第1420話 武雄の暇つぶし。3(黒スライムの体液は防具へ。)
湯浴み場にて。
「はぁ・・・やっぱり浸かるのは良いですね。」
「所長との旅の良い所はこうやって空を見上げて湯浴みが出来る事です。」
「本当、これに慣れてしまうと家での湯浴みが味気なくていけません。」
「あぁぁ・・・」
男性陣の4名はのんびりと湯船に浸かっている。
もちろんお湯は武雄が張り直しました。
「所長、さっきの板ですけどね。」
ベイノンが聞いてくる。
「ええ、どうでしたか?」
「あれを盾に組み込むのですか?」
「どう思いますか?」
「そうですね。
切りつけた時にある程度のへこみが出来て、刺突した時にひび割れ程度ですんだというんですが重量が1/4である事が重要かと思います。」
「ですね。
重量は1/4で刺突されなければある程度の固さを保持しているとなりますね。
ですが、鉄にあの程度の突きだとひび割れではなくへこみで済んだでしょう。
現状での評価では・・・単独素材での盾は出来ませんね。」
「軽いですよ?」
「軽くても防御性能が低ければ意味はありませんよ。
商品化させるなら少なくとも今の木材を使った盾と同等性能でないといけないでしょうね。」
「同等・・・ですか。
難しそうですね。」
ベイノンが悩む。
「まぁ・・・少なくとも同等には出来るようにはしますけどね。」
そんなことを言う。
「出来るのですか?」
「出来ないと思ってはいませんよ。」
「所長はそうですよね。
常に何とかさせようと思っていますよね。」
マイヤーもリラックスしながら言ってくる。
「黒スライムに関わらずスライム関係は用途が多そうです。」
「赤、緑、青、白、黒でしたか。
単体の特性だけでなく混ぜた際の特性があるとなると相当使えそうなのですね。」
「そうです。
何が出来るのか確認しながら過ごしていかないといけないでしょうね。
と、意気込んでみたのですが・・・盾ですか・・・」
「所長としては性能面の不安ではないのですよね?」
「ええ、さっきも言ったように同等の防御性能は出せると考えています。
ですが・・・原材料の入手が困難ですよね。」
「ん~・・・スライムですが、夕霧殿達ですよね。
難しいのですか?」
マイヤーが聞いてくる。
「研究向けの原材料の入手だけを見れば可能です。
ですが、残飯ですからね・・・肥料にも関係しているのでね。
製品化に使える量は限られるでしょう。
それにエルヴィス家向けでさえ400個常備で1年間で100個交換ですよ?
それがゴドウィン家、テンプル家・・・国境沿いの貴族向けで何個ですか?
さらに王都の騎士団欲しがりませんかね?」
「・・・カトランダ帝国、ウィリプ連合国・・・5家でしたか?
あと王都が第1と第2騎士団と王都守備隊もですよね。」
「確か向こうの方は第一研究所所管ではなかったでしょうか?」
「スライムの体液は販売はしますが、納入時の商品名は変わっています。
スライムが乱獲されないように原材料を伏せるのは夕霧達を守るために当たり前の処置ですけどね。
・・・あくまで販売ですからね?」
「それでは・・・王国中へは無理ですね。」
「でしょう?
なので・・・黒スライムの盾や防具はエルヴィス家と試験小隊の面々ですかね。
あとは王都守備隊に卸すのはエルヴィス家と話して可能にしますか。」
「何とかそこまでは卸せるようにしないと王都側が納得しないと思います。
・・・ん?・・・防具ですか?」
「ええ、私はフルプレート着る気はないんですよね、重そうですし。
それにドラゴンの皮も使いますけど、供給面に不安がありますからね。
出来れば今売られているレザー・アーマーを改良してフルプレート並みにしたいと思いませんか?」
「それは確かに取り扱いや軽さではレザー・アーマーの方が良いですし、移動も今回のような胸当てや小手等の最低限の装備をしますので鉄製と同じ防御力があると嬉しいですが・・・
革製の防具にあの板を組み込めるのでしょうか?」
「・・・組み込めるのかではなく、組み込むんですよ。
というより鉄板を組み込んだ物とかあるのではないですか?」
「ありますが、重いのであまり好まれてはいませんよ、
・・・あ、胸当ては革製に鉄を張り付けた物はありますけど、重いですからね。
良い素材の胸当ての方が売れているようですよ。」
「・・・一番安いのに加工して配備させますか。」
「他の革系の防具の価値が下がりそうですね。」
「ん~・・・安い革で見た目を良くしますか?」
「革で見た目をですか・・・確かに元が安価ならその分を加工費に向けられますよね。
それも良いかもしれませんね。」
「はい、じゃあ、マイヤーさんは王都守備隊に報告書をお願いしますね。
スライムという単語は出さないでレザー・アーマーをフルプレート並みの防御力にする研究を始め、少数のみ配備する計画があると報告しておいてください。
あと欲しいなら個数を言っておいたら作るかもしれないという憶測とついでに他に漏らしたら納入しないとね。」
「所長自らされたらどうですか?」
「めんど・・・んんっ、組織の長同士で話し合うと気を利かせて購入するかもしれないでしょう?
欲しくない装備を買わせようなんて思いませんよ。」
「まぁ言っている事はわかりますが。」
「実際に出来てないのに売り込みもないですけどね。
費用もいくらかかるかわからないし、今は研究していくだけで手一杯でしょう。」
武雄が伸びをしながら言うのだった。
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