第1422話 163日目 寝る前の話し。(珍客が合流。)
野営準備も終わり軽く体を拭いた面々が焚き火を囲んで夕食を取っていた。
今回の野宿では寝ずの番を1組3時間交代で2人もしくは3人ずつ3組の持ち回りで行う事にしていた。
そしてブルックとケード、コーエンは3番目(朝課の鐘から3時間)の見張り番と一番眠い時間を担当する為、早々に仮眠に就いている。
寝ずの番はアーキン、アニータ、ミルコ組が初日に行うようだ。
そんな3人が抜けた焚き火の周りでは。
「あの2人はちょっとテントの設営が遅かったですね。」
「最初はこんなもんじゃないのか?」
「慣れもありますけど・・・他の貴族軍と一緒に行動した際にこの子達だけ遅れるのもね・・・
上手く出来るまで何回かさせますか?」
「ん~・・・何回も解体してまた組み立てさせるのか?
気が滅入りそうだ。」
「所長が来た時に野宿をするだろうからそこで組み立てと解体を何回かさせて覚えさせますか。」
「ん~・・・どういう理由でさせるかだろうな・・・何とかもう少し早く出来ない物か・・・」
アンダーセンが悩む。
「ちなみにアニータとミルコは何とか時間内に出来ていたな。」
「王都に行く際に習いました。」
「あの時は初雪殿も居ましたし、アーキンさん達も手伝ってくれていましたから。
何回かすれば慣れると思いますよ。」
「となると・・・今回は数回させた方が良いかぁ。
所長達のテントもやって貰おうか・・・
ん?アーキン、周りにスライム達がいるぞ?」
アンダーセンがアーキンに言う。
「ええ、こんなに普通は近くには来ないんですけど・・・なんでしょうかね。
ん~・・・『はい』なら右回り、『いいえ』なら左回りでしたかね・・・
私に用ですか?」
アーキンが問いかけると周りに居るスライム達が右回りをする。
「えーっと・・・それは私の知り合いですか?」
問いかけにスライム達が右回りをする。
「・・・緊急ですか?」
今度は右回りと左回りが半々だ。
「わからない・・・えーっと・・・近くに魔物が居るのですか?」
今度は全員が左回りをする。
「・・・遠ざかった・・・
どこかに付いてきて欲しい?」
全員が右回りをする。
「近場ですか?」
全員が右回りをする。
「えーっと・・・その方向はどっちですか?」
アーキンの質問に一瞬スライムが密集したように思ったがすぐに矢印を作る。
「え?・・・こっち?・・・げっ!?」
アーキンは矢印の方を向くと驚いて立ち上がり矢印が向いている方に走っていく。
見守っていた面々が「どうしたの?」と見守っていると。
「いや~気づいてくれて良かったっスよ。」
アーキンがトレンチコートを着て前をしっかりとボタンを止めた時雨を連れてくる。
「時雨殿、お疲れ様です。」
アンダーセンがそう言って出迎える。
「お疲れっス。
伯爵の所に帰る途中に皆が居たっスから寄ったっス。
何してるっスか?」
「所長達を待っているんです。
ついでに野宿の訓練ですね。」
「そうっスか・・・タケオが合流するまで私が居るっスかね。
ここに居ればタケオ達と連絡付けられるっスからね。
アンダーセン達も良いっスよね?」
「はい、構いません。
ちなみに所長は?」
アンダーセンが聞き返す。
「今日の昼過ぎにジェシー達の屋敷を出立したっス。
初雪が同行しているっスよ。
あとマイヤーとベイノンとアリスとビエラとクゥとルフィナとセレーネとルアーナとヴィートが居るっス。」
「・・・多いですね。
それにコノハ殿とパナ殿が加わるという事ですね。」
「初耳の名前がありましたが?
4名ですか?6名と伺っていますが。」
「ラウレッタとマヌエルはジェシーの所で仕事するっスよ。
なので伯爵の所に来るのは4名っス。」
「わかりました。
ちなみに所長は今日は宿に泊まるのですか?」
「ハツユキの情報では野宿しているっス。
・・・今頃寝ているんじゃないっスかね?
ユウギリからは何もなく、至って普通に過ごしていると連絡があったっス。
エルヴィス家の領内も問題なく。
あと王都のイソカゼからも何もなくと連絡があったっス。
4日前の情報っスけどね。」
「十分に早いですね。
そうですか、とりあえず何事もなく推移しているのは喜ばしい限りですね。」
アンダーセン達が頷くのだった。
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こちらは武雄達の野宿場にて。
「はい、皆、寝ますよ。」
「「「「はーい。」」」」
「はい。」
「きゅ。」
アリスの言葉に子供達+チビッ子が荷台に上がっていく。
「では、所長、私とベイノンも何かあれば起きますので声をかけてください。」
「周辺は初雪達が監視していますし、ミアやビエラも居ますからね。
何かあればすぐにわかりますよ。
それに初雪。」
「タケオ、マイヤー、ベイノン、周囲500m内に魔物はいない。
何かあれば起こす。」
「これでうたた寝してても問題ないですよ。」
「わかりました。
寝ずの番お願いします。」
「所長、お先に仮眠します。」
「はい。
今日もご苦労様でした。」
武雄の横でマイヤーとベイノンが毛布に包まり仮眠を始める。
「タケオ、ユウギリから向こうは何事もなくという連絡が来ている。
こっちからも問題なしと連絡を送った。
ゴドウィン家の関の補強は順調に始めている。
残飯も予定通り貰えているよう。」
「良い事ですね。
とりあえず帰ったらする事が目白押しみたいですからね。
この旅では・・・楽しみたいですね。」
「・・・タケオ、楽しみたい?」
「ええ、楽しみたいですね。」
「タケオが楽しみというのは何かと戦う事?」
「ん?初雪はそんなことを思っていたのですか?
まぁオークを狩りまくりましたが・・・別に戦闘が好きなわけではないですよ。
ただいろいろと楽しみたいだけですよ。」
「ふーん・・・タケオ、オークの欠片ある?」
「あぁ、夕食がまだでしたか。
そこに置いておきますから周辺のスライム達も呼んで食べなさい。」
「はい。」
初雪は武雄からオークの肉を貰い受け、少し離れて座るとスライム達が寄ってくる。
武雄は初雪達を見ながら薪を少しずつ足すのだった。
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