第1320話 慣例の戦争について。(関は見たいよね。)
「・・・レクリエーションについては杞憂で終わったのなら問題ないでしょう。
精霊については・・・ん?ヴィクターどうしましたか?」
武雄がヴィクターが若干青ざめているのに気が付く。
「いえ・・・実は、ヴァレーリ陛下が退官後、エルヴィス領に住むような事を言って帰国の途につきまして・・・」
「・・・」
「・・・」
武雄が腕を組み目を閉じて考え、皆は疲れた顔をさせる。
「・・・来年でしたか?」
武雄が片目を開けてヴィクターを見る。
「はい。」
「・・・よし!聞かなかった事にしましょう。」
武雄は対策を保留しました。
「タケオ様、よろしいのですか?」
「来たいという人を追い返す事はしたくないですし、来る時は一介の旅人ですよ?
それにアリスより上の武力を持って、精霊2体・・・対策するだけ無駄ですよ。
まぁ来たいなら何かしら接触はあるでしょうし、向こうも楽しみたいなら穏便に過ごすでしょう。
ヴィクター、何か接触してきた際は報告を国家として貴族としてやってはいけない事に抵触しない範囲で対応しましょう。」
「畏まりました。」
ヴィクターが軽く礼をするのだった。
「さて・・・次はと・・・
マイヤーさん達はどうでしたか?」
「首脳陣の政治的、商売的な話はなんとも・・・我々としては向こうの護衛との話は少し気になった事があります。」
「何か言っていましたか?」
「ヴィクター殿からも言われていましたが、魔王国との慣例の戦争についての裏付けですね。
通常は我が国の2貴族領のみの対応、本格侵攻時は2貴族領+王軍と言うのは聞いていましたし、理解できる範囲なのですが、通常の次の段階という言い方をして、2貴族領+東側の魔法師関係を引き連れた領主が応援に行くと説明を受けました。
そもそも護衛に選ばれる精鋭がそういった自国の軍備を言うのは少し不自然です。
先の2つは想定して然るべき事柄ですから言っていてもあまり不自然とは思わないのですが・・・」
「となるとその部分はこちらへのメッセージですか・・・本格侵攻はせず、通常の軽く手合わせの次の段階で魔法師部隊を投入ですか・・・ふむ・・・」
「過去、少なくともこの10年以内の慣例の戦争では2貴族の旗があるだけだったと記憶しています。」
「タケオさん、次の段階って味方の戦力は温存して相手の戦力を減らす事ではないですか?」
アリスとエリカが言ってくる。
「魔法師戦を仕掛けると・・・むしろそう思わせたいか・・・」
「確かにエリカ殿の考察が近い答えなのかもしれません。
ですが、極論としては戦場に立った際に向こうの旗が何が掲げられているかに因って対応が変わるという事かと。
準備や対策だけでもしておくことが大切かと思われます。」
マイヤーが言ってくる。
「ふむ・・・あまり与えられた情報に振り回されてもいけませんが・・・それが良いでしょうね。
それと情報を渡した理由としては、少なくとも向こうはこちらが壊滅や混乱するような事は避けたいという表れと捉えるべきでしょうか。
ヴィクター、応援に来るであろう領主はわかりますか?」
「東側の領主で魔法部隊・・・エルフのブリーニ殿かエルダーリッチのベッリ殿でしょうか。
規模については・・・総数を1000から2000名と見積もります。
盾役が居るはずなので魔法師は・・・800から1500名程度ですかね。」
「・・・アリス、こちらの魔法師の規模は?」
「総数5000名の内、魔法小隊は10隊200名、各騎士団の3割が魔法師ですので約500名です。」
「マイヤーさん、忌憚のない意見をどうぞ。」
「ほぼ同数ならやりようはあるでしょうが・・・最大数で来たなら・・・
撃ちあいとなると防御を手厚くして凌ぐしかないかもしれませんね。」
「対魔法師部隊戦を想定して訓練をしてもらいましょうか。
戦術は・・・うちの研究所から数案をエルヴィス家に提案するというのが理想でしょうね。」
「研究所の開所日は4月半ばでしたね。」
「慣例の戦争は8月中頃となると5月末までには起案の提出、6月中旬までにエルヴィス家の幹部で具体性を検討し、7月には訓練開始が最長工程でしょうか。」
「訓練に1か月ですか・・・」
マイヤー達試験小隊の面々が厳しい顔をさせる。
「マイヤー殿、大丈夫です。
エルヴィス伯爵家の兵士は1か月あれば何とか形にしますよ。
ただ・・・タケオ様、たぶん敵役についてですが・・・」
「それは試験小隊がした方が良いでしょう。
そうしないと全体練習が出来ないでしょうからね。
マイヤーさん、7月までに下位4名を訓練に参加出来るようにさせられますか?」
「アニータとミルコは何とか出来るでしょうが・・・正直ケードとコーエンは見ていないので何とも・・・」
「それと慣例の戦争では私達は先行偵察を実施する事になるでしょう。
その訓練もお願いしますね。
まぁアーキンさん達の新兵班はお留守番でしょうけど。」
「アンダーセンと話し合います。
それにしても戦術の考察と先行偵察訓練ですか、さらには盾の評価や新兵訓練もあるとなるとやることがたくさんですね。」
「時間は有限です。基本的には残業は認めません。
定時で終わらせられるように組んでください。」
「はぁ・・・わかりました。」
マイヤーが答えるが試験小隊の面々も考えながら頷く。
「げ・・・良い時間ですね。
出立は明日の朝一にしますか。
マイヤーさん、ヴィクターとエリカさんに付き添っての帰宅組と関への視察組の人員はどうなりましたか?
あと視察組はゴドウィン伯爵領側の関を見に行きます。
想定される戦場を見ないと考察も出来ないでしょうしね。
なので、我々の帰宅は少々遅れます。」
「それも含めて再考して明日の朝にご報告します。」
「あの~・・・タケオ様、ジェシーお姉様の所に行かないと向こうの関には行けなかったはずです。
なのでたぶん関から主要街道ではない道を通っても4日はかかりますし、確かゴドウィン伯爵領側の関は街から3日はかかるはずです。
普通に視察をするにしても屋敷に戻るのに15日程度かかります。
今日は3月27日です。
それに行ったらジェシーお姉様の所に最低でも1泊以上してしまうと開所式に間に合わない可能性があるのではないですか?」
アリスが指摘してくる。
「・・・それはダメですね・・・でも戦争予定地は見ておきたいですよね・・・
なら全行程で町や村には泊まらず買い物だけで、野宿覚悟なら?」
「・・・ん~・・・11、12日でしょうか。」
「行けますね。」
「「「・・・はぁ・・・」」」
皆が武雄の行動力にため息を吐くのだった。
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