第1436話 子供達の初陣。(追加入りました。)
「はぁぁ!」
ヴィートがオークの腕を斬りつける。
「よし、下がって!」
ブレアが声をかける。
「はい!」
ヴィートが後ろに飛び、元の位置に戻ってくる。
すると、今までヴィートが居た位置をオークのこん棒が過ぎていく。
「今のは攻撃のタイミングはばっちりです。
ですが、斬った後に足を止めたのはマイナス評価です。
戦闘中は常に動いていないといけません。」
ブレアがすぐにヴィートの前に来て牽制をしながら、今の攻撃の評価とケアをする。
「わかりました!」
ヴィートが頷くのだった。
「せやっ!」
「なぁっ!」
セレーネとルアーナが殴りつけて来た腕をひらりと躱わし、わき腹を斬りつけてオークの後方に走りぬけていく。
オークの後方で振り向くとすぐにアーリス、オールストンが2人の壁になり、2人にケアをかける。
「うん、走りこむ速さは十分です。
今のは良いですね。」
「見事だ!だが、躱し方がちょっと危ないな。
もう少し余裕が欲しいが・・・今は無理をせず回避できると思ったら回避、無理だと思ったら一旦下がろう。」
「「はい!」」
セレーネとルアーナが頷く。
「ん~・・・ん?・・・ん~・・・」
ルフィナがナイフを構えながら飛び込むタイミングを見計らっているのだが、いまいちタイミングを掴みかねていた。
「焦る必要はありませんよ。
観察も重要です。
一番良いのは通り過ぎてから飛び込む事ですが・・・もう少し弱ってからにしましょうか?」
ベイノンが考えながら言う。
「こん棒が振るわれた後が良いというのは、わかってはいるんですが・・・ん~・・・ここ?・・・ん~・・・」
ルフィナはオークの近くまで行っているのだが、なかなか飛び込めない。
「ルフィナ殿は目が良く、想像力も豊かなのかもしれませんね。」
近くに来たアンダーセンが言ってくる。
「そうでしょうか?」
ルフィナがオークの様子を見ながら言う。
「はい、オークの攻撃の軌道と速さがわかっていて、ご自身の体を動かす速さも加味した想定が出来るから、今飛び込むと危ないと感じているのでしょう。」
「でも皆していますし、私も経験しないと・・・こ・・・違うなぁ・・・」
ルフィナがなかなか踏み込めないのだった。
「あー♪」
「待って!ビエラちゃん!」
「アリス様、早く!」
ビエラと肩にミアを乗せたアリスが子供達の横を走りながら通って行く。
「あの2人軽く走っていますけど、私の全速力より速いんですけど・・・」
武雄と初雪がジョギングしながらやってくる。
「所長、お疲れ様でした。
初雪殿もいつの間に?」
アンダーセンが呼び止める。
「私は呼びに行っただけ。」
「どういうことでしょう?」
アンダーセンが首を捻る。
「南から追加です。
初雪と時雨が周辺監視をしていて、近づいてきたので知らせてくれました。
あ、あっちで討伐したのは回収済みです。」
「掃除はアサギリ達がしてる。
向こうには追加はいない模様。」
初雪が武雄達がさっきまで居た方を指さしながら言う。
「そうですか・・・追加はどのくらいですか?」
「・・・オーガ5体。」
「アリス殿と所長で対処は可能でしょうが、後詰はどうしますか?」
「アーキンさん達4名です。
抜けたら対処して貰う事になるでしょう。
マイヤーさんの所で今打ち合わせ中です。」
武雄がマイヤーの方に顔を向けるとアンダーセンも見ると時雨が身振りを交えながら説明して、マイヤーとアーキン達が話している。
「では、こちらは気にしなくても平気ですか?」
「ええ、子供達に怪我がないようにしてください。
たぶん・・・気が散るでしょうから。」
「留意します。」
「はい、では~。
あ、初雪は時雨達と居なさい。」
「わかりました。」
武雄が再びジョギングしながらアリス達を追いかけていく。
「アンダーセン、大丈夫?」
初雪がアンダーセンを見る。
「あの3人については気にしていませんよ。
それより・・・オーガがですか。」
「ドラゴンが離れたから大丈夫だろうと近寄ってきた・・・かも。」
「なるほど。
ですが、今度は急激に近寄って来て・・・逃げませんかね?」
「逃げる前にビエラが追い付く。」
「それは怖いですね。
迎撃の準備しながら待っていそうです。」
「アンダーセンならどうする?」
「逃げます。
とにかく一直線に・・・ですが、接触が濃厚なら隠れるかもしれません。
戦っても生き残れないでしょうからね。」
「・・・オーガ、隠れる?」
「オーガが隠れたなんて聞いた事ありません。」
「人間相手に隠れはしない?」
「ですね。
では、私は子供達の監視に戻ります。」
「わかりました。」
初雪がマイヤー達の下に戻るのだった。
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武雄達が居る広場の南側の森の中。
「「・・・」」
オーガ5体が木々の間で周囲の音に注意を払いながら、前進も後退もしないで軽く座り様子を伺っている。
さっきからドラゴンの気配が濃厚にこの場を支配している。
森の先に人影が見えるが、あれはドラゴンではない。
だが、この場にドラゴンが居るのは確実で、動けば死が待ち構えてるのは明白。
「「・・・」」
オーガ達はドラゴンが去るのをじっと待っている。
「あ♪」
突然後ろから声がし、そちらを向くとドラゴンの気配を漂わせた獣人が居た。
そして「ドンっ」と音が鳴ると、オーガ1体の胸元が爆発する。
何が起きたのかわからず、爆発した仲間を見るオーガ達。
「あー!へいっ!」
獣人がナイフを取りだし、飛び掛かってくるのだった。
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