第1431話 165日目 港湾部で人工湖で足らない物を考えよう。(鈴音とトレーシーは組み合せ滑車のクレーンを考ています。)
朝食を終え、移動中の武雄達なのだが、武雄とアリスは幌馬車に居た。
「・・・タケオ様、子供達に何か言いましたか?」
「いろいろ言ってはいますが・・・何ですか?」
「いえ、朝起きた時にセレーネ、ルアーナに左右から抱き着かれていまして、足までがっちりとされていたんです。
結局2人が起きるまで何も出来なかったのですが・・・タケオ様が何かしたのかなぁと。」
「・・・そう毎日毎日私が起してはいないと思いますが、私は何も子供達に言ったりしていませんよ。
それにしても抱き着きながら寝るって器用ですね、今2人は寝ていますが。」
セレーネ、ルアーナ、ルフィナは荷台で寝ている。
「寝る子は育つというのはこの事ですか?」
「・・・かもしれませんね。」
武雄が「ルフィナ達何か作戦練ったね?」と思いながら相づちを打つのだった。
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エルヴィス家 整備局の会議室。
新たに出来た港湾部の文官、作業をする軍務局の面々、フレデリック以下総監部数名、ローチとローチ工房の従業員数名、キャロルとサテラ製作所の従業員数名、ダンとクローイ、そしてヴィクターとアスセナ、スズネとトレーシーが人工湖の工事工程や現状の工事図を見ながら検討をしていた。
「・・・こんなに足らないのですか・・・」
港湾部の文官がダンとクローイによって書き足された工事図と完成図を見て言葉を漏らす。
完成図には船着き場の窪地の大きさ、輸送船の整備用簡易造船所、荷物待機場所、従業員の住まいも書かれていた。
「それと船への荷卸しと荷積みなんですが、輸送船の近くまで横滑りで持っていくというのは良いのですが、船は水に浮いています。
その時々の水量によって船自体の高さが違う為、最終的な積み下ろしはこの『クレーン』を使ってみてはいかがでしょうか。」
クローイが壁に図面を貼る。
「クレーン?
それはどういった物なのですか?」
キャロルが聞いてくる。
「ウィリプ連合国で採用されていて、テンプル伯爵領でも導入が検討されている物になります。
装置の概要としては、大きな荷物だったり重量がある荷物を人手ではなく紐で吊り上げて船に積み込む装置になります。
荷物を紐でしっかりと結び、紐を巻き取るようにして吊り上げます。
但し、見て頂いてわかる通り、やり方としては人力でこの巻き上げ機の横に付いている棒を回す為、荷捌きをしている最中は常に人が力をかけている必要があります。
ここの人員が結構危険でして、テンプル伯爵領でクレーンを導入検討段階としている理由です。」
ダンが言う。
「ん~・・・荷を上げた時に高さを保持する為に横から棒を入れたりしてはどうですか?」
ローチが考えながら言ってくる。
「軽い物ならそれも良いのですが、重い物ですと力が強く、万が一、止め木が外れるような事があれば吊り上げた荷の近くに居る者やこの巻き上げ機の近くに居る者が大けがをする危険があるのです。
なのでエルヴィス領で採用を検討して頂いて安全策も考えて頂きたいのです。」
クローイが言う。
「巻き上げ器の横のこれを固定する方法かぁ・・・」
「もしくは横から以外で止める方法・・・」
その場の大人達が考え始める。
「・・・これは・・・スズネさん、あの内容ですね?」
トレーシーが驚き顔をさせて鈴音を見ている。
「ええ・・・滑車の問題ってこういう時に使うんですね。
それにしてもクレーンですか・・・単純に考えれば重さを半分には出来ますけど・・・出来ればもっと小さくしたいとした場合はどうしますか?
これはキタミザト家か研究所からの発案にした方が良さそうですね。」
鈴音が感心しながら呟き、トレーシーに聞く。
「恐ろしい知識だと再認識しました。
さて・・・片方の紐を上部に固定し、動滑車を挟んで反対側を定滑車を通すと1/2となって、上部に固定する紐と動滑車の数を入れる度に1/2になるので・・・・」
「武雄さんのコンテナが最大重量が2000kgだとして、動滑車は何個必要でしょうか?」
「2、4、8、16、32、64・・・・6個でしょうか。
1/64になるのなら最終的に紐を持ち上げるのに31.25㎏以上の力をかければ良いとなります。
単純に50㎏程度の力がかかっても破断しないような鉄の棒を用意し、巻き上げ機の横に穴を用意し、巻き上げる棒を受け止めれば問題ないでしょう。」
「6個の動滑車で2000㎏を持ち上げる土台の作成の方が大変そうですね。」
「ですが、あの問題は連続でとなっていましたよね。
連続で良いとなると重ねるという手がありますね。」
トレーシーが何か閃いたようだ。
「・・・流石武雄さんの目に適う人材です・・・
はぁ教科書を渡しただけで思いつくとは・・・恐ろしい物ですね。
では、ここをこうして・・・こうですかね?
ん?これだと紐が弛みますから・・・あ、こうやってずらしながら重ねて行けば省スペース化出来そうで・・・あ、ダメか・・・
基本は単純に考えないと・・・簡単に簡単に・・
あ、こうやって動滑車10つと定滑車10つなら引手の荷重は100㎏かぁ・・・
2か所で引っ張れば1か所当たり50㎏・・・いけるかなぁ。
それとこれを箱に組み込んでしまえばぱっと見わからないから秘密には出来るよね。」
鈴音がトレーシーに見せながら組み合せ滑車のラフ画を描きだす。
「そうやってすぐに物が作れるような思考こそ恐ろしいですよ。
あ、スズネさん、ここの最後の滑車は荷物の荷重を一身に受けますから他と離した方が良いのでは?」
トレーシーが呆れながらも鈴音とクレーンの核心部分の話を皆に聞こえないようにコッソリとするのだった。
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