第1326話 155日目 ヴィクター達帰投。(新兵訓練実施中。)
昼過ぎ、エルヴィス伯爵邸の前に幌馬車が着く。
「ん~・・・到着ですね。
ヴィクター殿、皆さん、ありがとうございます。」
「はい。お疲れ様でした。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。」
無事の帰還を6名は喜ぶ。
と玄関の扉が開かれ中からフレデリックと執事が出迎えてくる。
「エリカ殿、カサンドラ殿、お疲れ様でした。」
「また少し厄介になります。」
「よろしくお願いします。」
「いえいえ、とりあえず湯浴みの用意をさせております。
お二方ともさっぱりなさってください。
主達への報告は後程で構いません。」
「お言葉に甘えさせていただきます。」
「心遣いありがとうございます。」
エリカとカサンドラは自身の荷物を持って屋敷に入って行く。
「ヴィクターや試験小隊の方々も急な旅お疲れ様です。」
「はい、ありがとうございます。
私は米をベルテ一家の屋敷に保管してこようかと思います。
それ以外の確認をお願いします。」
フレデリックとヴィクターは幌馬車の後ろに回りながら話している。
「米については、昨日タケオ様から夕霧様経由で指示があり、先方に伝えてあります。
ベルテ一家も置く場所を確保しておくとの言葉を頂いています。」
「わかりました。
あと・・・こちらが、槍用の棒になります。」
「ふむ・・・これですか・・・
一度、テイラー店長の所で確認をして貰いましょう。
あとは報告にあった。」
「こちらが堅魚の干物60㎏になります。」
「こちらは厨房に持って行きましょう。
リザードマンの肉の干物は向こうで全部食べたのですね?」
「はい、興味がありましたら入手いたしますが。」
「ん~・・・今は良いですかね。
それと先ほど新たに夕霧様に報告が来ました。
魔王国のご一行は無事関を超えられたとの事、関で見送りも済ませ、タケオ様達は関の視察と周囲の土塁の確認をして了承したとの事。
今日はゴドウィン伯爵邸に向けて移動している頃でしょう。」
「主要街道を行かないと言っておりましたが・・・」
「ふむ・・・まぁ平気でしょう。
上空から彩雲様と紫雲様がタケオ様達と協力して進んでいるそうです。
夕霧様に定期的に連絡が入っています。」
「まぁ主達なら何が有っても進んでいかれるかと。」
「その通りですね。
では、ヴィクター、米を降ろしたら戻ってきて報告会という流れでよろしいですね?」
「はい、では、行ってきます。」
ヴィクターが御者台に座り、出立していく。
「皆様、お疲れ様です。」
フレデリックが試験小隊の面々を再度労う。
「私達はアンダーセン隊長が来ているはずですので訓練場に向かいます。」
「はい、ご苦労様でした。」
「では、失礼いたします。」
3人が去って行く。
「さて、ヴィクターが帰って来るまでにお茶の用意をしておきましょう。」
フレデリックも屋敷内に入って行くのだった。
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試験小隊の訓練場。
新人達は省力訓練を実施中。
「「・・・」」
アニータとミルコはゆっくりと後退る。
前のような牛歩ではないが、ゆっくりと慎重に。
「・・あぁ!」
アニータのエアロが四散してしまう。
記録8m。
「・・・あ・・・」
ミルコも下に落してしまう。
記録9m。
「ふむ・・・約1週間で倍以上だな。
よくやった。」
アーキンが頷く。
「「ん~・・・」」
アニータとミルコは納得していない様子。
「悩め悩め。
今はじっくりと悩む時だな。
考えがまとまったらもう一回してみよう。」
「「はい!」」
アーキンがそう言いながら2人の成長記録を付ける。
一方のブルックはというと。
「ケード!要領良くする事と最小の魔力量は違う!
自身の最小で維持をするんだ!
見ていればわかるんだぞ!手を抜くな!しっかりやりなさい!
もう1回!」
「はい!すみません!」
「コーエン!ストーンの球面が荒い!
これは発動に時間がかかる云々じゃない!
時間をかけても良い!丁寧にやりなさい!発動が雑過ぎる!
もう1回!」
「はい!」
2人ともアニータやミルコと同じ省力訓練を実施しているのだが・・・未だに1歩も後ろに下がれず、前段階で2人の教官をしているブルックに叱られていた。
ちょっと離れた椅子に座り新人を見ているアンダーセンとトレーシー。
「なぁ・・・アンダーセン。」
「ん?どうした?」
「指導の方は良いんだけど・・・内容のあれ辛い?」
トレーシーが指さしながら聞く。
「めちゃくちゃ辛いぞ、あれ。」
実はアンダーセンはケイとパメラが小屋でブルックの講義を聞いている時にアーキンに手ほどきされて省力訓練を実施していた。
今は休憩中である。
「王都守備隊の魔法部隊の隊長が辛いと言うんだから相当なんだろうね。
でも面白い事させるよね。
えーっと・・・アーリス殿だっけ?」
「ああ、元第二魔法分隊副官だな。」
「これ魔法師専門学院に導入した方が良いかなぁ?」
「お前はもう学院の者ではないだろう?
それにこれはやり始めたばかりだ。成果の程はこれから検証して報告を上げるのだろう。」
「それ待ちかぁ・・・」
トレーシーが考える。
「アンダーセン。」
「ん?」
「地図に書いてあった魔法具商店に行った?」
「制服を頼んでから一緒に行っただろうが、休みだったが。」
「だよね~・・・結局この3日魔法具商店に行けてないね。」
「アーキン達に聞いたら『所長の事をしてるんでしょうね、その内帰ってきますよ』と呑気な物だ。
だが、俺もお前もこれといって買う物はないだろう?」
「まぁそうなんだけどさぁ。
所長の武具全部を作っている魔法具商店だよ?気になるよね。」
「気にならないわけないな。
それにアニータとミルコは所長やジーナ殿の小太刀を装備し始めている・・・あれも取り扱っているんだろうな。」
「だろうね~、王都ですら見る事が無い武具をどんどん作っている商店・・・気になるなぁ。」
「その内会えるだろう。
ん?噂をすれば、訓練の起案者が帰って来たようだ。」
アンダーセンが小道の奥に3人の人影があるのを気が付くのだった。
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