第1360話 昼過ぎのとある東町にて。10(夕食と臨時報奨金)
ビエラを連れて武雄は戻ってから皆で夕食を取っていた。
6人の子供達はガツガツと平らげている。
「・・・余程お腹が空いていたのでしょうね。」
マイヤーが神妙な顔つきで子供達を見ている。
「仕方ないですよね・・・」
ベイノンも子供達を見ている。
子供達は大人しく従っている。
まぁ子供達はビエラを見た瞬間、愕然としたり、泣きそうな子が居たのだが、ビエラがニコッと笑って何か言ったら皆が泣き止みキビキビと動き出した。
ビエラに聞いたら「ちょっと言い含めただけ」とか言っていたが、武雄達は何も感じなかったので「まぁ失禁させない程度でね」と苦言を言って終わった。
「ビエラ・・・どうですか?」
「・・・タケオの方が上。かなり上!」
ビエラが真剣な顔をさせて言ってくる。
「うん・・・ジェシーさん達の所に戻ったら何か作りますからね。
一応、パナにも聞きますか。」
「もう少し塩加減が薄ければ病院食ですね。」
パナが淡々と言ってくる。
ちなみにパナの言い草に武雄は頷いてしまう。
実は武雄も「これで薄味だったら病院食だなぁ」と思って食べていた。
「・・・ミアはどうですか?」
「リンゴ美味しいですね。」
ミアは料理に手を付けずにリンゴを食べていた。
手を付けなかった料理はビエラが食べていた。
「むぅ・・・」
明らかにビエラは不満だが、食べないという選択肢はないようだ。
だが、眉間に皺が寄っている。
「ジェシーさんの所まで我慢しなさい。」
「わかってりゅ。」
ビエラが答えるのだった。
・・
・
夕食も終わり子供達は早々に寝かせると共に、マイヤーとベイノンは幌馬車等の明日の用意をしに一旦外出したが、すぐに戻ってきていた。
そして武雄の部屋に皆が集合していた。
初雪がスライム20体程度を子供達の寝室に潜ませており、何かあれば連絡が来るようになっている。
「マイヤーさん、ベイノンさん、簡単な遮音は出来ていますか?」
「ええ、簡単なのは出来ていますよ。
少なくとも廊下側からは聞こえません。
初雪殿も平気ですか?」
「この周囲に生物の存在はありません。」
マイヤーと初雪が問題ないと言う
「なら反省会を始めますか。
・・・まぁ今回は面倒でしたね。」
武雄がお茶を片手にため息交じりに言う。
「そうですね。
情報だけのつもりが奴隷の引き渡し交渉ですからね。」
マイヤーが答える。
「いろいろと陛下や王都の局長達に説明しに行かないといけない事が発生してしまった感がありますが、まぁここで見放すような事をする訳にもいきませんしね。」
「そうですね。
それにあの男の情報を魔王国に送って問題なかったのですか?」
ベイノンが聞いてくる。
「向こうにとっては重要になる可能性のある情報ですし、私達が持っていても意味をなさない情報でもあります。
ただ、ビエラを森に迎えに行った際の帰り道で聞きましたが、向こうは相当気に入ってくれたようです。
お小遣いもくれましたしね。
ありがたく私の趣味に使わせて貰いましょう。」
「いくらですか?」
マイヤーが聞いてくる。
「金貨300枚。」
「「え!?」」
マイヤーとベイノンが固まっている。
「余程な情報だったようですね。
頂いたお小遣いから今回の特別報奨金としてビエラ、パナ、ミア、マイヤーさん、ベイノンさんにそれぞれ金貨5枚です。
初雪は金貨とは別にちゃんと用意します。」
「残飯の樽で!」
「はい、買い取ってきますよ。」
「所長・・・よろしいのですか?」
「今回は関を見るだけのはずが余計な事もしてしまいましたし、それに向こうからお金くれましたからね。
多少は還元しておきます。
毎回とはいきませんから、毎回その都度余剰金が出来たら分配ですかね。
とりあえずエルヴィス領に帰ったら好きな物を買って結構です。」
「「ありがとうございます。」」
「主、ありがとうございます。」
「タケオ、道具が買えますね。」
「あ~♪」
「残飯♪残飯♪」
皆が喜ぶ。
「さて、他に話さないといけないのは子供達ですね。」
「ルフィナはエルフ、セレーネとルアーナは猫系の獣人、ヴィートは魔人、ラウレッタは狸系の獣人、マヌエルは人間から狐に変身する型の獣人ですね。」
マイヤーがメモ書きを見ながら言う。
「・・・狸いたんですね。」
武雄がボソッと呟く。
「いますよ。
アズパール国内にも少数ですが住んでいる箇所があった気がします。
気が向いたら戻ってから調べてみてはいかがでしょうか。」
マイヤーが普通に返してくる。
「わかりました。
それは別ですから後日覚えていたらします。
パナ、子供達を見てどうでしたか?」
「栄養不足でしょう。
虐待等の痕は腕等には見受けられませんでした。
エンマやフローラのような状態かはまだ見ていません。
ただし大丈夫であろうと思われます。
また、これは奴隷という身分になってしまったからでしょうが、精神的に不安であると思われます。
この辺は十分に注意が必要かと思われます。」
「そこは小まめに見てあげるしかないでしょうけど・・・この数ではずっと見ているわけにもいきませんしね。
ここからゴドウィン伯爵邸までとその後にアリス達も合流しますが、エルヴィス伯爵邸までですからね。
パナやコノハにも手伝って貰っていくとしか言えませんね。
基本的に御者はマイヤーさんとベイノンさんで私やアリス、コノハにパナ、ミアやスーで観察でしょうかね。」
武雄が考えながら言う。
「とりあえず、明日は1日かけてゴドウィン伯爵邸ですから何とかなるでしょう。
その後は1日休養でしたね。」
「子供達の面倒はゴドウィン家に任せましょうか。」
「それはマズいでしょう。
まぁそれも着いてから考えましょう。」
「そうですね。
初雪、一応、アリスの下にいる彩雲か紫雲宛にスライムを送ってください。
夕霧や時雨宛にも。」
「わかった。
すぐに実行。」
初雪が10体ほど出して外に出す。
「さて・・・今日は寝ますか。
初雪すみませんが、子供達の部屋で何かあったら私達全員起床させてください。」
「うん。」
「じゃあ解散。」
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