第1396話 初遠征。(ウィリアムの疑い晴れる?)
試験小隊の面々が騎馬に乗り、2列になって街道を進んでいく。
全員が制服にトレンチコート着用だった。
「はぁはぁはぁ・・・」
ケイ・ケードが汗をかきながら一生懸命に周りに合わせて馬に乗っていた。
隣を行くパメラ・コーエンもケイと同じように大量の汗をかいていた。
速度は強行軍のように全速力でもなく、のんびりと歩いているわけでもない。
馬にあまり無理をさせない程度で小走りなのだが・・・魔法師専門学院で習った時よりも長時間乗っていた。
そして馬達も慣れているようで速度が落ちないで進んでいく。
一番若手の2名の乗り手は体力がゴリゴリとすり減っていた。
ケイとパメラの前にアニータとミルコ、後ろにアーキンとブルックが居る。
「・・・ケード、コーエン、適度にケアを使いなさい。
基礎は教えたでしょう?
体力が著しく落ちています、そのままでは落馬しますよ。」
後ろからブルックが指示を出してくる。
「はい!」
「はいっ!」
2人が返事をするが騎乗しながらのケアは実は結構難しいと感じていた。
今の2人ではケアをしようと意識を向けると歩調に合わせて馬の腹を軽く蹴るタイミングを間違え、馬が怒ってしまっていた。
2人に与えられている馬は気性が温和だが限度はある。
馬がそっぽを向けば動いてくれなくなってしまうので、ケアよりも馬を蹴るタイミングを気を付けている状態だった。
「はぁ・・・アーキン。」
「あぁ。」
ブルックとアーキンがケイとパメラの横に来て軽く背中を叩いてケアをかける。
「まぁ・・・慣れだな。」
「そうなんだよね~・・・こればっかりは失敗しながらケアのかけ方を覚えないとね~・・・」
アーキンとブルックが2人にケアをかけるとすぐに後ろに戻る。
「はぁはぁ・・・パメラ、どう?」
「ケイちゃん、だいぶ楽になった・・・だけど、まだケアをかけるの怖いね。
まだ蹴るのに集中しないと難しいよ。」
「そうだね。
どのタイミングかわからないね。」
2人は余裕はないようだ。
その前を行くアニータとミルコ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「何とかね、ミルコは?」
この2人も汗をかきながら皆に付いて行っている。
「前の王都に向かう強行軍に比べれば楽かな?
でもキツイね。」
「そうね、あれに比べれば楽ね。
前よりかはケアのタイミングもわかってきたわ。」
「僕もなんとなくわかってきたよ。」
「よし!頑張ろう。」
「うん。」
この2人は後ろの2人よりかは余裕があるようだ。
先頭を行くアンダーセンにオールストンが話している。
「それにしてもアンダーセン、あの4人はちゃんと着いて来れているな。」
「・・・そうですね。ですが、限界とみるべきです。
予備の行程の方に切り替えます。」
「そうだな、今は無理をさせる時期ではないな。
この程度の移動を経験させる事に意味があるだろう。
南町で今日は終わりとしようか。」
「後ろに合図を。」
「了解、隊長。」
オールストンが後ろに合図を送るのだった。
・・
・
「「ん?」」
アーキンとブルックがアニータとミルコの前の者達の合図を発見する。
「予備に切り替わったか。」
「いたし方ないわ。
初めてにしては十分かもよ?」
「反省会は宿でだな。
アニータとミルコは何とかケアを出来ているが、ケードとコーエンは難しいか・・・
よし・・・まぁ切り替わったのならしょうがない。
4人に教えて南町まで踏ん張らせるか。」
「だね。」
アーキンとブルックが4人に活を入れに動くのだった。
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王城の第3皇子一家の執務室。
「「なるほどね。」」
アルマとレイラが長ソファに座りながら肩を寄せ合い、総監局からの精力剤を購入した経緯の報告書を読んでいた。
「なんて書いてあるかはわからないけど・・・僕が原因じゃないでしょ?」
「そうね。
今回はウィリアムじゃなかったわね。」
アルマが眉間に皺を寄せながら答える。
「ほらほら、違うでしょ?」
「ウィリアム、疑ってごめんね。
でも経過観察は続けるからね。」
レイラがにこやかに言う。
「おぉぅ・・・」
ウィリアムががっくりとする。
「で、アルマおば・・・お姉様、レイラお姉様、何と書かれていたのですか?」
パットがアルマの睨みにすぐに言葉を変えたがビビっている。
「ふむ・・・要約すると」
とそこで執務室の扉がノックされる。
「ん?・・・今日は訪問予定はないよね?」
ウィリアムが首を傾げる。
「ええ、お義父さまは明日ですね。」
レイラが頷く。
「とりあえず聞いてみましょう。」
アルマが頷く。
「そうだね。
どうぞ。」
ウィリアムが答えると警備兵が入ってくる。
「殿下方、失礼いたします。
ただいま受付でジーナ殿より面会のご要望があったのですが、いかがいたしますか?」
「ジーナちゃんが来たの?1人?」
「はい、お一人で参られています。」
「・・・構わないわ。通して頂戴。」
レイラが許可を出す。
「はっ!すぐにお連れ致します。」
警備兵が退出していく。
「なんだろうね?」
「学院の授業に飽きたのかな?」
「ジーナが?
飽きてもここには来ないんじゃない?」
「・・・」
王族4人が首を傾げる。
パイディアーがジーナとパラスの為にお茶の用意をするのだった。
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