第1444話 ちょっと寄り道。2(はい、終了。)
「主、準備が整いました!」
ミアが飛んでくる。
武雄達の少し前にコラを中心に周辺に居た狼達が集結し、鶴翼の配置で整列している。
「はい、ご苦労様。
じゃやり・・・ん?」
武雄が開始しようとすると森の方の狼3体が走ってくる。
「・・・」
と、コラの前にひれ伏す。
3体ともかなり震えている。
「ガウッ!ガ・・・ガウッ!ガウッ!」
必死に何かを訴えている。
「あ~・・・なるほどね、コラ達の話を信じなかったと・・・へぇ~・・・
・・・主、早合点だったみたいです。」
ミアがコラの頭に乗って苦笑いしながら武雄の方を向く。
「そうですか・・・ま、戦闘にならずに済んだという事は良しとしますか。」
「ビエラ、クゥ、戦闘終了です。」
「あー!?」
「きゅ!?」
ビエラとクゥが武雄に「なんだってー!?」と抱き着いてくる。
「あー!あー!?」
「きゅきゅ!?」
「そりゃ戦闘してないのでカレーもスイーツもなしです。」
武雄は2人が何を言っているかわからないがここに至って何を言うかはわかっているので答える。
「あー・・・」
「きゅ・・・」
2人が物凄く落ち込む。
「あー!」
「きゅー!」
2人とも幌馬車の向こうに行ってしまう。
そしてビエラが光り始めシルエットが大きくなっていき、物の数秒でホワイトドラゴンになると。
「グルゥゥゥゥ!!!!」
誰も居ない方に向かって氷のブレスをぶちかます。
「こらぁぁ!!!」
武雄が走ってビエラを怒りに行くのだった。
「・・・良いタイミングでしたね。
もう少し遅かったらあれ・・・貴方達に向けられたんですよ?」
ミアがコラの頭に座りながら目の前の白狼達3体に向けて言い放つ。
3体の狼が顔面蒼白状態でひれ伏している。
「で、交渉というか・・・もうこうなったら私の配下になりなさい。
この森の縄張りは保証しますよ。」
「ガウッ!」
白狼が何回も頷く。
「現在、この領内では街を中心に北の森の鷲と東の狼、中央のコラが防御連携をする事になりました。
この地は数か月前にオーガ達に強襲されている為、早期発見を旨とした連携です。
こちらからは外敵情報の提供とゴブリンやオーク程度の定期的な討伐、向こうからは縄張りの安堵と万が一、獲物等の不作があった時は食料の融通と都市拡張に際しての事前の協議がされます。
人間種を筆頭としたこの地を統治する者達や私達と連携し、共存をしていく考えです。」
「ガウッ!」
「・・・コラ、詳しい話は任せます。
後日、詳細な住み分けと報告をお願いしますね。」
「ニャ!」
「じゃ、主を呼んできましょうか。
私が肩に乗っている人間が私の上司です。
つまりは貴方達の一番の上司になります。
わかりましたか?」
「ガウッ!」
「良い返事です。
では、少し待っていなさい。」
ミアが武雄の方に飛んでいくのだった。
・・
・
「主、こっちがこの度コラの部下になる南西の狼達です。」
ミアが武雄の肩に乗って報告してくる。
「ふむ・・・ちょっと緊張していますかね。
触っても平気ですか?」
「ガウッ。」
軽く返事をする。
「主、平気だそうです。」
「そうですか。」
と武雄が白狼の首元に手を当てワシャワシャ撫でる。
「こっち側に来た事と話し合った時は反対もあったでしょう。
良く一家の意見をまとめましたね。」
「ガウッ。」
白狼が鳴く。
「主、問題ないと。」
「そうですか、こっち陣営に入った事を祝してお祝いをあげましょう。
オーガ、1体で大丈夫ですか?」
「ガウッ!?」
白狼が驚いている。
「ニャ!」
コラがすぐに返事をする。
「主、十分だそうですよ。」
「そうですか・・・先日討伐したばかりなんですよ。」
武雄はそう言ってリュックを漁り出すのだった。
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一方の幌馬車では。
「あ~♪」
「きゅ♪」
2名は武雄から譲歩案としてカレーのみ、食べ放題の権利を得てご満悦だった。
「はぁ・・・成獣状態で憂さ晴らしするとは・・・
タケオ様が妥協案を出してくれて良かったです。」
「「「ははは」」」
アリスがガックリし試験小隊の面々は笑うしか出来なかった。
「キタミザト様が居て良かったね。」
「「「本当だねー。」」」
子供達はビエラがドラゴンになった事に驚き、武雄が交渉してさっさと宥めたのに感心したりと忙しかった。
結果として『ドラゴン2名を宥められるのはキタミザト様しかいない』のを認識し、ドラゴン2人の機嫌も実は武雄次第なのではないのかと思うのだった。
「はぁ・・・あっちも一段落でしょうから、移動の準備しますか。」
マイヤーが呆れながら皆に言う。
「ビエラちゃん、クゥちゃん、遊んだのなら手伝いましょうね。
皆の食器を持って来てください、しまいますよ。」
アリスが2人に指示を出す。
「はい!」
「きゅ!」
2人共大人しく従う。
「アニータ、ミルコ、あのブレス痕にアースウォールを使ってなだらかにしておこうか。」
「「はい!」」
アーキンの指示で2人は証拠隠滅を始める。
「ケードとコーエンは私と一緒に馬に水をもう一度あげて来て、これから一気に伯爵邸がある街に戻るわよ。
私はあっちから2人はこっちからね。」
「「はい!」」
ブルックの言葉で2人は準備を始める。
「俺達は幌馬車の車軸でも確認しておくか。」
「そうですね。
無理させますし。」
「えーっと・・・予備はこっちの荷台だったか。」
試験小隊の面々も動き出すのだった。
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