第1306話 塩釜焼きと簡単塩焼き。(酒のツマミだな。)
厨房にて。
魔王国の面々向けに料理教室が開催されていた。
「ふむふむ・・・こうやって卵の透明な方を入れて捏ねるっと。」
ヴァレーリがコネコネしている。
「・・・ダニエラ・・・手慣れている感じがあるのだけど・・・料理出来るの?」
横で作業をしているブリアーニが聞いて来る。
「炒め物や焼き物とかの簡単な料理なら出来て当たり前でしょう、さして手間でもありませんし。」
「うっ・・・」
ブリアーニが唸る。
「野宿をすれば簡単な鍋物なんかはわかって当たり前、流浪をしたいなら食費節約の為に部屋でも自炊は当たり前です。
カールラは昔から部屋勤めなのでしょうから出来なくて当たり前ですね。」
「少しは出来るようにならないといけないかしら・・・」
「はぁ・・・カールラの種族は悠久の時を過ごすのでしょう?
料理くらい出来る物だと思っていましたが・・・カールラは例外ですか。」
「今度頑張ります。」
ヴァレーリとブリアーニが話をしながら作っている。
「キタミザト殿、いかがでしょう。」
カストは真面目に料理をしていた。
「ええ、満遍なく混ざっていますね。
これから土台を作りましょう。」
「はい。」
カストが頷く。
武雄がカストに「なぜ作るのか?」と聞いたら「苦労をかけている部下に食べさせたい」と言っていたので塩釜なら大して難しいわけではないので良いのではないかと考えていた。
「「・・・」」
アリスとエリカは無言で塩で覆う段階をしているのだが、武雄は2人の手元を見てため息をつく。
アリスは精巧な海老・・・ザリガニ?・・・サソリ?の形を作り、エリカは魚が泳いでいる様子を作り上げていた。
2人とも芸術肌なのかもしれない。
だが、武雄はツッコまない。
料理は見た目も大事なのだ。
2人とも何か考えがあってやっているはず・・・意図はあるのかなぁ?
「さてと・・・グラート殿が持って来たリザードマンの肉の干物は・・・
んー・・・塩ですね。」
武雄が白身の干物を軽くかじって感想を言う。
「キタミザト殿、当方ではワイン煮込みに使います。」
カストが肉を塩で囲みながら言ってくる。
「・・・あまり肉肉しくないような気がしますね。
オーク肉や牛、馬等に比べてあっさり・・・癖がないという感想で良いのでしょうか。」
「そうですね。
なのでワイン煮込みも意外とサラッとした味になります。」
「・・・鶏に似ているのかな・・・あっさり味の干物かぁ・・・
何か濃い味のソースでも作ってみるかなぁ。」
武雄がウスターソース、トウガラシ、砂糖、玉ねぎを一緒に炒め始める。
ちょっとした焼き肉のタレになりそうな雰囲気です。
・・
・
「キタミザト子爵殿!出来ました!」
「私も出来ました。」
ヴァレーリとブリアーニが窯の前にやってくる。
「む・・・グラート殿、終わっていましたか。」
「はい、こちらのお二方は芸術を作られていましたが。」
「「あはは。」」
アリスとエリカは渾身の出来栄えが目の前にあった。
「はぁ・・・私もカールラも出来ました。
キタミザト子爵様、これを窯に入れて焼くのですね?」
「はい、焼きましょう。
お願いします。」
「畏まりました。」
傍にいた料理人が皆の塩包みを窯に入れて行く。
「で、キタミザト子爵様、さっきから美味しそうな匂いがしていたのですが?」
「グラート殿の持って来たリザードマンの肉の干物を炙っているんですよ。」
「炙っただけでこの匂いが?
少し甘い香りがするのですが。」
「あぁ、それは・・・」
武雄は手元を見ると串に刺した干物を炙り、少し焼けたら取り上げてさっき作っていたウスターソースに軽く浸けて焼くを繰り返していた。
「これは・・・焼いてソースを付けて焼いてを繰り返している・・・のはわかりますが何故ですか?」
「肉自体があっさりなので、味を濃くしようと思ったのです。
まぁお酒のつまみですしね。
濃い味の方が良いと思ったのですけど・・・意外とテカリが出て来ましたね。」
「いや・・・そうではなく・・・
濃い味にするならソースをそもそも濃くすれば良いのではないですか?」
「まぁ・・・それでも良いのでしょうけど・・・
時間もありましたしね。
こっちの方が美味しそうだと思ったからしただけです。」
「はぁ・・・ではそれも後で食べさせて貰えるのですか?」
「ええ、多くはないですけどね。
塩釜焼きの肉とこのリザードマンの肉のソース焼き、あとは・・・シモーナさん、レバントさん魔王国ではどういう物をツマミにしますか?」
「・・・おばさん、肉ですよね?」
「肉だねぇ。」
「魚は?」
「一部の方々は食べますが・・・肉ですかね?」
「肉好きなんですね。」
「嫌いな者はいませんし、無難ですので。」
「ん~・・・エリカさんはどうですか?」
「実家の方では肉と魚ですね。
魚の時はあっさり系の味にしていますかね。
あとジャガイモを炒めた物をつつきながら飲んでいました。」
「「え?」」
エリカの言葉に魔王国の面々が驚いている。
「エリカ殿だったですか?
ワインのツマミにジャガイモを合わせるのですか?」
ブリアーニが聞いて来る。
「え・・・ええ、それほどおかしいとは思った事ないのですが。」
「ん~・・・魔王国は基本肉だからなぁ。
肉の添え物としてあったような・・・」
「誰も手を付けませんよね。」
ヴァレーリとブリアーニが考えている。
「地域差でしょう。
でも魔王国では食べないのですか?」
「ん~・・・お城に上がっている私達はほとんど食べません。
ジャガイモは添えられている物なのでそれを主要なツマミにという事はあまり考えません。
肉と一緒に取る程度です。
ジャガイモはワインのツマミというより主食の補佐ですからね。
お腹にも溜まりますからそちらがメインでしょう。」
「はぁ・・・それはそうですが・・・
タケオさん、地域差って事なんですよね?」
「たぶんそうでしょうね。」
「不思議な物です。」
エリカが首を傾げるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




