第1393話 帰宅。(厨房での試作。)
ゴドウィン伯爵邸の客間。
客間の扉がノックされ、ジェシーが返事をするとアリスとメイドが入ってくる。
「ジェシーお姉様、戻りました。」
「おかえりなさい。フレッドは執務中よ。
タケオさんは?」
「厨房に向かわれました。」
「あら・・・さっそくかぁ。
期待大ね!」
「はい、ですが、タケオ様的には若干不安だと言っていました。」
アリスがソファに座りながら答える。
「そうなの?」
「ええ、タケオ様的にはサラダのドレッシングには基本的にオイルを少し入れた物の方が香りや味が変わり、タケオ様はそちらがお好きなようでそちらばかりを食していたそうなのです。」
「確かにマヨネーズもオリーブオイルを使うわね。」
「はい、なのでレモンをベースにしようかとかいろいろ青果屋で唸っておいででした。」
「なるほどね。
うちの料理人達もレモンに注目はしているのよ・・・でも何か足らない気がするのよね・・・」
「タケオ様なら何か美味しい物を作ってくれると思います。」
「ええ、待っていましょう。」
ジェシーが頷く。
「で・・・子供達は・・・お昼寝ですか?」
「さっきまで本を読んだりしていたんだけどね。
昼食前に軽く寝ることにしたようよ。」
「そうですか・・・」
アリスが悲しそうな顔をさせる。
「・・・子供達と軽く話したけど、この子達もいろいろと考えているわ。
現状もちゃんとわかっているし、子供ってこんなにも強いものなのね。」
「タケオ様が連れてくる子達は皆精神的にも肉体的にも強いですね。」
「タケオさんの引きの強さかもしれないけど・・・子供はこういうものなのかもしれないわね。
大人達が侮っているだけなのかも。」
「そうかもしれません。」
「アリス、昼食までのんびりしていましょう。」
ジェシーがそう言うとメイド達がお茶を用意するのだった。
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ゴドウィン伯爵邸の厨房の一角。
武雄が何品か作って料理人達と試食をしていた。
1つ目は玉ねぎを半分は擦りおろし、残り半分は細かくしておき、それに生のニンニクを擦りおろした物を和え、出汁と塩と砂糖を少々入れて一旦煮詰めてから紅魚の干物の肉部分を細かく取った物を湯通しソースに和えた物。
2つ目は玉ねぎのみじん切りとウスターソース、塩、砂糖とトウガラシのみじん切りを少々加え、一旦煮詰めてからレモン汁を入れた物。
3つ目は2つ目のレモン汁を入れる前の物を更に煮詰め濃くし、溶き片栗粉を少々入れてとろみをつけた物。
「ん~・・・」
「なるほど。」
「これはこれで美味しいですね。」
武雄が悩んでいる横で料理長と執事長が食べ比べをしていた。
武雄的にはショウガがなかった事で味に多様性がなかったと反省していた。
ちなみに未発見のショウガとカラシ、コショウだが・・・実は武雄はショウガを売っているのは見た事があるのだが、カラシについては原材料を見た事がなかったのでどんな物から出来ているのか想像がつかなかった。
また用意された香料や調味用に同様の味がなかった為、探している最中なのであった。
「キタミザト様、今日はこのドレッシングを出されるのですか?」
「ええ、これならジェシーさんにも食べて頂けると思うのですけどね。」
「私は問題ないかと。」
執事が頷く。
「私も平気だと思います。」
料理長も頷く。
「では、こちらでお願いします。
レシピはこちらです。
これの清書した物をください。
エルヴィス家でも作ってみます。」
「はい、後ほどお持ちします。」
執事が頷く。
「お願いします。
私は客間に戻ります。」
「はい、では同行をさせます。」
武雄の前を控えていたメイドが歩き武雄を先導していくのだった。
・・
・
「料理長、どうでしたか?」
「凄い物ですね、キタミザト様というのは本当に・・・ドレッシングに砂糖かぁ・・・思いつかなかったですね。
これは他にもいろいろと研鑽する必要があると思わされましたね。」
「それもですが、奥様には無事にお子を産んでいただき、健やかに過ごされないといけません。
もちろんお子様にもです。」
「食がその中で一番重要だという事もわかっていますよ。
奥様が苦手と感じた物は改善させます。」
「ええ、お願いしますね。
では、昼食の後にレシピを受け取りに来ます。」
「ええ、それまでには清書しておきます。」
ゴドウィン伯爵家の者達もジェシーの体を1番に考えているのだった。
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再びゴドウィン伯爵邸の客間。
「へぇ~・・・趣味ねぇ。」
「そうなんです。
タケオ様と話をしていて、私にこれといった趣味がないなぁと気が付かされたんです。
お姉様は何をされていますか?」
「私かぁ、コノハ殿やパナ殿の助言の通りにパンニューキスと一緒に散歩はしているけど、屋敷内ばかりだしね。
街中もあまり行けてないかなぁ。
今は読書かなぁ。」
「今は何を読んでいるのですか?」
「今?そうね・・・過去の政策関連の資料や報告書を読みながらタケオさんの動向を照らし合わせての領地発展のとりまとめかしら?」
「え・・・それってお姉様がする事ではないですよね?
てっきり育児本とか見ているかと思いました。」
「育児本読み飽きたのよね。
なので今は政策関連を見ているわ。
これに飽きたら育児本に戻るかもね。」
「はぁ・・・お姉様は勉強熱心ですね。」
「当然よ。領内を良くしたいでしょう?」
「それはそうですけど・・・ん~・・・私は何をしますかね。」
「いろいろするしかないんじゃない?
その中で合った物をしていけば良いのよ。」
「何から始めましょうか・・・」
アリスが悩むのだった。
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