第1459話 研究所視察。4(視察は終了。)
「「・・・」」
武雄とマイヤーは自分達の敷板を作り終わり、会議室の机を見て考えていた。
長机4つでロの字の配置がされている。
「・・・ここはなしですね。」
「そうですね。
会議室の机は移動させることもありますので、板があると落してしまう可能性もあります。
ここはなしでよろしいでしょう。」
武雄とマイヤーは会議室の机には敷板を作らない事を決める。
「主、マイヤー様、15日の朝は机の配置はどうされますか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「机はなしで椅子のみで良いかと思われます。
あと、正面の左右の壁に王国旗とキタミザト子爵旗を掲げておいてください。
正面中央に教壇を用意して頂いて、壁側に所長と私の席、教壇の私達側に王国旗を配置、教壇と向かって正面に試験小隊と研究所員、後ろに職員・・・この場合はアスセナ殿と初雪殿でしょうか?
所長、どうでしょうか?」
マイヤーが武雄に説明し、聞いてくる。
「私もそれで良いと思います。
マイヤーさんがこうした方が良いと言ってくるのは普遍的な方法なのでしょうからね。」
「畏まりました。
あと研究室の区分けですが、完成するまではいかがいたしましょうか?」
「区分けについては会議室を使わせて検討させてください。
決まってから出来上がるまでは試験小隊に組こ・・・鈴音は無理か。
・・・トレーシーさんは行けると思いますか?」
武雄がマイヤーに聞く。
「元王家専属魔法師部隊ですが・・・第一線から随分と遠のいています。
感覚を取り戻すのは時間がかかるかと。」
マイヤーが難しい顔をさせながら言う。
「・・・アンダーセン隊長とは確か同期でしたね。」
「ええ、させますか?」
「兵士の感覚を持っている研究員は必要でしょう。
鈴音は私と同じ理論からの研究員ですし、パナは・・・これは例外です。
盾の研究をさせるトレーシーさんはやはり兵士の感覚を戻させないと使い勝手の悪い盾を考えそうですからね。」
「わかりました。
後ほどアンダーセンには言っておきます。
内容はどのようにしますか?」
「私では程度がわかりませんのでお任せします。
ですが、エルヴィス伯爵家の兵士達に混ざっても問題ない程度には感覚を戻させてください。」
「了解です。
話し合って決めます。」
「鈴音については私預かりで、教育者としての経験を積ませますかね。」
「教育者?」
「ええ、専門性を深める研究職ですけどね。
対外的に説明をする機会も増えます。
その際に専門用語や独自理論を繰り出しても理解されません。
その部分を噛み砕いてわかりやすく説明する訓練が必要になるんですけど・・・マイヤーさんは生徒役で出て貰います。」
「・・・私にわかりますでしょうか?」
「それで良いんです。
わからない人に説明する事で説明する側は柔軟に言葉を選ぶ方法を学ぶのですから。
それに兵士の新人教育でも言葉をわかりやすく教えるでしょう?」
「あ・・・そう言われるとそうですが・・・
ん~・・・兵士での経験しかない私が聞いてわかるのでしょうか?」
「そこは平気ですよ。
今までわからなかった事が1つ、2つ新たに覚えられるんです。
意外と楽しいと思いますけどね。
それに兵士だったからこそ見える物もあるでしょう。
私達とは違った観点からの質疑もしてくれるとありがたいですね。」
「まぁ・・・わかりました。
スズネ殿の教育に参加します。」
「気兼ねなくのんびりとしましょう。」
武雄がにこやかに言うのだった。
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1階の試験小隊の部屋。
「・・・机の配置結構時間かかったね。」
「そだねー・・・」
ケイとパメラが自分に宛がわれた机の椅子に浅く腰掛けてダラーっとしていた。
ちなみにブルックはアニータを連れて1階の階段横にある湯浴み場を見に行っている。
ミルコとアーキンは武具の棚を見ながらどんな備品の追加をするかをメモ書きしている。
他の面々は2階の書庫を見学しに行っている。
「そういえばさぁ・・・ジーニーちゃん達どうなんだろうね?」
パメラがケイに聞く。
「会ってないね・・・私達もすぐに領境に行ったから。
でも兵舎住まいなんだろうけど。」
「そうだよね・・・私達普通に下宿の個室が与えられたけどこれって異例なんだよね?」
「なんじゃないかな?
兵舎じゃなくて良かったのかも普通の暮らしをしている感じになれる。
でも・・・訓練凄いね。」
「濃いね・・・でも私の発動時間が長いのあまり気にされていないよね。」
「うん・・・魔法師専門学院だと発動時間を合わせるのをしてたけど・・・あまりしないね。」
「個別で伸ばす事が今は重要なのかな?」
「たぶん・・・とりあえずアニータとミルコに発動魔力量の省力化で追いつかないと・・・」
「あの2人凄いね・・・エルフってこんなに凄いのかな?」
「さぁ・・・初めて会ったけど・・・これが幼少期という事は大人になったらどれだけ凄くなるんだろう?」
「想像出来ないね。
そして・・・私どんどん置いて行かれるのかな?・・・」
パメラが机に突っ伏して嘆く。
「そこは私達が一番下だしね・・・これから下が増えるのかな?」
「ん~・・・最大3小隊だったよね。
その内の1小隊は私達新人用だから残りは他の2小隊・・・キタミザト様・・・所長がどう考えるかなんだよね。」
「今のままで下が入ったら先輩の面目が立たない・・・はぁ・・・どうやったら成長するんだろう?」
ケイがため息をつくのだった。
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