第1442話 165日目 大人達の雑談。3(関とかのはなし。)
「見た目に想像していたよりも軽いですね。」
「確かに硬さがありそうです。」
「これは面白いですね。」
「・・・これが新素材?」
皆が黒スライムの体液から出来た板を手に取って確認している。
「ええ、昨日作ったのですけどね。」
「「「昨日・・・」」」
皆がしげしげと板を見つめる。
「斬ったり突いたりしたが・・・
鉄並みだったぞ。」
ベイノンが皆に報告する。
「鉄と比べて粘りがない感じですね。
早く言うと対衝撃性能という面だけを見れば鉄並みです。
ですが、ベイノンさんとの実験ではその耐衝撃の限界値より上の衝撃を加えたら割れてしまいました。
簡単に言うとガラスと同じ性質を持っていると考えられます。
まぁガラスよりかはしなやかですがね。」
「ふむふむ。」
皆が一様に感心している。
「なるほど・・・所長、これを使うのですね?」
「ええ、ただ量産は当分は出来ませんので使用用途が限られます。
今考えているのはレザー・アーマーや小手、ブーツ等に仕込むのを想定していたのですが・・・
女性用かぁ・・・」
武雄がブルックを見て考え込む。
「男性用はある程度形が絞られますけどね。」
「女性用というのは・・・ん~・・・」
男性陣が考えてしまう。
「・・・そうですねぇ・・・体形がなぁ・・・」
ブルックも自身の胸元を見てため息をつく。
「レザー・アーマーとかはどうしているのですか?」
武雄が皆に話を振る。
「男性用、女性用とも基本形はあります。
あとは武具商店や魔法具商店で独自に加工ですかね。」
「男性用はあまり加工しないですね。
締め付け等の調整がほとんどだったはずです。」
「女性用は体形に合わせて革を延ばしたりしていますが・・・卒業したてとかでお金のない時は成長もするだろうからワザと大き目を買って胸元にタオル入れてましたよ。」
ブルックが言う。
「ん~・・・成長過程かぁ・・・
ちなみに革の下にこの板を成型して貼り付けるというのは難しいですか?」
「出来れば逆にして欲しいですね。
いくら下着は着るとは言ってもこれほどの固さの物を肌に接触させるというのは・・・あと肩回りとかで擦れて怪我をしないようにしたいですね。」
ブルックが言ってくる。
「ふむふむ、板の成型をしてから内貼りとして革ですね。」
武雄がいつの間にかメモを出して書き留めている。
「ちなみに皆さん、お腹回りはどうしますか?」
「ん~・・・剣が掠った際の事を考えると横に並べての配置は難しいですよね。
プレートアーマーみたいに重ねられますか?」
ベイノンが言ってくる。
「・・・ふむ、考慮しましょう・・・
基本はプレートアーマーを作るみたいにという形で胴回りは考えますか。
そうすれば作成側も余計な考えは必要ないと・・・小手の方も基本もフルプレートに使ってるのと同様という事で考えても平気ですか?」
「はい、ですが、鉄の胸当てや小手のみはあまり見かけませんね。
アズパール王国内だと主にフルプレートか革の胸当て、レザーアーマーですね。」
ブレアが言ってくる。
「・・・胸当てを金属にしないのは?」
「ん~・・・はっきり言ってしまうと、重いんですよね。
フルプレートは全身を覆い防御力を高める為に着ますが、こういった胸当て等々の軽装備では俊敏性を重視します。
なので、ある程度の防御力があればあとは軽い方が重宝されます。」
アーリスが言ってくる。
「・・・ふむ・・・軽さ・・・か。
FRPは繊維を入れて強度を増すという技術だったはず、だがこれだと重量がかさむと言うのなら・・・塗布?・・・確か荒い目の布があったはずで、あれに塗布して固める・・・出来上がるのはインナーウエア?」
武雄が夜空を見上げて呟く。
「所長?」
「ん?・・・まぁ防具の性能については後日としますか。
一応レザーアーマーに組み込んだ物を作ってみない事には皆さんに評価して貰えないでしょうしね。」
武雄がとりあえずメモを閉じる。
「ちなみになのですが・・・研究所の作業服ですが、胸当て等は付けないのですよね?」
アーキンが言ってくる。
「ええ、付ける気はありませんね。
どうしましたか?」
「いえ・・・所長の事ですので防御面の事は考えていると思っているのですが、どうやるのかと思いまして。」
「あれ?前に戦闘用ベストを見せましたよね?」
「はい、試験をした時ですね。」
アーキンが頷く。
「あれに組み込みますよ。
胸と脇、腹、背と守れるようにしてね。
今考えているのはその制服を着ている時に付けている胸当ての事ですよ。
もっと軽い物を作りたいとは思いますが、まずはレザーアーマーで確認です。」
「・・・所長、レザーアーマーで研究する利点てなんですか?
この制服なら胸当てと小手を・・・あ!どこに売りつけますか?」
ブレアが思い至る。
「エルヴィス家と王都守備隊に売りたいなぁっと。」
「ここでも王都守備隊ですか・・・」
オールストンが呆れる。
「いや・・・だって・・・・収入源が欲しいじゃないですか。
素材自体は大量生産には適しませんが、ある程度の個数なら出来そうですし、売るならお得意様作りたいし、 あの人達なら実績を示せば興味示しそうですし、金払い良さそうですし。」
武雄が説明する。
「所長、最後に本音が出ています。」
マイヤーが指摘するのだった。
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