第1415話 寄宿舎生活。2(武雄が王家にした事。)
「他には何か入ってないの?」
エイミーがジーナに聞く。
「ん~・・・そうですね。
・・・なぜに?」
箱の中を見ていたジーナが呟いて止まる。
「どうしたの?」
エイミーが後ろから聞いてくる。
「これ・・・」
ジーナが箱から小太刀を取り出す。
「これってタケオさんの装備よね?」
「エイミー殿下、タケオ様がジーナの装備品として渡しているんですよ。」
スミスが説明する。
「へぇ、ジーナの・・・装備品?
新たに来たという事は・・・」
「ご主人様・・・私がもう壊したと思っているのでしょうか?」
「タケオさん・・・どれだけ寄宿舎が殺伐としていると思っているのかしら・・・」
エイミーが額に手を付き呆れている。
「ん~・・・マリ、僕の装備はショートソードで良いの?」
「良いのではないですか?
特に規制はしていませんよ。」
チビマリがスミスの肩に実体化して言う。
「でも僕もジーナもマリから剣術を習っていますよね?」
「そうですね。」
「ならジーナみたいに小太刀の方が良いんじゃないの?」
「出来ればとは思いますが・・・まぁまだ固定させなくて良いと思います。
むしろ教えた事の先にショートソード向けに新たな剣術が発見されるかもしれないですし。
なければないで小太刀にすれば良いだけの事と割り切っています。
主、気に病む必要はないです、今は一心不乱に剣術を学ぶ事が一番です。」
マリが考えながら言う。
「そうかぁ。」
「・・・スミス達がしている剣技は特殊なの?」
エイミーが聞いてくる。
「「特殊です。」」
スミスとジーナが即答する。
「そ、そぉ、でも使う剣によって剣技が違うというのは意味はわかるんだけど、そこまで違うというのがあまりわからないのよね。」
エイミーが首を傾げる。
「エイミー殿下、殿下が言うのはショートソードやロングソードでという大枠でですよね?」
ドネリーがエイミーに聞く。
「うん・・・長さや重さででしょう?
私剣技とか見ていても違うという事はわかるんだけど・・・細かい違いがわからないわ。」
エイミーが腕を組んで考える。
「エイミー殿下に剣を持たせませんよ。僕が持つんですから。」
スミスが何気なく言う。
「え!?」
エイミーはジーナを横目で見るがジーナも驚いている。
「そぉ、スミス、ありがとうね。」
すぐにエイミーがにこやかにスミスに言う。
「はい、エイミー殿下を戦場に行かせないようにしますからね、剣なんて持たせませんよ。」
「ん~・・・?」
エイミーがジーナを再び横目で見ると諦めながら首を振っている。
「そっかぁ、そうならないように政治をして行かないといけないわよね。」
「はい。」
スミスが頷くのだった。
「あとは・・・スミス様、お菓子です。」
ジーナがスミスに鉄箱を渡してくる。
「あり」
「「欠片ありませんか!」」
スミスが返事をするのとほぼ同時にエイミーとドネリーが身を乗り出して言ってくる。
「・・・えーっと、王家の姫君が欠片とか言わないでください。」
ジーナが対応に困る。
「だってね~?
エルヴィス伯爵家の料理となると絶対に美味しいだろうし、欠片でも満足しちゃうわよ?」
「私はお付きですけど王家の方々が美味しいと言うようなお菓子なんて滅多に食べれませんし、王城や寄宿舎の料理が美味しくなったのはエルヴィス家のお陰と聞いていますから気になります。」
エイミーとドネリーが言ってくる。
「スミス様、どうされますか?」
ジーナがスミスに聞く。
「中身を見てからだね。」
そう言いつつスミスが蓋を開ける。
そこには1つ1つ油紙で包れたキャラメルがギッシリと入っていた。
「・・・あ~・・・ジーナ、キャラメルだよ。」
「エルヴィス家の門外不出のお菓子ですね。」
「「何その異名は!?」」
スミスとジーナの言葉にエイミーとドネリーが驚く。
「ご主人様がエルヴィス家に勤めて早々に作ったお菓子でしたか?」
「そうだね。
陛下達がお忍びで来た時に作ったね。」
「という事はお爺さまとウィリアム叔父上やレイラお姉様も食べたのですね?」
「「はい。」」
「・・・前に頂いたレシピにはなかったわよね・・・
あ、でもこの飴は前にレイラお姉様達から1つ頂きましたかね・・・」
エイミーが考える。
「エイミー殿下、ご主人様は王家に何のレシピを渡されたのですか?」
「ん?えーっと・・・王家と王城だとプリン、バターサンド、ショートケーキ、マヨネーズ、カルボナーラ、各出汁の取り方、茶碗蒸し、トンカツ、カツサンド、コロッケだったかな?
あと第2皇子一家には魚醤、魚のすり身料理としてちくわ、つみれ、さつま揚げ、かまぼこと大豆料理で湯葉、豆腐、厚揚げ、がんもね。
第3皇子一家には魚醤とさつま揚げ、つみれね。」
エイミーが思い出しながら言う。
「・・・そんなにですか?」
ジーナが呆れていた。
「ええ・・・本当、タケオさんには感謝しています。
ちなみにクリナからの手紙に領内で少しずつ街中の料理人達に豆腐を教えていて今度専門店を作るという事でしたね。
少しずつですが、実家の商売が良くなっているようで安心です。」
エイミーが優しい顔で頷く。
「んん~・・・」
スミスが考え込んでいる。
「スミス様どうしましたか?」
ジーナが聞いてくる。
「いや、僕が携わったのはライ麦を王都に卸して貰えるようにしただけだよね?」
「だけ・・・という訳ではないと思います。
スミス様の年齢を考えればそれだけでも十分凄い事かと。」
「うん、お姉様方も喜んでいたんだけど・・・
タケオ様の背中を追う者として、何か1つ作り出すような発想をしてみないといけないと思うんだよね。」
「・・・無理では?」
ジーナが少し考えて答える。
「うん、僕もそう思うけどね。
ただ・・・やるやらないではなくて今度実家に帰った時にタケオ様に具体案を示せるような何か発想をしてみようと思うのだけど・・・」
「考える事は良い事かと思います・・・ですが、それは今必要なのでしょうか?」
「そこね・・・マリ、毎日1時間くらい本を読んで考えて良い?」
「ふむ・・・今の1日の予定からすると・・・30分が良い所だな。
1時間するとなると流石に睡眠時間を削りかねない。」
「スミス様、没頭する事は良い事かもしれませんが、学業を疎かにしてはいけません。」
ジーナが忠告してくる。
「・・・うん、じゃあ1日30分考える時間を取ろうと思う。
それで何が出来るのか考えて、実家に戻った時にタケオ様と相談してみよう。」
「はい、それでよろしいかと。」
ジーナが頷くのだった。
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