第1381話 さて子供達の話をしよう。6(結論は明日に日延べです。)
結局今日のうちでは答えが出せないだろうとお開きになり、明日の昼過ぎにもう一度話し合う事に決まった。
子供達は寝室に行き、皆で車座に座りながら話し合いをしていた。
「ん~・・・待遇というか給金を見れば伯爵様の方が魅力的なんだろうね。」
「でも・・・キタミザト様の執事だけでなく農家や物の売買も出来るというのも楽しそうだよね。」
「いろいろやってみたいけど・・・メイドだけをするのも良いかもしれないよね。
給金が良いなら少しずつ貯めて欲しい物買えそうだし。」
「キタミザト様の所に行こうかなぁ、国の中で2か所でしか食べられない物が出されるのなら食べてみたいよね。」
「あ~そこは気になるけど・・・美味しいとは限らないよ?」
「キタミザト様の昼食美味しかったし・・・あの場で言ってくるなら美味しい物があるんじゃないのかなぁ?」
「そこはわからないよね。
あ、今は食べ物の話より仕事の話だよ。
でも伯爵様の方は執事とメイドをして生まれてくる子供のお付きになる事を望んでいるんだよね?
これって私達の仕事の目的も既にわかっているからやりやすいんじゃないのかな?」
「逆に子供に愛想が付かされたら終わりとも取れるよ?」
「そこは小さいうちから一緒に居て気心知れていれば良いんじゃないの?」
「そっちはどうなるかわからないよね。」
「それに私達以外にも候補がいるんでしょう?」
「みたいだよね。
競い合いなんだね。」
「競い合いをするくらいならキタミザト様の下でやっていく方が楽なんじゃないの?」
「楽かどうかはわからないけどね。」
子供達は眠さに耐えながらお互いに話をしていくのだった。
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ゴドウィン伯爵夫婦の部屋。
「あれで良かったのかしら?」
「なんとも言えないな。
我が家から提示できるものはしたと思うが・・・
タケオが割りと静かだったな。」
「そうねぇ・・・タケオさんも随分と気を使っていたのはわかるからなぁ。
私達にも子供達にも説明できるのはあの程度なんでしょうね。
それにしてもあの説明を初めからしているのでしょうね・・・タケオさんは流石としか言えないわね。」
「ん?んん~・・・」
ジェシーの言葉にゴドウィン伯爵が武雄の言動を思い出している。
「・・・わからん。
俺らもタケオも普通に雇用条件を話しただけだと思うが。」
ゴドウィン伯爵が首を傾げる。
「そこがもう凄いのよ。
タケオさんは種族毎の特性は何一つとして説明をしなかった。
子供達には能力を伸ばす場を用意はするがあとは己で磨けとしか言わない・・・これって凄い説明よね。
・・・あの子達は異種族、私達は雇用もした事ないから皆で議論をして話す内容は決めたのにタケオさんは素であの説明が出来てしまうのよ。
タケオさんはそもそも異種族と人間種という括りを持っていないのは知っていたけど、今の私達ではどうやってもあの感覚は得られないというのが今日わかったわ。」
「ふむ・・・タケオの出自に関係しているのだろうけどな。
確かに種族関係なくを本当に出来ているのはタケオだけだろう。
口では俺らも種族関係なくとは言っていたが・・・この提案を決めるのに端々に異種族を意識しているのがわかってしまったからな。」
「それも無意識にね・・・異種族雇用の本質的な問題点は私達の無意識下の差別よ・・・
多分私達の世代ではこれはなくならない。
次の時代、もしかしたらあと2代はかかるかもしれないわね。」
「やはり生まれたと同時に異種族が近くにいる事は重要だな。」
「そうね。
私達はそう結論を出した。
この地をゴドウィン家が治め続けるには何としても異種族に偏見が少ない子に育てていかないといけないわ。
そういえば募集してきている人達の人選は大丈夫と聞いているのだけど?」
「俺もまだ絞り込まれたのは見ていないが・・・一度念押しをしておこうと思う。」
「ええ、お願い。
・・・さて・・・あの子達がこちらに雇用する人選を任せてきたら誰を雇う?」
「ふむ・・・そうだなぁ・・・」
ゴドウィン伯爵が子供達の名前が書いてある紙を机に並べる。
「せーのっ!」
ジェシーとゴドウィン伯爵が同時に子供の名前を指さす。
「「同じ?」」
2人して紙を見ながら言う。
「ジェシーも良いと思ったんだな?」
「ええ、さっきの私達が話をしていた際に見ていたけど・・・この子が1番ね。
この子はたぶん大物になる予感がするわ。
私の子の専任になれなくても私の片腕にしようかしら。」
「そこまでの逸材だと思ったのか?」
「ええ、じゃあ、あと1名を決めましょうか。」
ジェシーとゴドウィン伯爵が子供達の事を話し合うのだった。
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武雄とアリスの部屋。
「タケオ様、あの説明で良かったのですか?」
「給金が低いのは事実でしょう?」
「そこは・・・そうですが・・・
いや、内容の説明です。
タケオ様的にキタミザト家に来て欲しい子が居るのだと思ったのですが・・・終始、条件のみの説明をしていたのでちょっと気になりました。」
「ふぅ・・・手元に置きたい子供は居るにはいますけどね。
ですが、今回はこちらから指名はしたくなかった、というより今の段階で指名をしてはいけません。
アリス、なぜだかわかりますか?」
「子供達に自分の能力を上げる場を用意すると言ったからですか?」
「ええ、私は種族に関係なくあの子達を引き取りました。
引き取った後にこの子とこの子はうちで預かりますと言ってしまうとその時点で選ばれた子と選ばれなかった子に分かれてしまいます。
これは情操教育上良くないと思っています。
私が意図しなくてもそのような優劣を言ってしまうと今後面倒な事になるでしょうからね。
当分の間は同じ仕事で同じ成果で差は付けずに褒めてあげるように努力しないといけません。
アリスも種族等々は気にしないでしっかりと出来たら褒めてあげてください。」
「はい、わかりました。」
アリスが頷くのだった。
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