第1383話 ちょっと他の様子を見てみよう。2(追跡。)
スミスの部屋。
「わかりました・・・場所は確認したんだね?」
「はい、スミス様。
ロロと磯風のスライムとの追跡では王城の近くとの事です。」
腰に小太刀を装備した旅装束でフードを被った姿のジーナがスミスの問いかけに頷く。
「ジーナ、大丈夫?
第1騎士団なら私の権限で出せるわよ?」
なぜかエイミーも来ていた。
「エイミー殿下、ここで騎士団はもったいないです。
例えば裏稼業の者が居て生徒が被害にあっている場合はお借りするかもしれませんが・・・今は様子見です。」
「うむ・・・様子見ならばいいだろう。
ジーナ、今の段階で一騎打ちをした場合、余程の相手でなければ遅れは取らないまでの仕上がりは出来ている。
だが、タケオの例もある。
どんなに能力的に優位でも負ける事もあると自覚しなくてはならない。」
マリが訓辞を言ってくる。
「はい、今回は様子見、出来るなら室内に入りますが、無理そうなら屋外からの監視のみで撤退します。
また、どんな相手であっても敵対するなら全力を尽くします。
見下したり格下だと侮り力を出し渋る事はしません、常にご主人様やビエラ殿を相手にしていると想定し決死の覚悟を常にしておきます。」
「うむ、撤退の時を見誤るな。
危険と思ったらすぐに戻ってきて、新たに作戦を考え後日に仕切り直せば良い事だ。」
マリが頷く。
「ジーナ、無理はダメですからね。
こんな事でジーナに何かあれば、タケオ様に申し訳ないし、皆が心配しますからね?」
「スミス様、ありがとうございます。
無理はしません。
では、行ってきます。」
「「気を付けて。」」
スミスとエイミーが送り出すのだった。
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ラックのお店。
「ん?・・・んー??」
フォレットが壁の隅が気になったのか凝視している。
「フォレット、どうしたの?」
他の着飾った女性隊員が聞いてくる。
「いや・・・今あそこの穴からネズミが顔を出してた。」
「げっ!とうとうここもネズミに知られたかぁ~・・・
ネズミ捕りあったっけ?」
「裏の倉庫だったと思うだけど・・・んー・・・」
フォレットが目線を外さずに会話をしている。
「どうした?」
「なんとなくネズミと目が合った気がする。」
「そりゃ生き物だしね。
目も合うわよ。」
「いや、そうじゃなくて・・・ん~・・・
とりあえず空いている木箱を置いて蓋をしますか。」
「じゃあフォレットしておいて、私は倉庫からネズミ捕り探してくる。」
女性隊員が奥に向かう。
「はーい。
・・・んー・・・普通のネズミじゃない気がするんだけどなぁ・・・」
フォレットが木箱を探しに行くのだった。
ラック、コートニー、ルークが店の休憩室(店の厨房)で話をしていた。
「父さん、王立学院では以上よ。」
「そうかぁ、何も無いようだな。
まぁ早々揉め事が起こられても困るがな。
で、ルーク君、どうだ?魔法を習い始めたそうだが。」
「魔法師専門学院に入らなくて良かったと思っています。」
「ははは、正直だな。
だが、安心しろあそこより厳しいからな!
他の隊員が楽しそ・・・やりがいがあると報告していたぞ。
まぁ王都守備隊に習いたくても習えないものだ、貴重な経験を積んでいると思ってくれ。」
ラックが良い笑顔をルークに向ける。
「ありがたい事です。」
ルークが苦笑する。
「王都守備隊の隊員達は皆新人教育の教官の経験があるやつばかりだ、あの連中なら割と早く習得出来るだろう。
少~し厳しいがな。」
「よろしくお願いします。」
ルークが頭を下げる。
「うん、それと・・・ルーク君、コートニーは王立学院で上手くやっているか?」
「ちょっと!なに聞いているのよ!」
「父親としてはその辺も聞きたいんだ!
今まであまり手がかからなかったのだが・・・ここに来て挫折しているんじゃないかと不安でな。」
「父さんじゃあるまいし。」
「娘の評価が低い気もするが・・・まぁ良い。
で、ルーク君、どうだ?
君に聞くのも何だがコートニーに男は出来、ぐふっ・・・」
コートニーがラックの脇腹を殴っていた。
「ルーク!答えなくて良いわよ!」
「・・・えーっと・・・ラックさん、特にコートニーに男の影は見えません。
同級生の女子達と楽しそうに過ごしています。」
「そ・・・そうか・・・ルーク君ありがとう。」
ラックがわき腹を押さえながら答える。
「それにしても良くこんな夜に出てこれたな。
王立学院の宿舎は門限はあるのだろう?」
「あ、その辺はコートニーが。」
「教師に言って許可は取ってるわよ。
父さんに呼び出されたと言えば話が通るようになっているし。
ルークと一緒なら許可は下りやすいわ。」
「ふむ・・・まぁどちらにしてもあまり長居はさせられないだろう。
もう帰りなさい。」
「わかったわ。
ルーク帰りましょう。」
「ああ、ではまた来ます。」
「おう気晴らしに来いよ。」
コートニーとルークが裏口から帰っていくのだった。
「子の成長は早いというが・・・いやはや、楽しそうな学院生活を送って貰いたいものだな。
・・・ん?何しているんだ?」
「あ、隊長、ネズミ捕りを取ってきましたので餌を物色に来ました。」
入れ替わりで厨房に入ってきた女性隊員が言う。
「ネズミ捕り?・・・出たのか。
つまみ類なら小棚の中だぞ。」
「はーい、わかりました。
あ、それと酒の追加を要請されていましたよ。」
「おっと・・・俺も仕事をするか。」
ラックが立ち上がり厨房を後にしカウンターに向かうのだった。
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