第1374話 協力者達はというと。2(王城内で何かをしている?。)
「おや?皆さんお揃いで。」
「今日も居ましたね。」
サテラ製作所のキャロルとローチ工房のローチが入って来てベッドフォードたちの方にやってくる。
「おう!先にしているぞ。
こっちだこっち。」
ベッドフォードが机を付け始める。
「はは。ベッドフォードさんには敵いませんね。」
「このやり取りも慣れましたね。」
キャロルとローチが席に座る。
「で・・・ローさんはどうしたのですか?」
キャロルがぶつぶつ独り言を言っている老人に目をやり言い放つ。
「あぁ、キタミザト様関係でな。
ちょっとローの爺さんの予定が狂ったそうなんだ。
だから頭の中で確認中というわけさ。」
ベッドフォードが言い放つ。
「そうですか・・・ローさん、考えすぎると体に毒ですよ?
ほら、飲んで。」
キャロルがローの前にあった酒を勧める。
「ん!?キャロルか。
そうか・・・んん~・・・これは明日また考えるか・・・
よしっ!うぐっうぐっうぐっ・・・」
「ちょっとローさん、一気に飲むのは体に悪いわよ?」
「飲まずにいられるか!
数年を見通した流通計画が最初からやり直し!・・・キタミザト様め帰ってきたら説教しますからね!」
ローが酒を呷り始める。
「・・・ローさん、その言葉をキタミザト様の前で言えたら良いですね。」
ラルフは我関せずにそう一言呟きながら飲んでいる。
「言えないだろうねぇ。」
「言いたい気持ちはわかるがなぁ。」
モニカもベッドフォードもちびちびと飲む。
「・・・で、テイラーとスズネさんは今日は来ていないのですね?」
キャロルが一応店内を見回してから聞いてくる。
「今日は来てないですね。
もう今日は来ないでしょうね。」
ラルフが言う。
「そうかぁ・・・」
「キャロルさん、どうしたんですか?」
モニカが聞いてくる。
「いや、例の幌馬車の改造なんだがな。
思いのほか良い結果が出ているんだ。
なので、テイラーとスズネにその辺の感想を言おうと思ったんだが・・・」
「日中にしてあげればいいのに。」
「・・・素面だと言い辛いだろう?」
キャロルがいつの間にか出された酒を飲みながら言う。
「それはキャロルさんがあの2人に地を出さないからですよ。
あの2人が居ると全然お酒飲まないんですから・・・初めて見た時は何か病になったのかと思いましたよ。」
モニカが言ってくる。
「・・・俺にも面子というものがあってだな。」
「まぁ日中は真面目で厳格な工房主で通っていますしね。」
言い淀むキャロルをモニカがため息交じりに頷く。
「で、あの2人は進展があったか?」
「何も。
だけどあの2人結構一緒にいるしね・・・そのうちじゃないかしら。」
「ん?とうとうテイラーがスズネに手を出すのか?」
ベッドフォードが楽しそうに聞く。
「スズネちゃん、設計とか物作りは出来るけど・・・家事・・・特に料理は全然らしいわね。
大丈夫かなぁ。」
「本人が言っていましたね。
笑っていましたけど。」
「ほほほ、女は家事が出来て当たり前という時代は過ぎ去るのでしょうね。」
「まぁ今は家で作らないと夕食が手に入らないという訳ではないしね。
買えば揃えられるとわかっているなら2人で働きながら買って食べれば良いわけだよね。
あとは掃除と洗濯が出来れば良いし・・・どちらも重労働ね。」
皆が思い思いに話している。
「男性が料理を・・・ふむ。」
ラルフが少し考えている。
「ほほほ、ラルフ、どうしましたかな?」
ローが聞いてくる。
「いえ、ウスターソースのように味付けに時間を割かなくても良い商品が出来てきたという事は、それに合わせて料理が出来てくる事が予想出来ます。
もしかしたら店先で品物を買って家で盛り付けし、ソースをかけるだけの料理が主流を占める日が来るかもしれません。
どちらにしてもこの流れは料理の時間の短縮に一役買うでしょう。
そして男性が料理をする時間が増えるとなると女性は余暇を何に使うのでしょうね?」
「「「・・・寝る?」」」
ベッドフォードやモニカ、ローチが声を揃えて答える。
「皆さん、大変なんですね。」
ラルフがしみじみと言うのだった。
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王城の第3皇子一家の執務室。
夕食を終えて寝室に戻る前に3人でのんびりとする時間のはずなのだが・・・
「ウィリアム!これはどういう事かな?」
「え!?知らないよ・・・精力剤?何これ??」
レイラがウィリアムの前に手紙を置き問答を始めていた。
「えーっと・・なになに?・・・なるほど・・・私も聞きたいわ。」
アルマが横からレイラが置いた手紙を取り内容を読むと元の位置に戻してウィリアムに聞く。
「・・・何もしてないし、依頼もしていないって!
僕じゃないから!本当!信じて!」
「レイラ、何を興奮しているのですか?」
パイディアーが聞いてくる。
「タケオさんからの報告が来たの!
私達が実家に遊びに行った時にウィリアムが買って帰った精力剤が王都の総監局から依頼があって送付したそうよ。
タケオさんから『誰からの注文?』と問い合わせよ。
ここ数日ウィリアムを見ていたけどこの部屋にも寝室にもなさそうなのよ・・・ウィリアム!誰に手を出したの!?
正直に言いなさい!」
「出してない!出してない!」
「ウィリアム・・・ちゃんと答えなさい、今なら怒らないから・・・ね?」
アルマもウィリアムに聞いてくる。
「してないから!
本当だよ!」
「「・・・」」
アルマとレイラが物凄く冷たい目線をウィリアムに送る。
「いや・・・本当に手を出していないから・・・」
ウィリアムは室内が寒いのか少し震えながら言ってくる。
「ふむ・・・この感じは嘘は言っていないかな・・・
レイラ、ウィリアムは経過観察として様子を見ましょう。
その後で対応しても遅くはないわよ。」
「アルマお姉様がそう言うなら・・・ウィリアムの言葉を信じるならこれは他の誰かが依頼したとなりますよね。
・・・なら、お義父さま?」
レイラが手紙を見ながら言う。
「それはないんじゃない?
お義父さまならタケオさんに直接言ったり、直属を動か・・・ん?ウィリアムも私達に内緒にしたいならタケオさんか兵士を使えば良いのであって・・・特に何も言わずにタケオさんに見つかればこうなる事は事前にわかるわけでエルヴィス領から取り寄せる必要はあまりないし・・・総監局か・・・
ウィリアム、その精力剤はエルヴィス領から持ってきたのよね?」
アルマがウィリアムに聞く。
「え?そうだよ。」
「王城に着いた時はどうしたの?」
「戻った時に執事達に見つかって説明したんだけど・・・
それ以後は注文はしていません!」
「「経過観察。」」
アルマとレイラが即答する。
「はい・・・でもそこからエルヴィス領に精力剤があるというのはわかっていると思うよ?」
「残るはパットだけど・・・第1皇子一家が居ない状況下で動かないとは思うんだよね。」
「確かに。
それに王城内ならわざわざ地方の物を使うより精力キノコを使った方が良いわよ。」
「これはちょっと聞き取りが必要かもしれませんね。」
「そうね。」
レイラとアルマが手紙を見ながら考えるのだった。
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