第1416話 寄宿舎生活。3(エイミーとスミス。)
エイミーが自室でスミスとジーナに貰ったキャラメルを食べながら物思いにふけっていた。
「はぁ・・・」
「なーに、エイミー、さっきのスミスの言葉が気になるの?」
「気になりますね。
タケオさんを追うなんて出来るのかしら。」
「スミスの志は立派よ。」
「スミスの決意を笑う気はないわよ。
でも道は険しいのがわかっているからね。」
「まぁタケオやスズネは考え方からしてエイミー達からすれば異質だからね。
もしかしたら今の常識を疑う事から始めないといけないかもよ。」
「常識を疑うかぁ・・・
剣や盾を否定して・・・小銃ですか。」
「小銃?・・・ここにあるんだ。
エイミーは見たことあるの?」
「アルと契約する前にタケオさんが使っているのを遠目からね。
お爺さまや父上は興味を示していますけど、タケオさんは売る気は今の所ないみたいですね。
でも、ああいうのを作り出して皆が使えるまで使用方法を練り込むくらいでないとタケオさんに追い付いたなんて言えないんじゃない?」
「そうかもね。
でも・・・タケオもなんだかんだと銃を量産しようとは思っていないんじゃない?」
「そうなのでしょうか・・・」
「だってトレンチコートや黒板の売れ行きを見ているとタケオが本気で売る気なら今頃王城の騎士団辺りが購入しているわよ。
それをしないのは小銃はここでは使わせる気がないという事よ。」
「・・・となると、武器での発展形は剣や盾・・・あ、確かタケオさんの研究所は盾の研究でしたね。」
「うん、小銃を普及させる気が今はないのがわかったわ。」
「そうなのですか?」
「そうよ。
その小銃を普及させるならもっと大々的に攻撃力をアピールするでしょうね。
盾の研究だと真逆よ。
つまりタケオは攻撃よりも防御を優先的に発展させようとしているのよ。
なので、当分はタケオは武器の発案はしないという事ね。
となると・・・盾は何かあるのかな?・・・ジュラルミンなんて出来ないだろうしなぁ。」
「じゅらるみん?」
エイミーがアルに聞き返す。
「あー・・・気にしないで。
タケオがどんな盾を作るのか気になるなって事よ。」
「そうね~。」
「で、スミスをどうするの?」
「どうもしませんよ。
私はタケオさんではないので新たな発想なんて出来ませんからスミスが危ない事をしていないかくらいしか見ていられませんし、ジーナが傍に居れば危ない事をする事も少ないと思いますからね。
見守るだけです。」
「・・・そうかぁ。
そういえばスミスとスイーツ食べに行くのどうするの?」
「・・・そうだった。
あ~・・・試験終わったらかなぁ。」
「じゃあ今は試験勉強ね。」
「そうなるわねぇ。
じゃやるか。」
エイミーが机に向かうのだった。
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スミスの部屋。
「・・・とは言ったものの。」
「主、止まってます。」
「67・・・68・・・何をするべきかな?・・・69・・・」
スミスが腕立てをしながら言っている。
「まぁ少なくとも何か作り出すというのが早い感じではあるかな?」
「70・・・作り出すかぁ・・・71・・・」
「それがタケオに意見を聞くのに役立つと思いますけどね。
『これこれを作ったから意見を聞きたい』と。」
「・・・72・・・タケオ様が何かいうよりもマリが何か言いそうだけどね・・・74。」
「主、1個飛びましたよ。
まぁ言うでしょうね。」
「74・・・75・・・となると武具系はマリの方に聞いてやっていけば良いとなるよね。」
「主が望むなら。
あとは無難なのは文具や料理でしょう。」
「料理はないなぁ。
タケオ様が考え付く物の方が各段に上だしね。」
「それは然り。
残るは文具ですが・・・黒板の普及が思ったよりも早いですね。」
「そうだね。
どうも王立学院内にも数個入れるみたいだね。
再来週に数個の教室が改修になるんだって、2、3日で済むみたいだけど。」
「ふむ・・・まぁタケオの事業が上手く行くのならエルヴィス家にとっても良い事と捉えるべきでしょう。
出来れば工房の製作能力を高めてくれるともっと普及すると思いますが・・・難しいのかもしれないですね。」
「黒板やチョーク、リバーシに将棋・・・最近持っている生徒がいたよね。
一般で買っている者達がいるという事は相当注文が来ているんだよ。
あのぐらいが限界じゃないのかな?
早々に人は増やせないらしいからね。」
「予算と見通しを鑑みて雇用がなされますからね。
そういった観点からも主が考え付く物も産業としてエルヴィス領内で製作出来る物が望ましいですね。」
「そうだね。
エルヴィス領で生産出来ればその分皆の生活が良くなるしね。
手にするお金が増えればいろいろ買ってくれるだろうしね。」
「ええ、経済はお金が回ってこそですからね。
使えば使った分だけ自分の仕事の忙しさにもつながるという事がわかればお金を使うでしょうし、仕事も捗るという物です。」
「そうだ・・・ね。
80、今日は終了だね。」
「ええ、良いでしょう。
あとでジーナと素振りをしましょう。」
「はーい。
じゃ、それまで読書かな。」
「確か宿題が出ていましたよね?」
「・・・するかぁ・・・」
スミスが机に向かうのだった。
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