第1303話 おもてなしと言う名の試食なのでは?(まずは良かった。)
酒場の奥にてアリス達もシモーナ達も勢ぞろいしていた。
「は~い、お待たせしました。」
武雄と料理長、数名の店員が入って来て皆に配膳していく。
メニューはトンカツとキャベツとポテトサラダにお椀に入った玄米、塩漬けの野菜とスープとパンになっていた。
「ちょっと冷めましたが・・・美味しさは十分ですから。」
武雄が自分の分を持って席につく。
「なんだ?この茶色いのは、こっちは肉か、あ!・・・肉でしたよね?」
「このつぶつぶは・・・これが米という物なのですね。
これは何が一緒に入っているのですか?」
「匂いがちょっと独特ですが・・・豆とはまた違っている・・・なんでしょうこの匂いは。」
「これがトンカツ・・・で、こっちの茶色いのがウスターソース・・・
ん~・・・初めての料理です。
米はさっき食べましたが・・・不思議です。」
「茶色に茶色を和えるの?」
「ほぉ。」
魔王国の面々はタローマティ以外が驚いている。
「「わぁ~♪」」
アリスとエリカは目を煌かせている。
「ほぉ、これはまた大きいのを用意したのですね。」
「所長の料理は本当に美味しいので期待しちゃいますよ。」
「妻には言えんが正直所長の料理が美味しすぎて・・・家でも街中でも物足りません。」
「またトンカツが食べれるとは・・・はぁ良い部隊に入ったなぁ。」
「これこれ!これだな!ブルック達には言えないなぁ。」
「確かに言ったら殺されそうだ。」
「これだけでもエリカ様に付いて来た甲斐がありました。」
護衛達が楽しそうに言っている。
「これがタケオが望んだ食事に近いのですね。」
「はぁ~♪和食~♪」
パナとコノハは待ち遠しいようで合図を待っている。
「あ~♪」
「きゅ♪」
「チュン。」
「あ、スー助おかえりなさい。
関まで行って来たのですか?」
「チュン。」
スーが頷く。
「報告は後ですね。
今はトンカツです。
あ、流石は主、スー助と私のは小さく切ってありますね。」
「チュン。」
スーがウスターソースの方を向いて鳴く。
「え・・・スー助・・・その成りでウスターソースですか??」
ミアが驚いている。
「チュン!」
「あ~。」
「きゅ~?」
スーが頷き、ビエラがウンウン頷き、クゥがミアに見下すような目を向ける。。
「ふん!クゥ、何を言っているのですか?
ウスターソースをかけるのが大人の嗜みではありませんよ。
皆がウスターソースが良いと言うからとウスターソースばかりかけるのではなく、レモンをかけてからウスターソースを少しかけてあっさりとさせるのが独自性という物です。
何事も他人の真似は良くありません。
と。」
ミアが無視してレモンを取ってビエラの前にやって来る。
「ビエラ・・・わかっていますよね?」
ミアが真面目な顔付で確認してくる。
「・・・あ♪スゥーハァー・・・あ!」
ビエラが頷き、意を決してレモンを取りミアのトンカツの上で片手で握りつぶす。
案の定、ミアのトンカツは絞り汁でびちゃびちゃになった。
「・・・ビエラ・・・やっぱりかけすぎです。」
「・・・あ~・・・」
ビエラが「・・・次回までには何とかする」と謝るのだった。
「はい!説明しますよ~♪
基本的にはお好きにして結構ですが、その茶色いソースが今後魔王国というかシモーナさん宛に輸出予定のウスターソースになります。
ちょっと水っぽいでしょうが、お気になさらずに。
それとお椀に入っているのが米・・・玄米と言う状態の米になりますが・・・
ちょっと癖があるのでシイタケと一緒に仕上げています。
こちらはそのまま食べて味わっても良いですし、ウスターソースをかけたトンカツを一切れ乗せて食べても良いですね。
また、トンカツはパンに挟んでも良いです。
では!いただきましょう!」
「「「いただきます!!」」」
皆が一斉に食べ始める。
・・
・
「なんだこれは!なんだこれは!なんだこれは!」
ヴァレーリが次々に口に入れて叫んでいく。
「ダニエラうるさい!あ、油部分が美味しい!
これは揚げ方に因るのかしら。
米も・・・うん!こんな食感とは・・・信じられない・・・」
ブリアーニが再度驚いている。
「ウスターソースと肉が合いますね!
いやはや・・・凄いソースです。
塩味が基本なのに・・・この味は素晴らしい。
味が増えると言うのは気持ちが柔らかくなります。」
カストが頷きながらゆっくりと食べている。
「ん~・・・なるほど・・・
これは目玉商品になるわ。
この感じだと・・・うん、王都でも流行りそうね。」
レバントが周りを見ながら食べている。
「・・・これはシモーナ殿の重要度が段違いになるかも・・・
ん~・・・王都にウスターソースをいきなり入れるのは危険か?」
フレッディが何やら思案している。
「あぁー♪」
「美味しぃ~♪」
アリスとエリカがトンカツを1口食べ、すぐにパンを入れ満喫している。
まだ、玄米には到達していない。
「・・・ん~・・・気持ち腹に溜る気がする・・・
そんなに食べている気がしないのだが・・・」
「マイヤー殿もですか?」
マイヤーが呟くと隣のベイノンが驚いたように聞いて来る。
「ベイノンもか?」
「ええ・・・初めて食べたというのもあるのかもしれませんが・・・
腹が重く感じますね。
米・・・不思議な食べ物ですね。」
「あとで所長と反省会だろうな。
その時聞いてみよう。」
「ええ。
・・・皆気にせず食べていますね。」
ベイノンが周囲を見回して呆れている。
「所長の先見の明だろう。
これも産業の一角になりそうだ。」
「ええ、農業部門は大変そうです。」
マイヤーとベイノンが「幸先が良いね」と笑いながら食べるのだった。
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