのつもりですが・・・1食銅貨12枚だそうですよ。」
「ん~・・・銅貨12枚ですか・・・」
鈴音が悩む。
「タケオ、お前達も食券で良いんじゃないか?
元々タケオの為の店だしな。」
「でもエルヴィス伯爵家の福利厚生の一環ですよね。
・・・ヴィクター、総監部に行って確認してください。」
「畏まりました。
後ほど向かいます。」
「補助金程度を支払えば良いとしてくれるとありがたいのですが。」
「交渉してまいります。」
ヴィクターが頷くのだった。
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