第1324話 土塁の防衛力。(視察をしながら試験をする。)
「タケオ、お待たせ。」
関の詰め所から着替えた初雪とアリスが出て来る。
「はい、初雪ご苦労様、案内出来ますか?」
「問題ない。こっち。」
武雄達は一旦、関を出てスライム達が作った土塁を見に行くのだった。
・・
・
「うわ~・・・」
「凄い・・・」
「良くやりますね。」
「あ~。」
「きゅ。」
アリス達が初雪達の土塁を見上げていた。
ちなみに
その土塁は武雄の要望通りに高さ8mで、それも日本の城郭用の石積のように角度が上に行くほど急になっている。土塁の上には数は少ないが少し太い木々がちらほらと見える。
そして、土塁の土を手前側から持って来たので深さ3m、幅5m程度の空堀も完成していた。
「タケオ、どう?」
「初雪、この高さだと所々水漏れは平気ですか?」
「他の山では大雨が来ると穴や亀裂から水が湧き出ている。
なのでこの土塁の向こう側で深さ5m程度で幅が2㎝程度の溝を5mごとに作り、水が流れるようにしている。
ちなみに向こうはある程度なだらかになっている。
あと、こっち側の森は10mに渡って人間の膝の高さになる木を植えた。
上手く生えるように調整中。」
初雪が土塁の向かい側の高い木が不自然にない場所を指さす。
「どんな物にしたんですか?」
「伯爵の屋敷にあるトゲトゲの葉が付いている木にした。
タケオ、ダメ?」
「十分です。
要望通りですね。
ただ、これだけ大きいと補修が大変そうですね。」
「大丈夫、この周辺にはスライム達が35体居て逐一補修している。
大きく壊れればスライムの報告が来る、その時随時投入予定。」
「初雪・・・ちなみにこの土塁を作るのに期間とスライム何体使いましたか?」
「約3週間で197体。」
「・・・今35体ですよね。
他は・・・まさか、前に言っていた。」
「数体は私達が吸収した、残りはジェシーの所の関付近に行かせてる。
タケオの指示待ち。」
「・・・向かってすぐにジェシーさん達と交渉をして、仕様を決めないといけないですね。」
「タケオ様、これって侵入が大変そうですよね。」
アリスが土塁を見上げながら聞いて来る。
「そうですね。
試験はするべきですよね・・・マイヤーさん、ベイノンさん。」
「「所長!頑張ってください!」」
2人が綺麗に挙手の敬礼をする。
「・・・はぁ・・・この中では私が若手の分類ですか・・・」
武雄が体を解すのだった。
・・
・
「はぁはぁはぁ・・・あ~・・・こりゃ辛いわ。」
武雄が5回目の突破を試みたが毎回4m程度で足が滑り、ズルズルと腹ばいで下って来ていた。
「んんー・・・やぁー!」
アリスは武雄が3回目を失敗した辺りから参加し、6mくらいまで登って失敗していた。
「あ~♪」
「きゅ♪きゅ♪」
「おー早い早い!」
チビッ子3人は程よい高さまで登ると小さな丸太に乗って滑って遊んでいる。
「・・・どう?」
初雪が武雄とアリスに聞く、少し胸を張っているようだ。。
「くっ!もう一回!」
アリスが魔眼を発動しながら土塁に向かって行くがあと一歩でダメなようだ。
マイヤーとベイノンが攻略方法を地面に絵を書きながら検討している。
「降参です。
紐を持って来たので登りますか。
初雪、スライムを。」
「はい。」
初雪が白スライムを出し武雄に渡す。
武雄はリュックから何重にも巻かれた紐を取り出す。
「これを上の太めの木に巻いてここまで持って来てくださいね。」
武雄がスライムに言うとスライムがくるくると右回りをして紐の端を持って土塁を登ろうとするが、5mくらいの所で行き詰る。
白スライムが左回りをして困り始める。
「・・・」
その様子を見て初雪が追加で25体程度出す、そしていつの間にか補修係の35体も来ていた。
皆が一列になりながら登って行く。
傾斜が強くなると後ろの者が先頭に乗り、次の者が先頭に乗り・・・
「あの~・・・タケオ様、これってスライムなんですよね。」
「有効な手立てですね。」
その間もスライム達は重なって行く。
・・
・
あっという間に頂上に行きズルズルと紐が持って行かれるのだが・・・
「えーっと・・・どれだけ奥に行っているんですかね。」
「所長・・・確か何mのを買ったんでしたっけ?」
「25m程度だったはずだが・・・」
アリス、マイヤー、ベイノンが紐を見ながら
「ちなみにタケオ、あそこに見える木々に横から力をかければ木が根っこから抜ける予定。
あれはここら辺にあった木を植えただけ。」
「「「「え!?」」」」
武雄達が初雪の言葉に驚く。
「誰かに聞きましたか?」
「フレデリック。
倒した木をどうするか確認したら教えてくれた。」
初雪が答える。
「・・・タケオ様、これって有効ですよね。」
「所長・・・スライムの有効性がとても恐ろしいのですけど・・・」
「そしてエルヴィス家の執事さんってそんなに実用性がある物を考え付くのですか?」
3人が慄いている。
「まぁ・・・それは味方で良かったと考えましょう。」
そんな事を言っていると白スライムが帰って来る。
最後の所は崖から転がって来るのだが。
「お疲れ様でした。」
武雄が白スライムを手に取り労う。
「皆もね。」
回りに居たスライムにも声をかけるとスライム達が右回りをして初雪に近寄って行く。
「・・・」
と、出した分を初雪が吸収する。
「さて・・・登るか・・・」
と武雄がより始める。
「・・・行けそうですか?」
「たぶん行けるんじゃないですか?」
皆が登山を開始するのだった。
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