第1359話 昼過ぎのとある東町にて。9(子供達からの質疑応答。)
孤児院の奥まった部屋。
そこに引き取った子供達が集められていた。
「ルフィナ、セレーネ、ルアーナ、ヴィート、ラウレッタ、マヌエル・・・6名ですか。」
子供達皆が机に座り、武雄が皆の前の机に座って奴隷契約書を見ている。
「所長、一応首輪は確認しました。
首輪に所長の名前が入っています。」
マイヤーが報告してくる。
「では、あの時の引継ぎは問題ないという事ですね。
こちらも問題なく引き上げてくれました。
今日はここに1泊で明日の早朝出立、この子達の事があるので幌馬車に変更です。」
「了解しました。
後ほど手配しておきます。」
マイヤーが頷く。
武雄が子供達を見ると子供達が緊張しているのがわかる。
「とりあえず・・・ミア・・・」
「い・・・一応、頑張りました・・・」
武雄の机にボロボロになったミアが正座で着席していた。
「うん、その姿を見れば頑張ったのはわかります。
王都での再来ですね?」
「ええ・・・特に4名程酷かったです・・・」
「そうですか・・・今は寝なさい。」
「はい、主・・・
はぁ・・・夕食になったら起こしてください。」
ミアが武雄の胸ポケットに入りながら仕事を終えた充実感で仮眠するようだ。
「さて・・・あの男から貴方方6名を引き継ぎましたが・・・
言いたい事はあるでしょうが、不平不満について今は聞けません。
こちらからの伝達のみ行います。
1つ、貴方達は奴隷としての身分のまま最短15年間、仕事をしてもらいます。
1つ、15年の仕事が終われば自由の身にさせますので、犯罪を犯したり、物を壊したり、偽証したりしてはいけません。
それが発覚すれば15年と言わずに20年、25年と奴隷契約を延長するかもしれません。
なので真面目に仕事に取り組んでください。
1つ、お給金については後日、個別の相談をします。
以上です。
何か質問はありますか?」
武雄が子供達に言う。
「・・・あの・・・」
端に座っていた女の子が手を挙げる。
特徴的な耳を持っている。
「はい、えーっと・・・貴女はルフィナさんですね。
最初ですからね。
種族と年齢を教えてください。」
「ルフィナ エルフ種 89歳です。
質問なのですが、貴方は誰ですか?」
「私ですか?
人間種のキタミザトと言います。
ここはアズパール王国でこの地から数日行った所の街で研究所を任されています。
ちなみに貴族・・・領民達の上に立つ存在です。
今回たまたま貴女達が居たので引き取ったまでです。」
武雄がにこやかに言っている。
「はい・・・わかり・・・ました。」
ルフィナは武雄がしっかりとした回答をした事に驚きながら頷く。
「はい!
ラウレッタ 狸種獣人 41歳です!」
違う子が手を挙げる。
かわいらしい耳の持ち主だ。
「はい、どうぞ。」
「私達はどうなるのでしょうか?」
「先ほども言いましたが、15年の仕事を課させて貰います。
その間は奴隷契約は解除いたしません。
これは国防上の理由からになります。
また越境に関してはその地を治める領主の越境許可が必要な為、首輪がある段階では雇い主、この場合は私の許可なくして発行はされませんので不可能に近いです。
奴隷の首輪があっては軽々と越境は出来ないと覚悟してください。
なら15年働いていただき首輪が取れた後に越境許可を取得して国元に帰ってください。」
「わかりました・・・」
ラウレッタが頷く。
「ヴィート 魔人 57歳。
どういった仕事をするのですか?」
「現在仕事としては執事、メイド、事務員が出来るようにさせたいとは考えています。
実際は領地に戻り、担当の方達と話し合いながら君達の配属を決定したいと思っています。
性奴隷や重労働をさせるつもりはありません。
まぁ今あげた執事等の仕事が重労働ではないとは言い切れませんが、少なくとも君達が15年後巣立つ時までにこの国の一般常識や金銭感覚、読み書きと簡単な計算は出来るようにさせます。
次の仕事への斡旋もしたいですからね。」
「斡旋ですか?」
「ええ、仕事で執事等をしていた者は引く手あまたです。
礼儀作法や掃除、書類の作成、整理・・・他の職業に付いても使える内容を覚えますからね。
君達が15年後、望む仕事を出来るだけ用意してあげますよ。
だから、真面目に取り組みなさい。
最初は失敗をするでしょうし、よく怒られるでしょう。
ですが、それは出来ないからなのであって種族的にではありません。
少なくとも私はそう考えています。」
「はい・・・わかりました。」
ヴィートが頷く。
「あの・・・私はセレーネ、この子はルアーナ。
猫種獣人で36歳の双子です。
私達は器用ではないのですが・・・」
猫耳の獣人が手をあげて聞いてくる。
「構いません。
貴女達の能力的に難しいというのであれば他の仕事を探しましょう。
貴女方の能力を見ながら考えればいいでしょう。」
「はい、わかりました。」
2人が頷く。
「はい、マヌエル 人間から狐に変身する型の獣人 33歳です。
お給金というのは?」
「貴方達は奴隷ですが、仕事をします。
仕事をするのであれば給金をもらうのが当たり前です。
多くの金額は渡せませんのでそこは承諾していただきたいと思いますね。
領地に戻って関係各所と話し合わないと貴方達の具体的な給与額を決められません。
なので、出すが、最低限の費用となると考えてください。」
「はい。」
マヌエルが頷くのだった。
「他になければ・・・夕食にしましょうか。
ベイノンさん、夕食の支度を聞いてきてください。」
「はい。」
ベイノンが退出していく。
「タケオ、ビエラが森に戻った。
迎えに行かないと。」
「わかりました。
マイヤーさん、あとはよろしく。
初雪、ビエラを迎えに行きましょう。」
「はい。」
「室内は見ておきます。」
武雄と初雪が退出するのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




