第1312話 お見送り。(武雄とヴァレーリの雑談。)
町の入り口にて。
「所長に敬礼!」
マイヤー達試験小隊の面々が武雄に挙手の敬礼をする。
「はい、ご苦労様です。」
武雄は返事をする。
「直れ!
所長、昨日は夜ドタバタしていましたが何かありましたか?」
マイヤーが聞いて来る。
「嫁から襲撃訓練されましたけど。」
「なにも出先でしなくても・・・・どんな特殊な訓練を課しているのでしょうか。」
「私に言わないでください。
さて・・・今日はお見送りですが・・・」
「はい、その後はどうされますか?」
「2班に分けますかね。
今回購入した物をエルヴィス邸に持って行く輸送班、もう一つが関の様子を見に行く班ですね。」
「わかりました。
くじ引きをします。
一応、確認ですが戦闘はしますか?」
「脅威のある魔物やオーク、オーガ程度ならしますが・・・」
ちらりと横を見ると。
「あ~♪」
「きゅ♪」
チビッ子2名が手を上げる。
「まぁ、大丈夫でしょう。
こちらの人員はアリスは。」
「行きます。」
「エリカさんは?」
「私は先に帰ります。
エルヴィス伯爵家の政策関連のまとめをしたいので。」
「わかりました。
エリカさん、今回の交渉のまとめです。
エルヴィスさんに渡してください。」
「お預かりします。」
「まぁ基本は魔王国側の方々が出てからですので昼過ぎ出立でしょうか。」
「関までの道順の確認もしておきます。」
「はい、よろしくお願いします。
で、アリスの精霊殿。」
「はいはーい、何?」
「昨日の罰として昼用の玄米の用意をよろしく。
5kg程で。」
「わ・・・私一人ででしょうか?」
「ええ。」
「ご・・・5kgも必要でしょうか?」
「カレー持ってきているんですよね。
あ、ギリギリだから1人分足らないかも。」
「やります!やらせて頂きます!
でも時間が・・・」
「ん?」
武雄が無表情でコノハを見る。
「すぐに取りかかります!
お願い手伝って~!」
コノハが武雄に敬礼をしてパナに頼みに行く。
「くっ!今回は私も責任があるので何も言えません・・・それより人手が足りません!
アリス、手伝ってください!」
パナはアリスを抱き込みに行く・・・結果皆で作業です。
武雄はその様子を見ている。
「ビエラ、クゥ。」
「なに?」
「きゅ?」
「私の執事の所で待っていてください。
彼も1人では暇でしょうからね。
話し相手になっていてください。」
「はい!」
「きゅ!」
ビエラが町の入り口に向かって歩いて行く。
・・
・
「じゃあ、おばさん、幌馬車を持ってきましょうか。」
「そうね。
朝一で買った食料も再度確認しないとね。」
「そうですね。」
店を出て来たシモーナとレバントが幌馬車を取りに行く。
護衛の兵士達も馬を連れて来るようで一旦解散になっている。
「ん?・・・キタミザト子爵様、昼食は米ですか?」
次に出て来たヴァレーリが慌ただしく木臼等の用意をしているアリス達を見ながら言う。
ブリアーニはアリス達に近寄り木臼をもう一度確認し始める。
「ええ、昨日ちょっとありまして罰則みたいな物です。」
「ははは、キタミザト子爵様の逆鱗に触れると食事関係の労働が課せられるのですね。」
ヴァレーリがクスクス笑う。
「あのぉ~・・・グラート殿。」
エリカがカストに話しかける。
「はい、なんでしょうか。」
「突然で申し訳ないのですが、グラート殿はグリフォンとご紹介を頂いたのですが。」
「はい、私はグリフォンになります。
今は人間形態ではありますが・・・成獣状態を見たいですか。」
「はい!是非!
私グリフォンを見てみたいと幼い頃より思っていたのです!」
「では、シモーナ殿達が来るまでお見せしましょうか。
ダニエラ殿達、私は町の入り口に居ます。」
カストがエリカとカサンドラを伴って町の入り口に向かって行く。
「・・・これをどうぞ。」
武雄がヴァレーリに封筒を渡す。
「これは?・・・ほぼ初対面なのに側室の要請をされましても・・・」
そう言いながらヴァレーリが空にかざして中を見ようとしている。
「そういった物ではありませんよ。
魔王国陛下宛の私信です。
非公式文章・・・サインも押印も何もないただの駄文です。」
「差出人不明・・・で、よろしいのですね?」
ヴァレーリがちらりと武雄を見る。
「はい。
うちの部下から魔王国陛下はそういった文章では戦端は開かないと聞かされています。」
「そうですか・・・キタミザト子爵様の部下は陛下に謁見したのですか。」
ヴァレーリが懐に封筒をしまいながら言う。
「まぁ・・・昔の事らしいので今の陛下が部下が会っていた時と違っているかもしれませんが、その文章は戦争の大義名分にはなりませんよ。
サインも押印も何もない誰が書いたかも不確かな文章ですので。」
「そうですか。
まぁ・・・キタミザト子爵様が書いたと確認できないですしね。
あくまで噂程度の文章という扱いで。」
「ええ、お暇な時、読まれればよろしいかと。」
「そうお伝えします。
時にキタミザト子爵様、魔王国が本格侵攻した場合、アズパール王国は保つと思いますか?」
「・・・貴族としての立場では徹底抗戦してでも追い返すと豪語しなくてはいけないでしょうけど・・・ね。」
武雄が言い淀む。
「そうですか。
隣人が正しい見解を持っていてくれるのはありがたいですね。
そうそうキタミザト子爵様、小耳に挟んだのですがカトランダ帝国とウィリプ連合国は気を付けた方がよろしいですよ。
詳しくは言えませんが、きな臭いです。」
「隣国を侮る者はいないと思いますが、留意しましょう。
まぁ・・・そうですね・・・情勢云々ではないですが、帝国の方の自動人形は気になりますね。」
「・・・そんな物があるのですか。
魔王国ではそんな失敗作は必要ないですけどね。
動きそうなのですか?」
「さぁ・・・動くかどうかもわかりませんね。
それよりも良くそんな発想になった物だと感心しましたけどね・・・ちゃんと戦場で使える物なのか確認はしないといけないですよね。」
「確認だけなら楽しそうですね。
まぁ私は今年末には退官しますので気が向いたらカトランダ帝国に行って確認してみましょうかね。」
「高いらしいですよ。」
「ははは、陛下の侍女の給金は結構あるのですよ?」
「金貨1000枚との話もあります。」
「・・・ワイン樽を購入して湯浴み場でワインシャワーと洒落こみますかね。」
「興味を無くしましたか。」
「そんな物にお金をかけるのならワインにお金をかけた方が健全というものです。」
「まぁ・・・そうかもしれませんね。」
と武雄とヴァレーリが話しているとシモーナ達の幌馬車が近寄って来る。
「キタミザト子爵様、ウォルトウィスキーありがとうございました。
出来ればウスターソースの早期の増産よろしくお願いします。」
「当分はシモーナさんの所で食べてくださいね。」
「次はいつ旅が出来るのでしょうか・・・」
ヴァレーリが遠くを見るのだった。
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