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第1345話 ゴドウィン伯爵領の関に到着。3(遅滞作戦とは。)

兵士詰所にて。

「という事はその前段階の・・・えーっと・・・関正面のこの森と草原との狭間付近から始めるというのですね?」

軍務局の局長が武雄に聞き返していた。

「そうです。

 私達第一研究所、第二研究所が旨とする戦術は『多数を持って少数を撃破』することです。

 という事は、この考え方を元にして考察し極論を言うと関での攻防において関で対応できる上限数までは敵の数を少なくさせないといけないという事になります。

 その為には。」

「森で道を作り、関に到着する際はある程度幅を狭くさせる必要があるな。」

ゴドウィン伯爵が考えながらいう。

「はい、それに道幅は最初は広く、徐々に狭める方が効果的でしょう。

 また、直線での道は攻撃する方から・・・獣人達からすれば助走距離が長く取れてしまいます。

 わざわざ攻めやすくしてあげる必要はありませんのである程度蛇行させるべきですね。」

武雄が頷く。

「ですが、この正面の道は慣例の戦争等でも使用します。

 仲間の出陣は大丈夫ですが、退却時に時間がかかるのではないでしょうか。」

「かかるでしょうね。

 まぁ通常は混んでもあまり気にはしなくて良いかもしれませんが・・・

 重要になるのは敗戦濃厚時における撤退時の混乱なき行動となります。

 この地で働いているあなた方が各部隊の移動をしっかりと管理しなくてはいけません。

 上手く行かないと・・・」

「後ろからただ攻撃を受ける・・・混乱に拍車がかかります。」

「その通りですね。

 まず伯爵達の退却が一番最初ですが、その後の誘導をどうするか。

 ここでしょう。」

武雄が地図を指さしながら言う。

「まずはうちの小隊で盾を多くして・・・テンプル伯爵軍、エルヴィス伯爵軍両軍から盾を借りて防御を厚くして両軍の撤退をお願いする。

 ・・・うちの盾が保っている内にうちの小隊を順次撤退・・・でしょうか。」

「それだと最後の盾が問題だ。

 残る兵は死ねという考えはここではないぞ?」

小隊長達が話し始める。

「当たり前だ、うちの軍で死んで良い兵士なぞいない。

 それは絶対だ。そうだろう?タケオ。」

「まぁ実際は状況というのがありますが、机上の戦闘で・・・初めから死者を想定しての行動はいただけません。

 ほぼ同数である慣例の戦争において死者を想定しない撤退行動の方法は絶対にあります。」

ゴドウィン伯爵と武雄が小隊長達の話を聞きながら話している。

「ん~・・・・どうやって撤退を上手くさせるか・・・

 2貴族軍の撤退まではそのようだろう。

 問題は我らの撤退方法だけだ。」

「いや、しかし初期の撤退方法が間違っていたのでは?」

「いや、あれは間違っていない。

 土地感覚のある我らが最後で問題はない。

 土地感覚のない他領の兵士では時間がかかり被害を増やすだけだ。」

「なら盾の」

小隊長達が議論を始める。

「・・・で?タケオ、秘策はあるか?」

ゴドウィン伯爵がコソッと聞いてくる。

「個人的な考えはあります。

 ですが、この考えは部下に聞いてみてからの各貴族へ奏上でしょうか。」

「難しいか?」

「机上では簡単な行為でしょうが・・・部隊の指揮官が何と言うか・・・」

「それでもあるんだな?」

「ええ、当然。

 攻勢時の戦術も考えますが、防御や撤退の方法を考えるのも戦術を考察する上で大事でしょう。

 人によっては撤退は不吉だと言うかもしれませんが、無駄に兵士を死なせない為には攻勢時より撤退時に重きを置いた戦術考察をしたいものです。」

「なるほどな。」

2人がコソコソと話しているとマイヤーとベイノンが詰所に入ってくる。

「失礼します・・・所長、現地視察終了しました。」

「はい、ご苦労様です。

 席はこっちですよ。」

武雄がマイヤー達を手招きしながら労う。

「失礼します・・・で?これは?」

「あぁ、慣例の戦争で展開後に不利を悟った場合、関までの撤退作戦をどうするかという話です。

 まず、展開中の全部隊から中央のゴドウィン伯爵軍に盾を集め、抜けられない壁を作る。

 貴族達を先に逃がし、次にゴドウィン伯爵軍以外の貴族軍を逃がし、最後にゴドウィン伯爵軍の兵士たちを順次撤退させる。

 では、最後の盾の兵士をどう撤退させますか?

 という所です。」

「・・・撤退ですか・・・ん~・・・王都側の軍は最初の頃に下がる事が想定されていました。

 早く関に戻り、関での迎撃準備をどうするかというのを想定していました。

 実質の盾役の兵士達の撤退は所属の貴族が考える運びになっていたでしょうか。」

マイヤーが考えながら言う。

「ゴドウィン伯爵、その辺の考えは?」

「あるにはあるが、ないと言えばない。

 順次撤退としかないな。

 個々の小隊で盾を装備し、襲い来る敵を迎撃しながら後退するぐらいしかないかもな。」

「部隊全体の撤退で個人の小隊判断で防御させてどうするのですか。」

武雄が呆れながら言う。

「所長はあるのですね?」

「ええ・・・遅滞行動というのをさせるのでしょう?

 私ならまず盾役の兵士と魔法師部隊を混成し3隊に分けるとして、1班、2班、3班としますね。

 味方が下がったのを確認してから関へと向かう道を1班が塞ぐ、1班の後ろ20m程度に両脇を移動できるくらいの隙間を作って2班が塞ぐ、さらに3班が2班の後ろ20m程度を塞ぐと3列に展開。

 1班と敵との距離が50mを切ったら1班の魔法師が攻撃、攻撃と同時に1班が3班の20m後方へ展開する為に移動を開始、前が居なくなった2班では敵との距離が50mを切ったら攻撃、攻撃と同時に後ろに下がった1班の20m後方に展開する為に移動・・・そうやって、攻撃して後ろに下がるというのを繰り返していけばゆっくりと相手と距離を保ちながら撤退が出来ると考えています。」

武雄が持論を話すと小隊長達が「「「おおおお、そんな考えが」」」と感心している。

「タケオ、相手が突貫してきたらどうするのだ?」

考えながら聞いていたゴドウィン伯爵が聞いてくる。

「1班から3班までの迎撃間隔は40m程度です。

 3班同時に魔法師の攻撃をしながら相手の突撃を躱すしかないでしょう。

 あ、後ろで第2弾、第3弾の魔法攻撃をさせながら最前列の班を撤退させた方が良いかもしれませんね。

 もちろん決まった距離で当らなくても着弾させるようにすれば牽制の意味もありますから不用意には近づいてこないと思います。

 威力はそこまでなくて良いので広範囲でばら撒ける魔法があると良いですね。

 マイヤーさん出来そうですか?」

「はぁ・・・有効であると私は思いますが、帰ってから皆で検討ですね。

 ついでにその考えを王都で発表してきてください。

 他の・・・特に騎士団辺りが部隊訓練をしてくれると思います。」

「王都で発表は面倒なので、マイヤーさん、戦術報告書を作って王都守備隊にでも流しておいてください。」

「はぁ・・・わかりました。」

マイヤーが諦めたように頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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