第1377話 さて子供達の話をしよう。2(どんな選択をしても批判は出るもの。)
「さて、子供達の処遇をどうするかで皆で話し合ったのだが、取れる選択肢はそう多くない。
子供達を全員ゴドウィン伯爵家で引き取る、またはタケオにすべてを任す。
他には全員を奴隷から解放し、魔王国に引き渡すという案もあったにはあったのだが・・・ちょっと政治がらみでな。
これはどれも相当叩かれる要因になるので却下した。」
「そうでしょうね。
ですが、どの選択肢でも攻撃の材料にはなってしまうかと思います。」
武雄が頷く。
「そうだな・・・動かなければ動かない理由を問われ、動いたら動いた理由を問われる・・・面倒な事だ。」
「そうですね。」
「そんな状況の中で比較的批判が薄そうなのは、数名をこちらで預り、キタミザト家が実施する同水準までの執事やメイドの教育をこちらでも行う事と結論付けた。
もちろん雇用条件も同水準とする。」
「それにこの選択肢は私達に取って丁度良いのよ。」
ゴドウィン伯爵とジェシーが話す。
「お姉様、丁度良いのですか?」
アリスが聞き返す。
「ええ、今月末に応募を締め切る予定だったんだけどね。
この子専任の執事とメイドを育成しようと考えているの。」
ジェシーがお腹を触りながら言う。
「専任ですか?」
「うん、今回、スミスのお付きとしてジーナちゃんを付けたでしょう?
異種族というのもあるけど、異性でも可能という前例を作ってくれたわ。
これはお付きを選べる幅が出来たと考えるべきなのよ。
執事やメイドとしての仕事が出来る事は当然として、それ以外に何が出来るのか・・・性別に関係なくまずは純粋に能力を見て選考が出来るのは選ぶ方としてはありがたいわ。
出来ればあのくらい要領良く物を覚えてくれると助かるけど・・・ああいった人材は滅多にいないからなぁ。」
「ジーナちゃんは今ではメイドだけじゃなく文官、武官問わず、どの仕事も出来ちゃいますからね。
学院で生活していたら皆が驚くでしょうね。」
ジェシーの言葉にアリスが頷く。
「ジーナは元々の下地もあり要領良く覚えているようにも見えますが、実際は異種族にもしっかりと頭を下げ、先輩達の助言を素直に聞き、教わったら出来るように何度もその場で繰り返し、部屋に戻ってからも復習をし、ミスがないように実行する前に確認を怠らなかった。
ジーナが完璧に見えるのは確実性を増す為の努力を怠らないからです。
上司として優秀な部下を持ったのは嬉しいのですが・・・もう少しのんびりしても良いとも思うのですけどね。」
武雄が苦笑する。
「そうね。
本来ならもっと遊びたいだろうにね・・・まぁタケオさん達はジーナちゃんを遊ばせるだけの余裕はないか。」
ジェシーが聞いてくる。
「うちにもっと財源があれば・・・とは思った事はありますけど、実際は今の状況だからこそ、あれだけの人員が揃っていると思う事にしています。」
アリスが半ば呆れながら言う。
「エルヴィス家は文官も武官も領民も優秀ですよ。
まったく上から下まであれだけ優秀なんですから、あそこまで忙しなく働かなくても良いと思うのですけどね。
もう少しのんびりと過ごした方が良いと思うんですけどね。」
「タケオさんがそれを言うの?」
「タケオ様も原因の一因ですよ?」
武雄の呟きにジェシーとアリスがツッコむ。
「え?」
「「え?」」
3人とも顔を見合わせる。
「はぁ・・・話が逸れているぞ?
でだ、今回のジーナの能力の高さは人間種ではない事が一因だと思っている。
ちなみにタケオ、ジーナの年齢はいくつだ?」
ゴドウィン伯爵が聞いてくる。
「確か・・・42、3歳でしたか。
人間で換算すると獣人は人間種の2.5から3倍の寿命なので大体人間種で14、5歳程度の姿ですね。」
「なるほどな・・・
長い年月を生きていると考えがある程度しっかりとしてくる物だと思っている。」
「はい、そこは私も同じ考えです。
私達基準での見た目の年齢よりも長い時間生きているので、自分の考えもしっかりと持ち、仕事を覚えるのに自分なりのやり方で臨めたり、こちらの意図を理解する事が出来ると考えています。」
「うん、そしてだからこその我が子の専任の執事として採用をしてみたいと考えている。」
ゴドウィン伯爵が頷く。
「・・・伯爵家の文官や執事は何も言わなかったのですか?」
武雄が聞き返す。
「当然、言われたわよ。
フレッドの説明を聞いた文官達も、例えば人間種で10歳と、見た目が同じくらいの変身できる獣人で25歳を同時に雇用した場合『人間種よりも長く生きてきた経験から、獣人の方が実際の仕事を覚える速さやミスの少なさで優秀な職員になるだろう』というのは納得してくれたのよ。
そして、雇用という形で数名を引き取る事は文官内でも武官内でも問題ないようにしてくれる、という話にはなってね。
ただ、ならば他部署・・・はっきり言えば、兵士として雇用をして様子を見てからでも良いのでは?
という意見もあったのだけど、この子達を兵役にはね・・・」
ジェシーがそう言いながら子供達を見る。
「・・・文官や武官の言っている意味はわかります。
伯爵家の次期当主にいきなり今までと違って、異種族を付けるというのは不安でしょう。」
「そうね。
私もフレッドも皆の心配はわかるわ。
でも私はこの子達なら我が子の近くに置けると考えているわ。」
ジェシーが言う。
「・・・奴隷の首輪ですか?」
「ええ、こう言ってしまうと身も蓋もないですけどね。
奴隷の首輪がある以上、雇用契約を満了するまで我が子へ危害を加える事はないと思っているわ。」
「ん~・・・」
ジェシーの言葉を聞き武雄が考える。
「もちろん、奴隷の首輪のあるなしで待遇を変えたりはしないので、真面目に仕事をして貰いたいわ。
それに、そんな物に頼らなくても真面目に仕事が出来るように環境は整備するつもりよ。
ただ、奴隷の首輪があると安心感はあるのは確かなのよ。」
ジェシーが言う。
「・・・ジェシーさんの事です。
それだけでリスクを取らないですよね?」
武雄が言うのだった。
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