第1364話 武雄達は移動中。(ジェシー始動。)
武雄隊は順調にゴドウィン伯爵邸に向けて移動している。
荷台では。
「キタミザト様は・・・貴族様?」
「ええ、そうですよ。
成ったばかりですけどね。」
「でも、お金ない?」
「・・・ええ、ちょっと足りません。」
「でも服買ってくれた?」
「必要経費ですからね。」
「食料も買った。」
「そこはあまり切り詰めたくないです。」
「6人も雇って平気?」
「ん~・・・何とかします。」
「俺達は余計?」
「余計ではないですよ。
君達のような将来有望な子供達を雇えるのは良い事です。
ですが、少し早かったかなと思っています。」
「私達はどうすれば良いのですか?」
「君達はまだお金を稼ぐ能力や知識を持っていません。
まずは仕事をしながら能力を鍛え、そして本を読んだり先輩に話を聞いて知識を学ばないといけません。
なので真面目に学んでくれるだけで良いですよ。」
「それだけですか?」
「ええ、君達はこれから多くを学びます。
どんなふうになるのか楽しみですね。
私はその成長過程を見て楽しむだけです。」
「でもお金ない?」
「資金繰りがねぇ~・・・」
武雄は自分の事を話して子供達から質問攻めを食らっていた。
子供達からすれば正直に何でも言う武雄に若干の信頼をし始めているようで最初よりかは皆打ち解けてきている。
ちなみに毛布は4枚重ねを2組作り、その上にシーツを敷いて割りと柔らかな床を作り、子供達と武雄は土足禁止で座りながら話をしている。
「これから行く所はどんな所ですか?」
「私の妻の姉が嫁いだ家ですよ。
早く言えば私の親戚の屋敷です。
妻の姉が子供を身籠りましてね。
初出産に向けて今大忙しなんです。
そんな中今日と明日泊めて貰いますからあまり迷惑をかけてはいけませんよ?」
「「はーい。」」
皆が返事をする。
「あの、キタミザト様の奥様はどんな方なのですか?」
「知的で可愛らしい人ですよ、怒るととっても怖いですけどね。」
「怖いのですか?」
「はい、怖いです。」
武雄がキッパリと言う。
「怒られないようにします・・・」
「怒られるからと消極的に仕事をしてはいけませんよ。
何事も挑戦しない事には成長はありませんからね。
それに仕事とか真面目にした事による失敗は怒るではなく、次に繋げる為の指導ですからね、しっかりと聞きなさい。
・・・一番怒るのは悪戯をされた時でしょう。
悪戯をするなら決死の覚悟で臨みなさい。」
「「・・・は・・・はい。」」
子供達は武雄の冷静な言葉に本気度が高いのだと思うのだった。
「キタミザト様、お仕事についてなんですけど。」
「はいはい、なんですか?」
武雄と子供達はのんびりと話をしていくのだった。
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ゴドウィン伯爵邸の客間にて。
「・・・ん~・・・」
「・・・」
アリスとジェシーが初雪からもたらされた情報を吟味していた。
アリスの考えを聞いた紫雲はエルヴィス邸に向かった。
「アリス、ジェシー、どうするっスか?」
時雨が紫雲に代わりアリスの下に来ていた。
正確には彩雲がエルヴィス邸に戻り、夕霧に報告した所、夕霧が時雨にゴドウィン領に行って調査の下地作りをするようにと依頼してスライム専用通路を通って今朝到着していた。
ちなみに・・・元々スライム専用通路はエルヴィス伯爵領とゴドウィン伯爵領の境にまで到達していて、アリス達がゴドウィン伯爵邸に向かうと知るとエルヴィス爺さん許可の下、夕霧達が一気にゴドウィン伯爵邸まで作ったそうだ。
で、一応到着したもののいきなり敷地内には入ってはいけないとエルヴィス爺さんに言われた時雨がゴドウィン伯爵邸の近くの林で紫雲に連絡を取り、連絡を受け洋服を持ったアリスと合流してゴドウィン伯爵邸に招かれていた。
「・・・はぁ・・・アリス、これは由々しき事態ね。」
「・・・子供が6人ですか・・・
時雨ちゃん、確認しますけどタケオ様は雇うと言っていたのですよね?」
アリスが時雨に聞く。
「ハツユキの感じだとタケオは15年の雇用で執事、メイド、事務員をさせると言ったみたいっス。
シウンも言っていたけど全部人間種ではないような感じっスね。」
「タケオ様がそう仰るならキタミザト家はその通りに行動します。
まぁもう何回目かなので雇用の実績十分と言った感じですね。
この国で異種族雇用に関してタケオ様以上に即決出来る者はいなさそうですし。」
アリスが時雨の言葉に頷く。
「はぁ・・・タケオさんの部下・・・異種族ばかりね。」
「ミアちゃんにヴィクターにジーナちゃん、夕霧ちゃん達とベルテ一家、ニルデにジルダ、アスセナ、アニータにミルコ・・・そしてビエラちゃんにクゥちゃん。
人間種は研究所関係の試験小隊の面々とトレーシーさんとスズネさんのみ。
キタミザト家としては部下は全員異種族ですね。」
アリスが考えながら言う。
「・・・うん、そうね。
異種族雇用かぁ・・・アリス、今回の事はゴドウィン伯爵家の領内の事よね?」
「そうですね。
今回はたまたまタケオ様が現場に居たからの対応だったと思います。
通常は奴隷の輸送を発見したら魔王国側に送り返していると聞いています。」
「そうね、それが通常ね・・・ん~・・・」
ジェシーが悩んでいる。
「お姉様、とりあえず受け入れの準備をした方がよろしいのではないですか?
今日の夜には着いてしまいますし。」
アリスが先延ばし案を出してくる。
「そうね・・・それとちょっと私は緊急会議をしてくるわ。
アリスはどうする?」
「他家の事に首を突っ込むのは得策ではありませんので、夕食までうたた寝しています。」
「そう、悪いわね。
そうしてくれると助かるわ。
あと何か要望はある?」
「時雨ちゃんもいますし、初雪ちゃんも戻ってくる。
あと彩雲が来るかもしれないので、残飯の樽3つ用意してください。」
「わかった。
さてと・・・」
ジェシーがベルを鳴らすと執事とメイドがやってくる。
「アリスと時雨ちゃんを寝室に。」
「畏まりました。
アリス様、時雨様、こちらに。」
「はい。
お姉様、後ほど。」
「タケオさんを迎える前に起こすからね。」
「はい。時雨ちゃん、行きましょう。」
アリスと時雨が客間を退出していく。
・・
・
「これより緊急会議をします。
執事、メイド、総監局、総務局、財政局、兵士長、騎士団の主だった者を招集しなさい。」
残った執事長にジェシーが言い渡す。
「畏まりました。
どのような議題を?」
「議題は『キタミザト子爵が救出した異種族奴隷の子供の扱いについて』です。
あと孤児院の担当者も来るように。」
「・・・重大事項ですね。」
「まったくよ・・・でも、これを生かさないといけないわよ。
最終判断はフレッドにさせますけど、戻るまでに関係部署での大まかな意思の統一を行います。
そして今日の夜から明後日の出立までタケオさんもアリスも子供達ものんびりと過ごして貰わなくてはなりません。
その手はずもお願いね。」
「はい、奥様。
すぐに準備にかかります。」
執事長が足早に退出していく。
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