第1429話 エルヴィス家にて。(準備を少しずつでも始めよう。)
エルヴィス伯爵の執務室。
「と、ベルテ一家は話し合っています。」
夕霧が浜風からの報告に来たスライムを吸収してエルヴィス爺さんに報告していた。
「ふむ・・・金貨7枚と金貨2枚か・・・
問題ない範囲じゃの?」
エルヴィス爺さんがフレデリックに聞く。
「はい、平均的か少し少ないのではないかと・・・ですが、ヴィクターとタケオ様で話し合った結果なので、これが今最大限で出せる金額だったのでしょう。
今後の売り上げにより増加されるのだと思います。」
「うむ、ベルテ一家がやる気になってくれるのなら問題ないじゃろう。
あとはこっちの話じゃの。
書類にあったがトマトとジャガイモと他は何を作るのじゃ?」
「実は米の作付けがある為そこまで多くの試験をお願い出来ないと考えています。
出来ればあと1種類ですが、初年度から頼みすぎてもいけないだろうという話になっておりますので、今回はトマトとジャガイモの一番消費量が多い作物の試験を手伝って頂く予定と内々には決まっております。」
「・・・じゃが、この2つは経済局でもしておったの?
成果はいまいちのようじゃが・・・」
「なかなか上手くいきません。
今は量を多く取れる方のかけ合わせと、ジャガイモなら甘みが、トマトなら肉厚という質に拘ったかけ合わせをしているのですが・・・」
「うむ・・・良い結果報告は見た事ないのぉ。
そこまで難しいのかの?」
「目標が高いのでしょうか・・・量の方も質の方も数年前に比べれば良くなっているとは聞いているのですが、まだ市場に出せないという事なのです。」
「どこかで一区切りさせてその量が多少多くなる物を出せないだろうかの?
少しじゃろうが、皆でやれば総量で上がるじゃろうし。」
「そうですね・・・
来年から試験販売をする為にも量の方の種芋作りと同時に肥料の試験をして頂きましょうか。
栄養が多い時の収穫量の変化も見てみたいですし、肥料の安全性の確認もしないといけませんから。」
「そうじゃの。
そこら辺は任せる。
ベルテ一家にも納得して貰って実施する方向で話を勧めるのじゃぞ。」
「はい、文官の方はお任せください。
問題はタケオ様ですが、如何しましょう?」
「そこは・・・戻ってからトマトとジャガイモの話をするかの。
もしかしたら違う考えが出てくるかもしれないからの。
じゃが、今年は量を頼むの。
・・・夏ごろに消費も増えるしの。」
「そうですね。
その辺の準備をし始めないといけないでしょうか・・・
王都からにしますか?」
「陛下はタケオを通じて知っておるからの。
表立って何も言ってこないという事は静観するという事じゃろうがの・・・
少なくともこっちの目的はわかるはずじゃが・・・事情を知らない王都の文官達の手前表立っては出来んの。」
「そうですね。
では、以前打ち合わせをした通りに。」
「うむ、頼むの。」
フレデリックの言葉にエルヴィス爺さんが頷く。
「伯爵どういう事?」
夕霧が首を傾げる。
「あぁ、今、領内の各町の備蓄状況は東町が100%、北町、西町が25%、南町とこの街が50%なのじゃ。
今年の夏にちょっと魔王国とやりあうからの。
少し買い足したいのじゃよ。」
「ん、理解しました。
で、王都から買うという事ですね。」
「そうじゃ、じゃが王都で量を一気に買うと現時点で要らぬ詮索をされる恐れがあるのじゃ。
なので・・・」
エルヴィス爺さんがフレデリックを見る。
「王都の壁と言われる王都周辺の貴族領があるのですが、そこの西側の貴族領で買い付けを行うと文官等の話し合いで決まったのです。
それも数か月に渡って少しずつです。
夕霧様はなぜそうすると思われますか?」
フレデリックが説明する。
「ん・・・いろいろな場所から買う事で伯爵が買っているように思わせないという事ですね?」
「うむ、あ、そうじゃ。
フレデリック、王都からも少し買おうかの、スミスのお陰でライ麦を王都に卸しておるからのその代わりに王都から小麦を買い付けようかの。
その方が不自然さはないじゃろう。」
「確かにライ麦を輸出しておりました。
なら王都ではライ麦分に少し多めに買い付けを行いましょう。
他は予定通りに買い付けを少しずつ行います。」
フレデリックが頷く。
「うむ、まだ時間もあるからの。
穀物の備蓄量はゆっくりと増やしていこうの。
さて、次は・・・夕霧、領内はどうじゃ?」
「ん、特になく。
関の方も問題ない、最近少し雨が降ったようですが、関の補強箇所に修復が必要な所は発生していません。
周辺の植林も問題なく・・・少し成長が早い感じです。」
「うむ、関は問題ないのじゃな。
南西の森はどうじゃ?」
「コラ達が監視しています。
特に動きはないようです。
タケオ達が帰りに寄るのではないでしょうか?」
「フレッドの所からだと少し外れると思うがの・・・
夕霧、初雪に連絡しておいてくれるかの?」
「ん、わかりました。
あ、あと時雨が試験小隊と合流したそうです。
タケオが戻ってくるまで試験小隊と過ごすと連絡がありました。
私は許可しようと思いますが伯爵はどう思いますか?」
「うむ、夕霧の仕事が少し増えるが、向こうに時雨が居れば何かあれば連絡出来るからの。
夕霧と時雨が問題なければわしも異存はないの。」
「わかりました。
2人には連絡しておきます。」
夕霧が頷くのだった。
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