第1394話 誰が就職できるのか。(決定。)
昼食も終わり皆が客間に集まっていた。
正確には皆で食事をした後、子供達は一旦自室に戻り小一時間籠ってから客間にやってきていた。
「「「・・・」」」
皆が一言もしゃべらずにお茶を飲んでいる。
子供達はソワソワしながら、武雄とアリスとジェシーは緊張していないような雰囲気で、ビエラとクゥ、ミア、マイヤー、ベイノンは我関せずで静かにお茶を飲み、初雪と時雨は読書をしながら皆を監視、ゴドウィン伯爵は腕を組んで瞑想をしている。
「・・・」
「・・・」
「・・・話が進みませんね。」
アリスがボソッと呟く。
子供達が体をビクッとさせる。
「・・・私達から言う物でもない気がするわ。」
ジェシーが呟く。
「はぁ・・・子供達が言う事でもないかと思いますが?」
アリスがため息をつく。
「タ・・・タケオ、どうだ?」
ゴドウィン伯爵が武雄に満を持して聞いてくる。
「子供達の自主性に任せます。
というよりも子供達に聞いたらよろしいのではないですか?」
武雄がすまし顔で言ってくる。
「ん~・・・そうかぁ・・・
よし!今一度聞こうか・・・我がゴドウィン家に仕えてくれる2名は居るか?」
「「「!」」」
子供達が目を合わせて頷く。
「は・・・伯爵様、奥様、昨日から先ほどまで私達皆で話したのですが、私達では2名に絞れませんでした。
つ・・・つきましては伯爵様方の方で2名を選んでは頂けないでしょうか!
お願いします!」
一番年上のルフィナが汗をかきながら話す。
「「「「「お願いします!」」」」」
子供達が頭を下げる。
「ふむ・・・」
「そう・・・」
ゴドウィン伯爵とジェシーが頷く。
「ルフィナ、セレーネ、ルアーナ、ヴィート、ラウレッタ、マヌエル。
それが貴女達の決断で良いのですね?」
アリスが聞いてくる。
「「「「「「はい!」」」」」」
6人が頷く。
「なら私は何も言いません。
ゴドウィンさん、ジェシーさん、すみませんが選んでいただけますか?」
「そうね・・・アナタ、少し席を外しましょう。」
「わかった・・・タケオ、すぐに戻る。」
「はい、わかりました。」
武雄が頷くとゴドウィン伯爵とジェシーが客間を後にするのだった。
「キタミザト様・・・私達選択をしたんですよね?」
ルフィナが聞いてくる。
「ええ、しっかりとした選択だったと思いますよ。」
武雄が頷く。
「キタミザト様、俺達何も決められなかったんですが・・・」
ヴィートが申し訳なさそうに言う。
「それは違います、何も決められないという事を決めたじゃないですか。
無理やりに誰かにさせるではなく、自分達では決められないと意思を示したんです。
大したものですよ。」
武雄が頷く。
「そうですね。
時間も情報もあまりない中で迫られた決断です。
そういう状態では得てして、有無を言わさず誰かに押し付ける意見が出て、それを他の人達が後押しするというのが多いのですが、そこで貴方達は踏みとどまった。
自分達で決められないなら他者に委ねる・・・早々出来る決断ではありません。」
アリスも頷く。
「これは良かったのですか?」
ルアーナが聞いてくる。
「良いも悪いもこの段階では断定する物ではありませんよ。
時と場合により他者に委ねることは悪い結果に繋がる事もあります、その時その時でどんな選択肢があるか、それは仕事や勉強で覚えていくものなのです。」
武雄が言う。
「今回は選ばないという選択肢が貴女達の目の前にある事がわかり、貴女達は選びましたが、それが良かったのか悪かったかは数か月、数年後にわかる事です。
昨日の話ではありませんが、良かったと思わせるような結果を出すのは貴女達の努力次第です。」
アリスが言う。
「真面目に仕事をすればそれ相応の能力と知識が身に付く・・・でしたよね。」
ラウレッタが頷く。
「そうかぁ・・・選んだんだね。」
セレーネが呟く。
「あとは伯爵様と奥様が誰を選ぶか・・・」
マヌエルがそう言うと皆が頷くのだった。
・・
・
とあまり時間をかけずにゴドウィン伯爵とジェシー、執事長とメイド長が入ってくる。
「さてと・・・話し合った結果だが・・・
本当に良・・・いや、やめようこの言葉は相応しくないな。
我が家で働いて貰いたい2名はラウレッタとマヌエルだ。」
「「!」」
呼ばれた2人の背筋が伸びる。
「そうですか・・・2人とも立ちなさい。」
武雄が声をかける。
「「はい。」」
ラウレッタとマヌエルがその場に立つ。
「ゴドウィン伯爵家で頑張りなさい。」
「短い間ですが・・・お世話になりました。」
「これから頑張ります。」
2人が武雄に深々と頭を下げて挨拶する。
「体に気を付けてね。」
アリスが若干涙目になりながら言う。
「うん・・・2人ともこっちに来て。」
ジェシーが手招きするとラウレッタとマヌエルがジェシーの前に立つ。
するとジェシーが2人を抱きしめる。
「ようこそ、ゴドウィン家へ。
これから15年よろしくね。
仕事で辛い事もあるだろうし、楽しい事もあるでしょう。
その1つ1つがかけがえのない経験になると思うわ。
わからない事があるなら恥ずかしがらないで先輩達に聞く、失敗したら次に同じ失敗をしないように改善させる、少しずつでも良い、努力を怠らなければきっと貴方達2人は我が家を代表する執事とメイドになります。」
「2人ともこの屋敷で初めての異種族の雇用になる。
だが、異種族だからと厳しくするつもりも甘やかすつもりもない。
種族関係なく仕事をさせる。
まぁ若干、能力を見ながらさせる事に違いは出ると思うが基本は変わらない。
給金等々の待遇は昨日説明した通りだな。
どんな風に成長するか楽しみだ。」
ゴドウィン伯爵が2人の頭を撫でながら言う。
「「お世話になります。」」
2人が返事をするのだった。
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