第1387話 161日目 ちょっと他の様子を見てみよう。6(準備と試作。)
エルヴィス伯爵邸がある街の・・・試験小隊の訓練場。
「えーっと・・・明日の出立の準備は概ね終わりっと。」
アーリスが荷物をまとめながら言う。
「まぁ強行軍とは行かないが、領地の境までだからな。
それに足らなければ南町で買えるだろう。」
アンダーセンが皆の様子を見ながら言う。
「皆さんの馬の調達終わりました。
こちらが明日のアーリスさんの馬が居る厩の番号です。」
ミルコがやってくる。
「お、すまんな。
アンダーセン隊長、俺達個人の馬はあるのか?」
「・・・エルヴィス家に借りる事にした。
ヴィクター殿が向こうの文官や武官達と話をまとめてくれてな・・・ご厚意には甘える事にした。
当分は試験小隊専用の馬はないだろうというのがヴィクター殿と話しての結論だ。」
「はぁ・・・まぁ建物も建てるし、資金が不足気味なんだろうなぁ。」
アーリスがため息交じりに言う。
「安定するまではという事でしょうね。」
アーキンがやってくる。
「お、新人達はどうだ?」
アーリスとアンダーセンが顔を向ける。
「ん・・・」
アーキンが指さす先には。
「こら!ケード!入れ方の順番が違う!使う頻度が高い方が上でしょう!
コーエン!入れ方が雑!もっと小さくしなさい!」
「「すみません!」」
ブルックが鬼教官をしていた。
「・・・大変だな。」
「まぁ・・・ああなるわなぁ・・・」
「うちらが早すぎのような気もしますが。」
「遠出はいつもの事だしな。
慣れだ。ミルコは大丈夫か?」
「僕は干し肉を制限されました。」
「「ん?」」
アンダーセンとアーリスがミルコの言葉を聞いてアーキンを見る。
「ミルコとアニータは隙あらばリュックの中に干し肉を入れまして・・・それに持ち物は本当に最小限なんですよ。
言った物は入れていますけど・・・あの子達より知恵が回ると言うか・・・干し肉を入れる為に効率良く詰めていくんです。
その為には下着も小さく小さく畳んで隙間に・・・
まぁこの2人は保護した時の状況が状況ですから食べ物を多く入れたいという気持ちはわかるのですけど・・・」
アーキンが疲れた顔をさせる。
「ん~・・・まぁ規定の物が入っていれば良いんじゃないか?」
「そうだな。
その内慣れてきて干し肉を少なくするんじゃないか?」
「そうであれば良いのですけど・・・
と、あの子達以外は準備は出来ていそうですね。」
「ああ、問題ないだろう。
明日は朝一で馬を借りて出発だ。
オールストンとブレアが道順の確認に行っている。」
アンダーセンが言う。
「あの2人なら問題ないですね。
さて・・・明日は強行軍とは言いませんが、少し早くの移動でしたね。」
「ああ、アニータとミルコは王都に行く時に実施したんだったな。」
「はい、ちゃんと出来ていましたよ。
なので問題はあの子達ですね。」
「さーて、今の魔法師専門学院の卒業生がどういう感じなのかわかるな。」
「文句はトレーシーに言いますか。」
「文句ありきですか。」
試験小隊の面々が準備をしているのだった。
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テイラーの魔法具商店。
「で・・・出来ましたね。」
「へぇ~・・・なるほど。」
「うん、スズネ、これでOKよ。」
「これは作り方によっては売れそうだな。」
鈴音とテイラー、テトとニオがカウンターでアルコールランプ擬きの試作品を見ている。
「市販品のガラス瓶を少し改造しただけですが、良かったです。」
鈴音が満足そうな顔をさせる。
「試作としては良いが・・・スズネ、もう少しガラスの厚みを出せないか?」
「ん~・・・ガラスって用意された型に熱したガラスを入れて空気を吹き込んで膨らませて固めるんですよ。
なので・・あまり厚手を要望しても均一の精度は出ないんですよね。
やるにしても職人さんの手腕が必要で・・・単価が高くなります。商品化するなら単価は抑えたいですよね。」
「そうかぁ・・・だが、もう少し厚手のガラスにした方が良いな。」
「ん~・・・雑貨屋さんに行って問い合わせしてみます。
今の所はこれの感じで。
あと、フラスコのような熱する側を置く4点で自立した台の試作がこれですね。」
鈴音がカウンターに鉄棒で出来た正四角錐台の台を置く。
「ふむ・・・さすがに置く所は丸に出来なかったか。」
ニオが台を見ながら言う。
「試作ですし・・・
本当は私も丸でしてみようと思ったんですけど・・・諦めました。
これも量産化する時の検討事項ですね。」
鈴音が苦笑いをしている。
「そうか・・・これに乗せるとして・・・何を敷くんだ?」
「確かにガラスに直接火を当てるのは危ないという事で・・・こんなのを作ってみました。」
鈴音が正四角錐台の台の上に1枚の板状の物を置く。
「スズネさん、これは?」
テイラーが興味深そうに言う。
「えーっと・・・スライムの黒と白の液体を半々に混ぜた物を板状にして軽く火にかけ2枚の薄い板を作ります。
細い鉄線を軽く編んでさっきの2枚で挟んでから周りを囲って先ほどの液を入れて加熱します。
しばらくすると固まるので完成です。
試験用の耐熱材です。
一応試験ではアルコールランプの熱をしっかりと伝えることが確認出来ました。
直火より熱を伝えるのは劣りますが、これで行くしかないかと思うんですよね。
薄くするのはこれも量産化する時の検討事項です。」
「ふむ・・・なるほどな。
まぁ当分はタケオの研究所での使用だろう。
その間に一般用もしくは軍務用で商品の開発をすれば良いんじゃないか?」
ニオが頷く。
「はい、そのつもりです。
これが売れれば研究所の実入りにもなるかなぁと思っています。」
鈴音が頷くのだった。
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