第1344話 ゴドウィン伯爵領の関に到着。2(試験施工。)
マイヤー達戦場視察組。
「・・・ふむ・・・」
「だだっ広いですね。」
マイヤーとベイノンが騎乗しながら戦場を見ている。
「マイヤー殿、正面向かって右側にテンプル伯爵家、左にエルヴィス伯爵家という布陣になります。
魔王国側は左にファロン家、右がパーニ家となります。
共に総数5000名程度で対陣し1、2か月程度にらみ合いを行います。」
「そうか・・・となると我々はあっち側か・・・」
「少し奥に木々が見えますね。」
「では、向こうのエルヴィス伯爵家が陣を構える方を見に行きましょう。」
マイヤー達の視察は続く。
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武雄は予定地の土を掘っていた。
「初雪・・・こっちの土はエルヴィス領とは違いますかね?」
「少し固そう・・・でも問題ないと思う。
スライムにさせてみる。」
「そうですね。」
「集合!」
初雪がそう言うと近くの茂みからスライム達が出てきて初雪の前に整列する。
武雄とゴドウィン以外の面々が驚いている。
「タケオ。」
「はい、皆さんご苦労様です。
今回はこの地で土塁を作ります。
物的にはエルヴィス伯爵側と同じになりますからね。
慌てず焦らず作っていきましょう。
まずはこの地でちゃんと出来るか軽く掘って、軽く積んでみましょう。
私からは以上です。」
「では、エルヴィス伯爵家側のように3つに分けます。
掘る班、輸送する班、盛る班。
分かれ。」
200体のスライムが初雪の号令で集まりだしてから横に並ぶ。
見た感じ平べったく大きい鉄アレイの形だ。
「始め。」
初雪の号令で皆がちょっとずつ動く。掘っている班の地面が少しずつ低くなっている。
「意外と早そうですね。」
武雄が掘っている班を覗き込みながら言う。
「2回目だからやり方がわかっている。
エルヴィス伯爵家側は最初は苦労した。
掘る方は青と赤、盛る方は白と黒ですると上手くいくというのがわかった。」
武雄の隣に座った初雪が言ってくる。
「掘る方は水とアルコール、張り付ける方にモルタルとFRP・・・ん~・・・火で炙るだけでなく、自然乾燥でも効果が出てくるのかもしれませんね。」
「タケオ、その辺は研究する?」
「でしょうね。
炙らなくても良いとなるとスライム達の体液の使い方の範囲が広がります。」
「商品開発?」
「ええ、初雪達の土地が増えたり、残飯の樽が増える可能性がありますね。」
「土地よりも樽で。」
初雪が即答する。
「わかりました。
それは追々話していきましょう。」
「うん。」
「さて・・・どんな感じか。」
武雄が立ち上がり、盛っている方のスライムの方に行く。
・・
・
「固いな。」
「固いですね。」
ゴドウィン伯爵と武雄が盛る班が通った後を突きながら感想を言っている。
ゴドウィン伯爵の部下達も通った後を触ったりして確認している。
初雪達はというと、武雄が特別報酬としていつぞやのオーガ1体を出して与えており、皆で吸収中。
オーガに群がるスライムとその頂上でちょこんと座る初雪・・・皆が「よし!見なかったことにしよう」と記憶から削除し極力見ないようにしている。
「・・・タケオこの固さなら問題ないだろう。
簡単に崩れもしないと思う。」
「これなら侵攻されてもある程度防げますが、絶対ではありませんからね。」
「世の中に絶対はない。
絶対超えられない城壁なんてのもあるが、やり方次第だろう。
だが、数日持ってくれたり、労力が合わないから関を目指してくれる方が俺としては良いな。」
「そのとおりで。
それとここを超えられた際の対処は考えないといけません。
スライム達は盛ること程度しか出来ません。」
「その通りだな。
そこまでスライムに頼ってはいけないだろう。
あとは我々が考えることだ。」
ゴドウィン伯爵が頷いている。
「キタミザト子爵様!これは素晴らしいですね!」
「流石は先駆殿、私達の懸念事項を和らげて頂いて感謝のしようがありません。」
軍務局の者達が嬉しそうに武雄に声をかけてくる。
「維持管理はスライム達に任せられますけど彼らは戦場には来ません。
体が弱いのです。
害が及ぶとなると引きます。
なので、万が一の時はすぐには補修もされないと考えてください。」
「はい、心得ています。
しかし、これで関の門の補強の目途が付きそうです。」
「そうですか、それは良かったです。
ちなみにゴドウィン伯爵家側の関ではどういった補強をする予定なのですか?」
「あ、はい!
では門側に戻ってお話をしようかと思います。」
「お願いします。
初雪、スライム達にこの地の補強をお願いして私達は門の所に移動しますよ。」
「はい、タケオ。」
初雪は皆に見えないように足元からスライムを出し、他のスライム達に混ぜるとスライム山から下りて武雄の方に歩いていくのだった。
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魔王国側の関。
「ん~・・・今日は向こうの関で何かあるのか?」
「さぁ?他国の事はわからん・・・ん?旗が多くないか?」
「確かにいつも1つなのに今日は2つか。
旗は貴族か?・・・誰かが視察に来たんだろう。」
「視察なんて大変そうだ。
向こうは人間種だがそういったしがらみは同じか。」
「そうだな。
こっちもつい先日までブリアーニ王国の人達が見に来ていたしな。」
「1回もこの地の慣例の戦争には参加しなかったが、今回たまたま行商の帰りに見に来たんだったな。」
「女王陛下やうちの伯爵がいなくてよかったぜ。
上の視察なんてされたら掃除が大変だ。」
「そうだな。」
パーニ伯爵領の兵士ものんびりしているのだった。
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