第1366話 ゴドウィン伯爵達と院長との会談。(魔王国に入国したものの。)
ゴドウィン伯爵達は孤児院の院長との会談をしていた。
「以上の事がありました・・・
伯爵様、奴隷を匿ったのは私の一存です、孤児院は関係ありません。
私の身はどうなっても構いません。
何卒、孤児院にはお咎めなく、何卒・・・」
孤児院の院長が今日までの経緯を話し、椅子から下りて、伏してお願いしている。
ゴドウィン伯爵が腕を組んで考えながら院長の話を聞いている。
他の者達も微妙な顔をさせながら聞いていた。
「・・・院長。」
「は・・・はいっ・・・」
ゴドウィン伯爵が言葉を発すると院長が床に頭が付きそうになるくらい頭を下げながら返事をする。
「・・・その者の名はドウと言ったのだな?」
「はい!旅人のドウと言いました!
ですが、最初に匿ったのは私の一存です!その後助けて頂きました!
旅人の方も何も悪くありません!何卒追跡等はなさらないでください!
お願いします!」
「・・・ちなみになのだが、ドウの同行者にパナ、マイヤー、ベイノン、初雪という者が居ただろう?」
「え!?・・・いえ!居りませんでした!」
院長が一瞬驚いて顔を上げてしまうがすぐに伏せる。
その仕草で誰が対処したかその場の全員がわかってしまう。
「はぁ・・・とりあえず、その体勢は辛いだろう。
席に着きなさい。」
「しかし!」
「いいから・・・院長、席に着きなさい。」
「は・・・はい・・・」
ゴドウィン伯爵に言われゆっくりと院長が席に座る。
「さて・・・異常事態が発生した場合、領民はすぐに庁舎等に報告する義務があるという指導がなされているはずだな?」
ゴドウィン伯爵が文官に聞く。
「その通りでございます。」
「・・・そうか。
すぐにというのは最大何日だ?」
「ご自身の治療等があるかもしれませんから・・・報告だけなら2日あれば・・・」
「今回の院長のした事は報告義務違反だな?」
「そうなります。
罰則としては禁固刑か罰金刑になります。」
「院長から孤児院を奪うつもりもない、罰金刑としての対応をするか。」
「なら・・・罰金刑なら確か最大金貨20枚だったかと。」
「そうか。
院長、略式であるが裁決を言い渡す。
報告義務違反として有罪、罰金金貨20枚とする。
なお、当該の旅人と奴隷の子供達は旅立っている為、追跡は不可能と判断する。
以後、奴隷商が居た場合は報告を怠らぬようにする事。
以上をこの場の決定とする。」
「はい!」
院長が頭を下げる。
「それと・・・これは私個人としての行動だがな。
院長、異種族とはいえ子供を思うその心、そして奴隷商とわかっていても人の命を生かすのだという意思と対応、見事だ。
報奨として金貨30枚を贈呈する!」
「え!?」
ゴドウィン伯爵の言葉に院長が顔を上げる。
「院長、そなたのような領民を持てて俺は嬉しいぞ。
その心意気を失わずに孤児院の経営をしてほしい。
だが、報告はしてくれ、そうすればまた違った対応が出来ただろう。
それと今回の報奨だが、外に伝わると異種族の奴隷を匿うと報奨金が貰えるのだという間違った印象を与えかねない。
なので、他言は無用だし、以後の同様な報奨もない。
わかったな?」
「はい!寛大なご処置に感謝いたします!」
院長が深々と頭を下げる。
「よし・・・誰か俺の小遣い入れを持って来てくれ。
それと帰りに庁舎によって処理して貰えるように付き添いをしろ。」
「はい・・・お前、院長に付き添いなさい。」
皆が動くのだった。
・・
・
院長を送り出した室内では。
外にいた兵士達も室内に戻ってきてお茶をしていた。
「で・・・伯爵様、キタミザト子爵が関わったのですね。」
「そうだな。
タケオは今日、屋敷に到着の予定だったな・・・子供達が居るとなると幌馬車にした可能性が高いが、それでも今日の朝出たとして夜には着くか。」
「対応は平気でしょうか。」
「ジェシーの事だ、最低限の歓迎の用意はしてくれるだろう。
だが、俺も早々に帰宅するとするか。
多分揉めはしないだろうが、色々と決済しなくていはいけない事があるだろうしな。」
「わかりました。
町長への会談終了後出立をしましょう。
皆、これから屋敷まで強行軍に変更、馬、持ち物等の最終確認を実施しなさい。
それと早馬で屋敷に連絡を。」
「「はっ!」」
皆がドタバタと動き始める。
「さてと、俺は町長と会談してくるか。」
「はい、付き添いは最低限とします。」
「あぁわかった、なるべく早く切り上げるようにしよう。」
ゴドウィン伯爵が頷くのだった。
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パーニ伯爵領のアズパール王国側の関にて。
「はぁ・・・やっと入国審査が終わったかぁ・・・
体も見られたけど、まぁ・・・しょうがないか・・・荷台すら持っていない輸送業の越境許可なんて信用が低いだろうし。」
イグノトが愚痴りながら馬が置いてある場所に行く。
「よし!馬の調達成功!」
「うわ・・・関の常備されている馬を値切り倒したよ・・・」
「まったくだね・・・
馬なんてなくたって歩いてブリアーニ王国に向かえるじゃん。」
「早い方が良いに決まっている。」
交渉した男が堂々と言い放つ。
「いやいやいや、俺ら冒険者、馬よりも歩いて依頼を熟しながら向かうのが普通だろう?」
「一刻も早くエルフに会いたい!
これで持ち金の半分はなくなったがな!」
「「ふざけんな!お前!」」
3人組の冒険者がワイワイと言い争っている。
イグノトは「ブリアーニ王国かぁ、護衛が欲しいな」と思いその3人組に声をかけるのだった。
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