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第1407話 ローチ工房にて。1(挨拶じゃなかったの?)

ローチ工房の会議室にて。

ダンとクローイが到着するとローチの家族、従業員と軽く挨拶をし、「泊まる費用勿体ないから今日から泊まりなよ」というローチの奥さんの提案で早々に宿屋から幌馬車を移動し、荷物も従業員皆で運び入れて早々に引っ越しが終わり、今は職人枠としてテイラー、ローチ、ローチ工房の従業員、キャロルとサテラ製作所の従業員、研究所からトレーシー、鈴音、書記としてヴィクターとアスセナが集まっている。


「・・・船と荷馬車のコンテナによる荷物の積替え時間の短縮・・・」

一通り話を聞いたダンが難しい顔をさせながら呟く。

「画期的ですね。」

一方のクローイは目を輝かせている。

「ええ、これに幌馬車の改造も今していますが、こちらも上手く行けばこの国の輸送日数が1日ないし2日は短くなるでしょう。」

ローチが黒板に書きながら言う。


ちなみに黒板は武雄一派には最優先で卸されていた。モニカ曰く「仲間だからね1、2個ならなんとかする」と苦労を共にする者には優遇措置があるのだった。

また、ベアリングの事も説明済みだった。本来は秘匿技術かもしれないがこの話が頭にないと他の話もできないので守秘とした上で話されている。


「ベアリングというのはそこまで良い物なのですか?」

クローイがローチに聞く。

「試験段階で荷馬車に付けた所、現状比1.5倍以上の重さの物を運べるようになっています。」

「なるほど、同じ重さの荷物を運ぶなら馬への負担も軽く出来る、もしくは同じ重さの荷物ならその分遠くか早く着ける可能性があるという事ですか。」

クローイが頷きながら言う。

「だが、耐久性が今問題でな。

 金属摩耗を抑える何かが必要なんだ、だが材料的にはこれ以上の固さは出せないのでベアリングの表面に何か塗布するか、ベアリングの棒の数を少なくもしくは多くするのか・・・」

キャロルが考えながら言う。

「軸棒は木ですからね・・・木に負ける鉄というのは案外面白い発見ですよね。」

「ベアリングの棒部分の内側の両端にははみ出さないように金属の当て板がありますよ。」

「でも実質は軸に鉄のベアリングが負けているんですよね。」

「まぁそうなんですけど。」

職人達がワイワイ話している。


「・・・テトちゃん、金属摩耗って・・・金属が金属と擦り付けあうという事だよね?」

鈴音が説明を聞いて肩に乗るテトに聞く。

「そうよ~、もっと簡単に言うと金属が何かに擦り合わさると金属が削れる事ね。

 スズネやタケオの所でも実際にある事よ。

 一番身近な事だと・・・あ!扉の蝶番、ああいった所にも発生しているわ。

 悪くなるとギギッと音がして開閉に力がかかるでしょう?あれよ。」

「金属・・・例えば自転車のチェーンも?」

「そうね、あれも摩耗といえば摩耗かしらね。

 どうしたの?」

「ん~・・・自転車のチェーンの動きが悪いってたまに起こっていたんですよね。

 その時に何をしたのか・・・オイルを吹き付けて固みを取っていた?

 あれは金属摩耗じゃなくて錆だったのかなぁ。

 オイルを吹き付けた後は動きが滑らかだったんですよね。」

鈴音がそんな事を言う。


「スズネ、今何と言った?」

キャロルが真面目な顔で鈴音に聞く。

「え?いえ・・・」

「スズネ、今は何でも案を出して試さないといけない段階だ。

 思ったことがあるなら言いなさい。」

キャロルが言う。

「はぃ・・・金属と金属が当たる所にオイルを塗って当たりを滑らかにしてみた事があって・・・

 金属摩耗の話で滑らかは変ですよね。」

鈴音が「あはは」とバツが悪そうに笑いながら言う。

「いや・・・良いんじゃないか?」

キャロルが考えながら言う。

「滑らか・・・確かにベアリングの目的は軸の動きを滑らかにするものです。

 もっと滑りやすい物を塗り込んでみるというのもありですね。」

ローチが賛同する。

「そう言えばメイドの研修で伯爵邸では週に1度は掃除の際にオリーブオイルを扉の蝶番に塗ると言っていましたね。」

議事録を取っていたアスセナが言う。

「・・・塗り込むのではなく入れ込んでしまうのはどうですか?」

テイラーが思ったことを口にする。

「テイラー、どういう事だ?」

「オリーブオイルは塗ってもすぐに落ちそうですよね。

 なら・・・」

テイラーが立ち上がり黒板に簡単に書き始める。

「例えば・・・こうやってベアリングの外側に凹カバーと内側に凸カバーを用意して・・・

 中にオリーブオイルを充満させるというのはどうですか?

 これなら1か月保つのではないですかね。」

「「あー!」」

キャロルとローチが席を立つ。

「外側のカバーを荷台側で固定して、内側のカバーを軸に固定するんですよね。

 それだと外側と内側のカバーの隙間から漏れませんかね。」

クローイが考えながら言う。

「それに封入するとなるとオイルを入れるもしくは交換する方法はどうなんですか?」

ダンも言ってくる。

「あ!オイルの交換は上と下にボルトで止められるような穴を用意しましょう。

 オイルを抜く時は上下両方のボルトを抜いて、入れる時は下のボルトを締めておけば良いんです。

 それに閉める時に薄布をボルトに巻き付けて絞め込めば隙間が少なくて垂れ辛いと思います。」

鈴音が言ってくる。

「なるほどな。

 これならダンの言ったオイルの交換は楽そうだな。

 スズネ、良い発想だ。」

「あ!褒められた!

 やった!」

キャロルにお褒めの言葉を貰い鈴音が嬉しそうにする。

「あとはクローイの言った隙間問題だな。」

「あ!」

鈴音が思い出したように声を上げる。

「次は何だ?」

「いや・・・使えるかわかりませんが、前に似たような事を武雄さんに相談した事があったんですけど。

 消しゴムを使って隙間を埋めるのはどうですか?」

「「消しゴム?」」

ダンとクローイが首を傾げる。

「モニカの所のだな・・・だが、柔らかい物を隙間にか・・・なるほどな。

 流石キタミザト様だな。」

「気が付きませんでしたね。

 金属同士で閉める事しか頭にありませんでした。」

「流石スズネさんですね。」

キャロルとローチが驚き、テイラーが褒めている。

「消しゴムって何ですか?」

クローイが聞いてくる。

「あぁ・・・そこも説明が必要ですね。

 鉛筆と消しゴムと言ってこれもキタミザト様が考えたんですよ。」

「「またキタミザト様ですか!?」」

ダンとクローイが武雄の怖さを薄々と感じ始めるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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