第1347話 ゴドウィン伯爵領の関に到着。5(夕食までは。)
関での話合いが終わり夕食まで思い思い過ごす事になったのだが。
「あ~?・・・タケオ、本当に行くのか?」
「ええ、軽く運動を。
ですよね!?」
武雄がマイヤーとベイノンをにこやかに見ながら言う。
「ええ、ほぼ日課ですし。」
「まぁ、こうなる事は予想していましたし。」
マイヤーとベイノンが諦め顔をさせながら言ってくる。
ちなみに3人とも戦闘するスタイルで立っていた。
「暗くなる前に帰って来いよ。
あ、そうだ。今日はシチューだそうだ。
関のシチューは肉が多くてな、食べ応えあるぞ。」
ゴドウィン伯爵が呆れながら言う。
「初雪とビエラはゴドウィン伯爵と一緒にいなさい。
まぁ・・・将棋でも指して夕食までのんびりとね。」
「はい。」
「はい!」
初雪とビエラが返事をする。
「じゃあ、行ってきます。
2人とも行きますよ。」
「「はーい、了解でーす。」」
武雄とマイヤーとベイノンが散歩に出かける。
「・・・夕霧には負けたからな、初雪ならば・・・」
ゴドウィン伯爵がぶつぶつ言っている。
「伯爵、スライムは知識面は強い。また負けたい?」
「ぐっ・・・よ・・・よかろう。
初雪から1勝してみせよう・・・あの時よりも修練を積んだのだ!
部下の前で醜態はさらせ・・・ぬ。」
余裕の初雪とガクガクさせながら答えるゴドウィン伯爵の図が出来上がっていた。
「あ~・・・」
ビエラが両方の顔を見て「あ、こりゃゴドウィンの負けだわ」と確信するのだった。
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ゴドウィン伯爵邸。
アリスとジェシーは裁縫をしていた。
「お姉様、いかがでしょうか・・・」
アリスが出来栄えをジェシーに確認して貰っていた。
「・・・45点かな。」
「50点満」
「100点中だからね。」
「・・・」
アリスが黙り込む。
「はぁ・・・まぁ数日で良くやったと褒めるべきかしら・・・
まさかアリスが裁縫がここまでダメだとは。
タケオさんには言えないわね。
まぁある程度慣れが必要だから今後も少しずつしていく事ね。」
「はい・・・わかりました。」
アリスが落ち込みながら返事をする。
「向こうでするなら・・・コノハ殿、パンニューキス、何が良いかしら?」
ジェシーが隣の机でチビッ子お茶会をしているコノハとパンニューキスに声をかける。
「ジェシー、その前に言わせて。
アリス・・・裁縫の才能がないのね。
無理をする必要はないわ、初心者用をゆっくりとしていきましょう。
タケオはちゃんとわかってくれるはずよ。
平気、タケオは裁縫が出来なかろうがアリスを嫌いにはならないわ。」
コノハが真面目な顔つきで諭すように言う。
「え?・・・嘘、私そこまでなの?」
「コノハ、些か脅しすぎです。
アリス、手芸は誰もが最初は下手なのです。
初めて針を持った者がいくら才能があったとしても服を作れる訳ではありません。
コツコツ精度を高めるしかないのです。
そんなアリスにお勧めは『ヌイグルミ』です。」
パンニューキスが堂々と言う。
「はい、パンニューキス、ちょっと待ちなさい。
それは初心者のする事ではないわよ。
まずは巾着のような小さい小物から始めないと無理よ。」
「四角の布袋を作って装飾し、綿を入れるだけです。
こんな感じの。」
パンニューキスがいつの間にか四角い簡易的なヌイグルミを前に取り出しコノハに見せる。
「パンニューキス・・・アリスのさっきの手際を見たでしょう?
それに綿を入れてからの目立たないように縫うのも初めてには辛いわよ・・・
今は、巾着のような縫う、紐を通す程度の事をして慣れさせないと。」
「むぅ・・・致し方ありませんね。
ならこの最高級の」
「パンニューキス・・・巾着は麻程度で良いのよ。
むしろ質より柄よ。
なんだったら2重にして頑丈性を出した方が良いわよ。」
「・・・」
パンニューキスが目線を横に向ける。
「なに不貞腐れているの。」
「芸術性がないです。
一般的過ぎです。」
「巾着に芸術性を求めないでよ。
あ、パンニューキス、アリスにヌイグルミを作らせようとしたのって。」
「アリスなら新たな前衛芸術が生まれると思いませんか?」
「思わないわよ!
やめて、うちのアリスを芸術家にしないで!
いきなり寝室の内壁が赤一色とか変な石膏像が置かれ始めたとかしたらどうするの!?」
「それこそ個性!」
「なわけないでしょう!?」
チビ精霊が漫才をしている。
「お姉様・・・裁縫頑張ります・・・
人並みにはなりたいです・・・」
「うん、裁縫1つで芸術の域まで達せられると私としても対応に困るわ。
まずはコノハ殿が言う巾着が良いわね。
小さいのなら貨幣入れにちょうど良いわよ。」
「そうですか・・・ではそこから始めてみようかと思います。
でも私達は基本革袋ですよね。」
「私達だと持ち歩く貨幣が少し高額だからね。
布製の巾着だと刃物で簡単に切れちゃうから防犯上、少し頑丈な物にしているのよ。
そういえばアリスは昔から小物とかの柄を気にしなかったわね。」
「はい、革袋が当たり前だと思っていました。
洋服も『こういうものかぁ』程度の感想しかありませんでしたね。
あとは綺麗か綺麗じゃないか程度の差ですね。」
「うぅ・・・こんな女子力低めのアリスが結婚なんて・・・
ほんとタケオさんに貰って頂いて良かったわね。」
ジェシーが本気で涙を流している。
「・・・ちなみにお姉様、料理は出来ますか?」
「え?・・・簡単な物は出来るわよ。
昔アリスにも食べさせたじゃない?」
「・・・お腹を下して大変だった思い出しかありませんが?」
「そっちじゃないわよ。
スープとかは一時期レイラと作っていたわね。
まぁ結局本職の料理人達には勝てないとわかってしなくなったけどね。
アリスだって出来るでしょう?」
「ええ・・・まぁ・・・簡単な物は・・・
でも料理人が作った方が美味しいですから私は食べる専門に落ち着いています。」
「うんうん、そうよね。
でも子供も生まれるし、簡単なお菓子があれば作ってあげたいんだけどね。
この間なんて小腹が空いたから厨房に行ったらね。」
ジェシーが話しているのをアリスはにこやかに聞いているが、「言えない・・・料理したことないなんて」と冷や汗をかきながら屋敷に戻ったら武雄に料理を教えて貰おうと心から誓うのだった。
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