第1453話 各々でまったりです。(書斎と酒場にて。)
その後も武雄達は色々と話をして、結構な時間になってしまったので今日はお開きとなり。
「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が客間を出ていき、武雄とアリスも寝室に戻って来た。
そしてアリス達は湯浴みに行き、武雄は久しぶりに書斎でまったりとしながら、ヴィクターが置いて行った机の上の書類を処理している。
ちなみに武雄は書斎の窓を開け換気をしつつ、キセルで一服しながらなのだが誰も文句を言う者はいない。
「ふぅ・・・まだ肌寒いですかね。
・・・これはステノ技研行き・・・これは誰かに書いて貰わないといけないですかね。」
武雄は次々と書面を流し読みし横に置いていく。
「・・・ふむ・・・そうかぁ、もう行かないといけないか。」
武雄は最後の書類でそう呟いていた。
寝室側の扉がノックされ、アリス達が入ってくる。
「タケオ様、上がりました。」
「主、戻りました~。」
「あ~。」
「きゅ~。」
「はい、おかえりなさい。
アリス、ビエラ、髪を乾かしますよ。
ほら、クゥ、ソファに座らないで。
寝室に戻りますよ。
湯上りですから水を飲みましょうね。」
「きゅ?」
クゥが「ただの水?」と首を傾げている。
「不満そうですね・・・じゃあ軽くレモンを絞って、はちみつを少し溶かして甘くしますか?
さっぱりしていると思いますよ。」
「きゅ!」
クゥが万歳をして喜んでいる。
「はい、じゃあ戻りましょうね。」
そんなクゥを武雄は抱え寝室に戻るのだった。
------------------------
酒場にて。
「あ~・・・今回は楽しかったなぁ。」
「王都守備隊に比べれば楽だが・・・
オーク戦をするとは思わなかったな。」
「私達が後ろで補助はしていましたが、攻撃は子供達だけでした。
良く倒せましたよね。」
「あの4人凄いですね。
キタミザト家所属の執事やメイド、農業従事者は皆戦闘経験があるという事ですね。」
「アスセナ殿も戦闘に入るかは難しいが・・・あの足で必死に逃げたという所は凄い所だな。」
「まぁ少なくとも全員が自分の命が狙われる経験はしているという事だな。
これはそんじょそこらの執事より自信が付くだろうな。」
「本気で命をかけたんだ、ちょっとやそっとの脅しや揶揄いには動じないという事なんじゃないのか?」
「マイヤー殿、ニルデとジルダが居ましたが、あの子達は戦闘はしていませんよね?」
「あの子達はウィリプ連合国のドローレス国領主邸がある街のスラム出身だぞ?
捨て子で異種族・・・生きるのが戦いだっただろう。」
「なるほど・・・そうでしたね。
そういえばキタミザト家の執事とメイド・・・全員元奴隷ですね。」
「言われなければ気が付かないぐらい自由に過ごしているし、能力が高すぎる。」
「まったくだ。
所長の引きが強いといってもああいう連中がウィリプ連合国の兵士となるんですよね・・・
こりゃ、参りましたね。」
「そうだな。
俺らはこの時期にこっちに来たが・・・残ってる面々は大変だろうな。」
「あの3人元気にやっていますかね。」
「あの3人も素人ではないからな。
やり方は違えど意味が分かれば熟せるだろう・・・むしろ指導する側が大変そうだ。」
「あ~・・・あの子達の能力が伸びた感じでしょうからね・・・辛そう。」
「ま、向こうの連中が頑張るだろうさ。
俺らはアニータ達を見ながら戦術と武器の評価だな。」
「そうだ、アーキン、所長から特別な歓迎会を企画しろと言われてないか?」
マイヤーがアーキンに聞く。
「・・・アンダーセン隊長・・・」
アーキンが「どうします?」という目でアンダーセンを見る。
「・・・どうしたものか・・・」
アンダーセンがガックリとする。
「そんなにか?」
マイヤーが呆れながら聞いてくる。
「・・・2案ありまして・・・1つはほふく前進の訓練、もう1つはコラ殿達と戦うそうです。
はぁ・・・ほふく前進の訓練は恐怖に打ち勝つという事と安全面は前にやった事の反省を生かしているので、十分に出来る物になっているのですが・・・もう1つがこの地の鷲と狼達の魔物の集団との集団戦だそうです・・・」
「・・・この間白い狼が加入したな。」
「つい先日ですね。
ただ単に試験小隊とコラ殿達との戦闘をするとしか書かれていない提案書なんてどうすれば良いんですか・・・」
アンダーセンが頭を抱える。
「何を書けというのですか・・・
対魔物の戦闘を実施するのは経験を積むという意味はわかりますが、鷲、狼、コラ殿達・・・最善の結果は引き分けです。
所長達は私達の王都守備隊の威力を見たいという事なんですよ。
だから実施としかかけません。」
アーキンが諦めながら言う。
「いや・・・なるほどな。
あ~・・・ちなみにコラ殿達の為の訓練なんじゃないか?」
マイヤーが一瞬考えてアンダーセンに言ってくる。
「そう読み取れますよね。
私達が打ち破ればコラ達を叱り、私達が敗れれば私達を叱る・・・
・・・最善が引き分け・・・確かにな。」
アンダーセンが頷く。
「所長が提案して即刻却下したのはクゥ殿との実践形式訓練です。
所長、本気で私達のなけなしのプライドを粉々にする気なんですよ。」
「あ~・・・アーキンは気が付いていたか。」
マイヤーが同情しながらアーキンを見る。
「マイヤー殿?」
「所長はな、最初『今まで行ってこなかったであろう訓練もさせる予定ですから反発もある。ただ、死の淵ぐらいは見に行って貰い、王都守備隊のプライドを粉々にしてその後の訓練を真面目に受けさせないと、今後がやり辛いでしょう。
私に盾突いても困りますし。』と言っていてな。」
「「・・・」」
「私が『誰も盾突いたりなどしない』と言ったら『安易な言葉は信用しない方が良いでしょう、恐怖は身に染みてこそ』と言っていてな。
もともと決めていたんだよ。
アーキンに任せたのはどのレベルを自分達に課すのか試す為かもな。」
マイヤーが言う。
「実施するには・・・もう少し両方が安全に出来るような仕組みを考えてからだ・・・
アーキン、頼む。」
「微力は尽くしますが・・・早めに素案を出します。」
アンダーセンとアーキンは項垂れながらワインを飲むのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




