第1343話 159日目 ゴドウィン伯爵領の関に到着。1(施工概要の説明実施。)
昼過ぎのアズパール王国 ゴドウィン伯爵領と魔王国 パーニ伯爵領との関にて。
「子爵旗掲揚!」
「ゴドウィン伯爵様並びにキタミザト子爵様に対し敬礼!」
関の者達が敬礼をして出迎えていた。
ゴドウィン伯爵も武雄も答礼をする。
ただ武雄は「エルヴィスさんの方は緩かったんだけど・・・こっちが普通なの?」と思っていたりする。
「直れ!」
「皆、元気そうだな。」
「はっ!
伯爵様、子爵様のこの度の観閲感謝いたします!
また関の警護を受け持っている小隊長並びに軍務局および東町の局長と担当者も到着しております。」
出迎えた者が報告している。
「うん、そうか。
タケオ、どうする?」
「関の補強に関する会議は私と初雪がします。
マイヤーさんとベイノンさんを慣例の戦争の場に連れて行ってくれませんか?
彼らは王立研究所の試験小隊です。
戦場を知らなければ戦術考察ができません。」
「うん、そうだな。
誰か居るか?」
武雄の言葉にゴドウィン伯爵が頷き、目の前の部下に聞く。
「はっ!
すぐに近年実施された戦場に立った者を3名程選出し案内させます!」
「それで良いだろう。」
ゴドウィン伯爵が頷く。
「部下をよろしくお願いします。」
武雄が頭を下げる。
「っ!はっ!おい!すぐに準備を!
では、伯爵様、子爵様、こちらの詰め所で席を設けております。」
部下に指示を出すと武雄達を先導していく。
「あれ?ビエラ殿?こっちに来ますか?」
マイヤーが隣のビエラが武雄に付いて行かないので聞いてくる。
「あ。」
ビエラも行く気はないようで頷く。
「マイヤー殿、資料的には確か草原だったと思うのですよね。」
「実際の地形の起伏や森や林等も見ておかないとな。
所長の事だ。ただ単に『見てきました』ではため息をつくだろう。」
「どんな事を見れば良いかの指針がないのは怖いですね。」
「まったくだ・・・おっ!連れて来た・・・ん~・・・見覚えがある顔だな・・・」
「知り合いですか?」
「さて・・・誰だったかな。」
マイヤーが見覚えのある顔を見ながら頭の中を検索しているのだった。
・・
・
詰所の中では武雄に対して皆が挨拶をしていた。
初雪に対しては武雄が「スライムと話ができる不思議な子」という事で押し通していた。
「伯爵様、子爵様、こちらがこの関周辺の詳細図となります。」
ゴドウィン伯爵と武雄の前に地図が置かれる。
「初雪。準備は出来ていますか?」
「はい、スライム200体準備しています。」
「良いでしょう。
現在、エルヴィス伯爵家側の関ではこちらとこちらの関を挟んで共に3kmずつに土塁を作って侵入を予防することにし実施しました。」
「「3㎞・・・」」
皆が地図を覗き込みながら驚いている。
「そういうわけで関の周辺の強化の一環でキタミザト子爵にエルヴィス伯爵家側の関と同じ物を作って貰う為にお願いして今回来て貰っている。」
「計画は私、施工はスライム200体と管理にスライム35体が常駐です。
スライム達からの要望は村や関で出る残飯をワイン樽に2つ、施工中毎日提供する事です。
ゴドウィン伯爵、条件は問題ないですか?」
「俺は問題ない。詰所の横に小屋の設置はどうなっている?」
「はい!雨が入らない程度の簡易的な小屋で良いとの話でしたので、施工は2日前に完了しています。」
「また、残飯の手配は村と関で問題なく実施する運びです。」
「うん。キタミザト子爵、続きを。」
ゴドウィン伯爵が促してくる。
「はい。では次に、土塁の構造と施工の方法を簡単に説明します。
何か書く物がありますか?」
武雄の問いかけに兵士たちが大きな紙を持ってくる。
「では、ここに書きましょうか。
現在、完了している土塁の断面はこう・・・なりますね。
こっちが土を持って来て・・・」
武雄が土塁の施工方法、今考えている利点を説明するのだった。
・・
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武雄が説明を終えて。
「なるほど・・・これでスライムの維持管理が付いての残飯2樽というのは安いですね。」
小隊長達が頷いている。
「補強工事後のスライム35体の維持費用はいかほどでしょうか。」
東町の文官が聞いてくる。
「初雪、エルヴィス伯爵家側ではどうなっていますか?」
「スライム35体なので関で出た残飯を朝の時点で小屋に持って来て貰って吸収しているそうです。
樽の半分程度なので何とか35体が満足しているようです。」
「そうですか。
なのでこちらでも関で出る残飯をいただければ問題ないと思います。
ただし、大規模に壊れてしまうと改修作業が必要で35体では出来ないと思われますのでその際はまた樽の用意をしてくれれば派遣をします。
部下の派遣なので実際の派遣費用等は私とゴドウィン伯爵とで行います。」
「わかった。俺の方は問題ない。
皆、とりあえず関の周辺の補強工事の概要はわかったな?
他に質問がなければ俺とキタミザト子爵、初雪殿は現地視察だな。」
「はっ!了解しました。
軍務局の担当者と小隊長達は関の強化後の警邏関係の修正案を検討すること。」
「「はい。」」
「頼むぞ、タケオ、初雪殿、すまんが現地を見に行こうか。」
「はい。」
武雄達は席を立つのだった。
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