第1454話 167日目 あ、見つかった。(双方とも労い。)
「あれ?皆さん戻られたのですね。」
鈴音がブルック達の下にやってくる。
「スズネ殿、お疲れ様です。
今日戻ったのです、なので皆で夕食を。」
「なるほど~。
なら武雄さんも戻って来ているのですね。」
「はい、所長も一緒に戻って来ています。
スズネ殿達は?」
「今日はモニカさん達の慰労です。」
「ハワース商会のですか?」
「はい、『研究所の備品一式の完成おめでとう会』です。
職人さん達を労うんですよ。」
「誰が来ているんですか?」
「私、テイラーさん、キャロルさん達、ローチさん達、ステノ技研の皆、ベルテさん達、ローさん達、ベッドフォードさんご夫婦、ラルフさん達他・・・です。」
「それって・・・つまり・・・」
ブルックが難しい顔をさせながら鈴音に聞いてくる。
「協力業者皆です。
いや~、短納期だったそうで大変だったんですって。
なので慰労会をするんです。」
「スズネ殿が居て平気なのですか?」
ブルックが言葉にはしないが「所長への愚痴があるのでは?」と言っている。
「ん~・・・私も愚痴を言う方ですからね。」
「そうだったんですね。」
「ええ、でも愚痴も言えないのはいけないと思うんですよ。
それに皆さん愚痴は言いますけど、武雄さんを嫌っているのではないので・・・なんて言えば良いんでしょうか・・・
あ!自分達の限界がバレているので泣いているんだと思います。」
「妙な言い方ではありますが・・・気持ちがわかります。」
「あはは、武雄さんの部下の方々も大変そうですね。
じゃ、私は戻ります。
お疲れさまでした。
皆さんも。」
「お、スズネ殿、お疲れ様です。」
「飲みすぎちゃダメですよ。」
「お疲れ様です。」
「はい、では~。」
鈴音が他の面々にも手を振りながら声をかけて席を離れていく。
「ブルック、何を話していたんだ家具の?」
マイヤーがやってくる。
「所長関連の業者が一堂に会してハワース商会が研究所の備品完成祝いだそうです。
その席に出席しているとの事でした。」
「第二研究所関係だったか。
そうか・・・机とかだな。
ブルックとアーキンが決めたんだな?」
「試験小隊分は選びました。
意匠的には王都守備隊で使っている物に似ている物にしておきましたよ。
あとマイヤー殿の方はヴィクター殿が選んでいます。」
「問題はなさそうだな。
そうか・・・出来たか。」
マイヤーが考える。
「どうしましたか?」
「一度見に行った方が良いと思ってな。」
「そうですね。
確か15日開所日でしたので、建物は終わっているのは当たり前ですよね。」
「そうだな・・・
ブルック、明日は皆で午前中に視察の方が良いかもしれないな。」
「そうですね。
アンダーセン隊長とも話して決めた方が良さそうですね。
周辺の確認ももう一度しておきたいですし。」
「そうだな。
前は下見だったが、今回は本格的に周囲の確認をするか。」
マイヤーが頷くのだった。
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酒場の一角。
「お、スズネ帰ってきたか。」
「はい、ベッドフォードさん。
モニカさんは・・・あ~・・・潰れていますね。」
鈴音がモニカも見ながら言う。
「まぁ嬉しかったんだろう。
職人達は呆れているが。」
「一段落ですからね。
始まるのかぁ。」
「そうだな、スズネにとってはこれからが本番だったな。
キタミザト様に何か言われているのか?」
「はい、やる事は言われています。
親方達の手伝いもあまり出来なくなるのですよね。」
「それは仕方ないだろう。
そういえばステノ技研の募集をしているとさっきブラッドリーに聞いたんだが、街中で聞かないんだが?」
「あ~・・・それはキャロルさん達サテラ製作所に所属している人から採用するからですね。」
「ん?別工房だよな?」
「はい、サテラ製作所はステノ技研で開発された物を製品化する工房なのでこことの密接な関係が必要になってくるんです。
それにキャロルさんを通した方が腕が確かな人達が揃うので・・・ここで他所から来たのが印象的に・・・」
「はぁ・・・まぁそういう奴らは多いか。
やっている事は凄い事・・・なんだよな?」
「はい、凄い事をしています。
今は納品がキツキツなので採用試験やら面談やらをする時間も惜しいと思っていまして、私達としてもしっかりとした人達を採用出来るのなら問題ないと言っているのですけどね。」
「双方が問題ないなら俺は何も言わないが・・・
キャロルの所は平気なのかだな。」
「そこはなんとも・・・」
「サテラ製作所がどうしましたか?」
鈴音とベッドフォードの会話にキャロルが入ってくる。
「キャロルさん、ちょうどいい所に。」
「スズネ、どうしましたか?」
「いえ、ステノ技研向けの人員を送り出すとサテラ製作所の人員はどうなるかという話をしていたんです。」
「あ~・・・問題はありませんよ。
新人も中途も採用していますし、どんな方も徹底的に製作の基礎を教えてから実務に就きますから基礎は出来ている者達ですし、仕事を教える傍らキタミザト家の脅威と守秘義務について教えていますからステノ技研に数名移籍しても十分な能力を持った者達を育成させています。」
「ほぉ、なるほどな。
ちなみになんだが、キャロルがスズネを呼ぶ時に前は『スズネさん』だったが今は『スズネ』なんだが、何かあったのか?」
「・・・確かに前は『さん』付けでしたよね。
私はどっちでも良いのですが。」
「ははは、なんとなくです。」
鈴音もキャロルも気にしていないようだ。
「2人が気にならないなら良いんだが・・・ん?ローの爺さん・・・今日は飲んでいるな。」
「ローさん、何かあったんですかね?」
「さて?・・・スズネ、聞いてきた方が良いんじゃないか?」
「そうですね。
じゃあ、他の方々の話も聞いてきます。」
鈴音が席を離れるのだった。
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