第1328話 農業関係者の魔法授業。5(武雄達、南下中。)
「・・・才能って怖い・・・」
フローラが地面を小枝で突いている。
明らかにイジケモードに突入していた。
「はぁ・・・ニルデさん・・・」
テイラーがでっかいため息を吐いている。
「すみません、テイラー店長の言葉を聞きながらしていたら出来てしまったので見て欲しくて。」
「ジルダさんは白いファイアを発現させ、ニルデさんは操作系も初回から熟すとは・・・
今まで野に埋もれていたのが怖いくらいの才能ですね。」
「これは凄い事なのですよね?」
「ええ、とっても。場所が場所なら騎士団とかが来て兵士に採用されますよ。
もしくは魔法師専門学院に特別待遇で入学すら出来そうです。」
「ん~・・・キタミザト様に言ったらキタミザト様もテイラー店長が言った事をしますか?」
「しないでしょうね。」
ニルデの質問にテイラーが即答する。
「あの方は貴女達を兵士にする気がそもそもありません。
それに才能の塊のようなジーナさんを普通に文官として傍に置き、社会見学と称して王都に研修に行かせているのです。」
「ジーナ様は凄いのですか?」
「ええ、あの年齢でアリス様の後継者になりうる武力を持ち、メイドとしての仕事が普通に出来て、物覚えも悪くなく、先々の事も思って動ける高仕様です。」
「へぇ~。」
「本来ならどこぞの貴族や王家、王都の局が高給で召し抱えてもおかしくないんですけど・・・本人がキタミザト家に居る事を要望していますし、キタミザト様やアリス様も本人の意向を尊重していますからね。
本人がしたくない事はあのお二方は基本的にさせないでしょう。」
「そうなのですね。」
「エルヴィス家もキタミザト家も家族を大事にしているという事でしょう。
働いている時間は短くともジーナさんはキタミザト家の一員です。
そしてニルデさんもジルダさんもベルテ一家の皆さんも皆キタミザト家の一員なのです。
無理に戦えとか学び舎に行けとは言いませんよ。」
「それは安心ですね。」
「なので今は思いっきり農業をしながら魔法は手習い程度で良いでしょう。」
「はい、わかりました。」
と皆の所に浜風がやって来る。
「ユウギリ様より報告です。
ヴィクターが米を持ってこっちに向かっているそうです。」
「あ、はい。
ドナートさん、ボーナさん、荷物が届くそうですよ。
米ってどんなのなんでしょうね?」
テイラーは未知の食べ物が来るという事で少しワクワクしている。
「「ええ。」」
対するドナートとボーナは普通に答える。
「ん?・・・幌馬車が来ましたか。」
テイラーが気が付くと皆が幌馬車を目視するのだった。
・・
・
「確かに・・・米ですね。」
ボーナが荷台に乗り中を確認していた。
「こちらの内200㎏は作付け用でお使いください。
料理用は主が戻り次第、使わせていただきます。」
「はぁ・・・あの~ヴィクター殿、キタミザト様はお食べになりましたか?」
「はい、主もアリス様も私も頂きましたが、大変美味しかったです。
主やコノハは納得し、アリス様も満足顔をされておりました。」
「はい?」
ボーナが聞き返してしまう。
「エルフの方々がこのような美味しい穀物を栽培されているとは、この米は確実に受け入れられると思われます。
主はゴドウィン伯爵領に出向いていますが、戻り次第、エルヴィス伯爵様にも食べて貰う事になるでしょうが、もしかしたら他の畑でもして貰うかもしれませんね。」
ヴィクターがにこやかに言う。
「え?・・・美味しかったですか?」
「はい、大変美味しかったです。
お腹にも溜りましてね、移動時や朝食べると良いと思いました。」
「ん~・・・」
ボーナが考え込んでしまう。
「おい、とりあえず室内に入れよう。」
ドナートが幌馬車の後ろから声をかけて来る。
「え・・・ええ。
じゃあ、とりあえず荷台から全部下ろしちゃいますか。
皆手伝って!」
「「「「はい。」」」」
エンマ、フローラ、ニルデにジルダが返事をするのだった。
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武雄達一行は関から南下していた。
「主、こっちに強いのが居ます。」
ミアが武雄の肩に乗り腕を伸ばして方向を指示している。
「・・・居た。」
と武雄が小銃改1の引き金をひくと「ドンっ」と音と共に弾丸が飛んでいき目標のハイオークが吹き飛んでいた。
「はぁぁ!!!」
アリスがバスタードソードを横殴りに振り払うとオークが2体地面に倒れる。
もちろん切り口からは炎が出ている。
「はっ!」
「この!」
マイヤーとベイノンもオークを倒している。
「アリス7体、タケオ4体、マイヤー2体、ベイノン2た・・・3体。」
初雪が戦闘を見ながら数えていた。
「あ~?」
「きゅ、きゅ。」
初雪の横に居るビエラとクゥが暇そうに干物を食べて観戦していた。
「ふむ・・・私の近くにはいない?」
「あ。」
「きゅ。」
初雪の問いかけにビエラとクゥが頷く。
「スライム達を周囲に出した
確認はしていますが・・・異常なし。
あ、終わった。」
と武雄達が初雪達の所に帰って来る。
「ふぅ・・・何体でしたか?」
「21体。」
武雄の問いかけに初雪が答える。
「所長・・・道合っているんですかね?」
ベイノンが聞いて来る。
「朝、戻って来た彩雲の報告では道は途切れていなさそうという事でした。
紫雲は町か村まで行って戻って来ると言っていましたが・・・まだ来ませんね。
それに経路の確認はしたのでしょう?」
「しました・・・確かにこの道のはずですが・・・」
「ベイノンの問いかけも納得です。
この様な10体を超える群は今日で3回目ですからね。」
「ちょっとオークの数が多すぎのような気がします。」
「それだけこの道を兵士が使っていないという事なのでは?
村々の巡回地点とは離れていますし。」
マイヤーとベイノンの言葉にアリスが答える。
「どちらにしてもこの道で行くと決めたのです。
進んでいきます。
じゃ、マイヤーさんとベイノンさんは一緒に回収していきましょうか。
コラ達のお土産に丁度良いですしね。」
「「はーい。」」
「あ、じゃあ、私はスープを作っておきます。」
「お願いします。
あと、初雪。」
「タケオ達が回収した後の残りカスはこの子達に処理させます。」
いつの間にか初雪の足元にはスライムが10数体居た。
「では、サクッと終わらせて休憩にしますか。」
武雄達はゴドウィン領を目指して移動しているのだった。
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