第1428話 ヴィクターは伝達を行ったようです。(初月給。)
「んん~♪」
「農作業の後のスイーツ良いよね。」
「甘ーい。」
「ふわふわ。」
エンマ、フローラ、ジルダにニルデがアスセナの買ってきたスイーツを満面の笑みを浮かべながら食べている。
「落ち着くなぁ。」
「ええ、そうね。」
ドナートとボーナがゆっくりと食べている。
「・・・ヴィクター様から聞きましたか?」
アスセナが聞いてくる。
「「!・・・はい。」」
アスセナの言葉にドナートとボーナが少し緊張しながら答える。
「ん?何々?」
「何かあったの?」
「ん~?」
「どうしましたか?」
子供達も聞いてくる。
「いえ、正式にキタミザト家の部下としてベルテ一家に給金を支給するようにと言われまして、今月分をお持ちしたのですが・・・
こちらになります。
受け取りのサインをお願いします。」
アスセナがバッグから革袋と書類を取り出し、ドナートの前に置く。
「「・・・」」
ドナートとボーナは革袋をまじまじと見つめる。
「「「「・・・」」」」
子供達も見つめている。
「本当に良いのでしょうか?」
ボーナが呟く。
「たぶんですが、それについてはヴィクター様にも聞いたのではないでしょうか?」
「・・・はい、問題ないと言われました。」
「キタミザト家の帳簿にもしっかりと記載されていますから問題ありませんし、キタミザト様がお決めになられた金額です。」
アスセナが答える。
「・・・頂戴します。」
「はい、今月もお疲れ様でした。」
ドナートがサインをして革袋に手を付けるとアスセナが頭を下げサインされた書類をバッグにしまう。
「今日の仕事終了です。
あ~・・・着替えてきます。」
アスセナが席を立ち自室に行ってしまう。
「・・・ん~・・・」
ドナートがジーっと革袋を見ている。
「で?ドナート、何が問題なの?」
エンマが聞いてくる。
「いや・・・ボーナと一緒にヴィクター殿から聞かされたんだがな・・・
月の収入は基本的に月給で頂くという事なんだ。」
「うん、確か前に聞いたと思う。
で?」
「私達の給金は月に金貨7枚なのよ。」
ボーナが目を瞑り、少し項垂れながら言う。
「「はぁ!?」」
エンマとフローラが驚く。
「「??」」
ニルデとジルダは2人が驚いている意味がわからなくて首を傾げている。
「それもここの家賃と土地代は年間金貨45枚、すべてキタミザト家が払ってくれている。」
「なななななななな・・・」
フローラが壊れたレコードのようになる。
「・・・・私達4人とニルデとジルダの計6人?」
エンマが皆を数えながら言う。
「あとアスセナさんの朝晩の食事と住み込み費用も加味して金貨7枚・・・
1人金貨1枚の計算なのよ。
そして・・・」
「この地の家賃負担はない。」
「「・・・」」
エンマとフローラが魂が抜けたような顔をさせガックリと落ち込む。
「・・・ドナート?ボーナ?
何がいけないの?キタミザト様からお金貰ったんでしょ?」
「ダメなのー?」
ニルデとジルダが2人に聞いてくる。
「いや・・・ダメと言うか・・・」
ドナートが難しい顔をさせる。
「キタミザト様が私達にかける期待が凄いのよ。
給与だけで年間金貨84枚、家と畑で年間金貨45枚、計金貨129枚。
私達は何もしなくてもキタミザト家からそれだけお金を頂いているという事になるの。
そして・・・」
「その倍は稼げると踏んでの給金となります。」
アスセナが着替えて戻って来てボーナの言葉を繋ぐ。
「・・・そうなんだよなぁ・・・」
ドナートが腕を組んで首を傾げながら言う。
「と言ってもですね。
必要経費も含めての給金との事らしいですよ。」
「ん?」
「農業をやるなら農機具も修理や買わないといけない事もあるし、種も買わないといけない。
もしかしたら作物の枝の補助で木の棒等々も買わないといけないだろうとの事で、合計金貨6枚と銀貨5枚だったそうです。
そこに私の下宿も兼ねるので銀貨5枚の追加をしたとの事です。」
アスセナが説明する。
「それでも金貨7枚か・・・」
「ねぇ、エンマ。
これってかなり裕福だよね?」
「うん・・・元の村の生活より資金力があるように思うわ。
どうしよう・・・救って頂いただけでなく、かなりの資金を投入して貰ってる・・・
奴隷の首輪とか関係なく相当目をかけて頂いているというのがわかってしまったよ。」
「ご恩を返せるのかなぁ・・・」
「「「「はぁ・・・」」」」
ベルテ一家が深いため息をつく。
「ははは・・・まぁ私も給金には驚きましたが・・・はぁ・・・」
そう言ったアスセナの顔色は悪い。
「「え?」」
エンマとフローラがアスセナの顔色に驚く。
「私もキタミザト家に就職したので今日給金が出まして・・・
金貨2枚なんです・・・どうしましょう?」
アスセナも言ってから大粒の冷汗をかいている。
「嘘でしょう?」
エンマが顔を引きつらせる。
「私死ぬ気で働かないと金貨2枚分のお仕事を熟せません・・・うぅ・・・」
アスセナが軽く泣き始める。
「はぁ・・・私達全員元奴隷ですからね。
こんな好待遇で働くなんて考えもしませんでしたね。
キタミザト様が本当に私達を部下として見ていたと今思い知りましたが・・・」
ボーナが諦めたかのように呟く。
「些か給金が大きすぎる・・・米を作る為と言われているが、その他の作物の改良も数年以内に成果を出さないといけないな。」
「給金貰っちゃったものね・・・頑張るしかないね。」
「上手く事が運べば良いなぁ。」
ベルテ一家が乾いた笑いをしながら話している横で。
「ジルダ、お金は多く貰うとダメなんだって。」
「そうみたい。
まぁ私達はボーナ達にお金を任せてお茶作りと畑作りに専念だね。」
「そうだね。」
ニルデとジルダは我関せずのようだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




