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第1313話 こっちでもお見送り。(主と部下。)

シモーナ一行は町を出て街道に出る分岐点に来ていた。

分岐点からエルヴィス邸がある街に向かう道の15m程度先でフードで顔が見えない人間が跪き、顔を伏せながら最敬礼をしていた。

その横にはビエラとクゥが立っている。


「ん?シモーナさん。」

「・・・旅の者かキタミザト様の者でしょう。」

そう言いながら会釈するだけに留める。

先頭を行くシモーナの幌馬車が街道に出て行く。

「・・・」

「ダニエラ?」

ヴァレーリが止まると横のブリアーニも止まり聞いて来る。

「先に行ってくれ。」

「え?・・・ええ・・・旅人にちょっかい出してはダメですよ?」

ブリアーニとその護衛達が移動し始める。

「ダニエ・・・陛下。」

カストも聞いて来る、

「構うな、ビエラ殿も居る。

 ならこの場に居れるのはキタミザト子爵の関係者だろう。

 この者は我に用事という事だ、護衛はタローマティで事足りる、フレッディ達も先に行け!すぐに追いつく。」

「はっ!では!」

皆がヴァレーリを追い越していく。

・・

ヴァレーリが近づく。

「ファロン、久しいな。」

「陛下、お久しぶりでございます。」

ヴィクターは顔を上げずに声を発する。

「まったく・・・今回は甥にしてやられたな。」

ヴァレーリは騎乗から声をかける。

「はっ!そこまでご存じでしたか。」

「・・・悪いと思ったがシモーナを観察させて貰った。

 大体の事情は知っているが・・・」

「当分はこのままでお願いします。」

「だろうな・・・無闇に内乱を誘発するような行動をするお前でもあるまい。

 確か娘が居たな。この場には居ないようだが・・・」

「アズパール王国の王都にある学び舎に護衛の任務で出向しております。」

「学び舎・・・また随分と面白そうな事をさせているな。

 ・・・で?何で出て来た?このままの方がキタミザト家としては良かったはずだが?」

「これは私の我が儘でございます。

 主達は私を隠そうと努力なさっていましたが、不慮の事とはいえ陛下に離任の挨拶が出来ませんでしたので、陛下として相対する最後の機会に挨拶はしたいと今日の朝一で願い出ました。

 周りの方々はかなり渋られましたが、主は許可して下さいました。」

ここでヴィクターが顔を上げる。

「まったく・・・キタミザト子爵も甘いな。

 これを口実に戦争をしたらどうするんだ?」

「・・・陛下はされませんよ。それにどう私が生きていると証明されるので?

 私を連れて行けば前線領内が不安定になるでしょう。

 かと言って私は今の段階では越境をする気はありません。

 いくら陛下でも言葉だけでは王軍は動きません。」

「まぁ・・・そうだな。

 お前の甥も大変だな、お前の後を継ぐというのは大変だろう。」

「陛下、過分の評価でございます。」

「それにしてもその首輪は本当に奴隷の首輪か?

 些かお前は自由すぎるぞ。」

「私の主はそういう方ですので。」

「お前程の奴に主と呼ばれる者が我以外に居ようとはな。」

「陛下、嫉妬ですか?」

「お前の甥以外の領主は我が選んだ我の部下だ。

 その実力はわかっているつもりだ・・・ただの人間なら奪うんだがなぁ。

 キタミザト子爵なら、まぁ仕方あるまい。」

「ありがとうございます。」

「ちなみにだが・・・部下は主人の退官まで補佐するべき責務があると思っていたんだが、主人より先に離任する者がいるのは不忠だとは思わんか?」

「その点は申し訳ございません。」

「・・・ファロン、短い間だったが我の元で良く働いてくれた。

 領主からの離任を許可する。

 タローマティ。」

「はい。」

タローマティが何処からか鞘に収まった剣を取り出しヴァレーリに渡す。

「これを覚えているか?」

「着任の際に陛下が領主全員に下賜されました。」

「今回慌ただしくて持っていかなかっただろう。

 あの時の余りだ。

 記念に持っていけ。」

ヴァレーリが軽く投げる。

「・・・はっ!」

ヴィクターが大事に受けとる。

「ふふ。

 まぁ、ファロンに先を越されたが私の任期もあと数か月になった。」

「退官後はどちらに?」

「流浪の旅に・・・と思っていたがキタミザト子爵の所で隠居生活を楽しむかな。

 ビエラ殿もいるし飽きはしないだろう。」

「陛下・・・残念ながらキタミザト家には陛下を召し抱えるだけの給金が残っておりません。」

「・・・格安にするぞ?」

「陛下の実力を鑑みるに格安でも難しいかと。」

「ん~・・・なら部屋だけでも見繕えるか?

 あとはこっちで何とかする。」

「事前にご連絡頂ければ何部屋か検討をいたします。」

「連絡はシモーナ殿に頼むか。」

「畏まりました。」

ヴィクターが頷く。

「と、本隊と開き過ぎたな。」

ヴァレーリが町の入り口の方を見る。

「ファロン、またな。」

「いってらっしゃいませ。」

「ふふ。

 タローマティ、行くぞ。」

「はい。」

ヴァレーリとタローマティがシモーナに追いつこうと走って向かって行く。

しばらくの間、ヴィクターは後姿を最敬礼で見送るのだった。

・・

「終わりましたか?」

武雄がヴィクターの傍にやって来る。

「はい、我が儘を言ってすみません。」

「構いませんよ。

 連れて来た私の責任ですしね。

 それにもっと最悪の事も考えていましたし、それに比べれば大したことありません。」

「主、アリス様、私、そしてコノハとパナで3日前から考えた大よその流れの通り進んだ感はありますが・・・」

「まぁどれもが本当でどれもが嘘ですからね、そのぐらいな評価で十分でしょう。」

「あのタローマティという精霊がどこまでこちらを掴んだか・・・」

「極力精霊の名は出していませんが・・・

 何事もなく終わって良かったです。」

「予定にあった昨日の寝る前のレクリエーションは何があったのですか?」

「関節技という危険極まりない徒手技をかけてきました。」

「主が危険というのであれば相当なのでしょう。」

「ええ、想定以上の物だったので少し怒りました。

 ま、その辺の反省会も含めて昼食にしましょう。

 ヴィクターにも米の素晴らしさを体験させたいですからね。」

「昨日は食べられませんでしたので今日は頂きます。」

「ええ、楽しみですね。」

「あ~♪」

「きゅ♪」

武雄達は町に戻って行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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