第1302話 試食。(玄米飯は意外と美味しい。)
「よいしょっと!」
武雄が3つ目の鍋を中火の所に置く、横には2つ目が弱火にかけられていた。
「タケオ!タケオ!」
コノハが火から外された1つ目の鍋を前にソワソワしている。
「精霊殿・・・あと・・・4分です。」
武雄が時計を見ながら言う。
「んー!!!待ち遠しいわ!
えーっと・・・湯煎している鉄のトレイの準備も・・・問題なしね。」
コノハが今度は大きな桶にお湯を入れ、その中に鉄のトレイを入れた物の前に移動してくる。
「おひつがあれば良いのですが・・・
今回はこれで冷めるのを予防しましょう。」
「おひつ・・・職人に作らせないといけないわね。」
「ん~・・・すぐに作ってくれるかなぁ・・・
米が定着すれば良いんですけどね。」
「そうねぇ・・・」
コノハが鉄のトレイを見ながら言うのだった。
魔王国の3人は。
「・・・中火と弱火を用意して沸騰したら中火から弱火にそして火から外すっと・・・」
ブリアーニがメモ書きをしている。
「・・・あの丸い道具はなんですかね?
時を見ているのでしょうか。」
「不思議な物ね。
10分とか言っているけど・・・沸騰してから弱火にするというのはわかるわ。」
「キタミザト様、油や盛り付け用の皿と盛り付けの用意が出来ましたが・・・揚げるのは私で良いのでしょうか?」
料理人が武雄に聞いて来る。
「構いませんよ。
ここに下準備を終わらせた肉を用意しています。」
「作業は目の端に入れておりましたが・・・
この肉の回りのはパン・・・でしたね?」
「ええ、こうやるとカリッとフワッと揚がります。
あ・・・この方法まだエルヴィス伯爵家や王城でしかしていませんでしたね。
・・・まぁ良いです。
こういった料理もあると思っておけば良いでしょう。
そのうち街の方でも教える事ですし。」
「畏まりました。
料理の出来栄えについてキタミザト様が言わんとする事がイマイチわかりませんが、このやり方が新しいというのは理解しました。
当分はこの店で使わせていただきます。
あと街の方で流行り出したら周りの商店にも教えようかと思います。」
「はい、エルヴィス家の方にはそのように話をしておきます。
それと揚げるのは皆さんが来てからでしょう。」
「はい、わかりました。
では、一旦私は店内を確認してきます。」
料理人が厨房から出て行く。
・・
・
武雄が1個目の鍋を持って来る。
その様子を皆が見守っている。
「さて・・・どうでしょうか。」
「「「・・・」」」
と武雄が蓋を開ける。
「「「おぉぉ・・・」」」
皆が感嘆の声を出す。
「割と茶色いですね。」
「白い粒もあるわね。」
「匂いが・・・独特ですね。」
魔王国3人が呟く。
武雄はしゃもじ(武雄的にしゃもじ、木で出来たヘラ)で中を一混ぜする。
「タケオ様!出来たのですね!」
「タケオさん!何が出来たの!」
アリスとエリカも歓声を聞いて厨房にやって来る。
「試食しますよ~。」
「「「おおぉ!」」」
皆が軽く拍手する。
「スプーンに乗せて・・はい。」
武雄が皆に渡すのだった。
・・
・
「普通に食べれます。」
「私も問題ないですね。」
アリスとエリカがモグモグさせながら頷いている。
「初めての食感。
こんな食べ方があったなんて・・・」
「結構弾力がありますね・・・良く噛むとじんわりと甘さも出て来ます。」
「ん~・・・肉が良いかも。」
ブリアーニ、シモーナ、レバントが評価している。
「・・・」
「タケオ、どう?」
「やはり少し癖はありますが、想像より食べやすくなっていますね。
これは品種なのか、調理法なのか・・・4時間浸けた事や塩を入れた事、シイタケで味を追加した事等いろいろ要因はあるのでしょうが・・・うん、普通に食べれます。
食感が固いのはしょうがありませんし、匂いもあるにはありますが、シイタケのおかげで私は気になりませんね。」
「ほ・・・良かった。」
コノハが少し安堵する。
「精霊殿、要因は?」
武雄が聞き返す。
「白米よりも力強く洗ったでしょう?
・・・これには賛否は分かれる所ではあるけど・・・これが1つね。
ガッチガチに洗う事で玄米の表面に傷をしっかりと多く付け、水を良く吸わせる事を重視したの。
さらに出汁と塩を入れて糠臭さと苦みを紛らわせたのが1つ。」
「なるほどね。
で、アリスとエリカさん、微妙に落胆しないで貰えませんか?」
「・・・別に落胆はしていませんよ?」
「・・・」
アリスはそう言うがアリスもエリカも「もっと凄いのがくると思ってた」という感想が顔から滲み出ている。
「はぁ・・・まぁ、食べて貰えそうなのがわかっただけでも良しとしますかね。」
「タケオ♪」
コノハが拳をグーにして武雄に向ける。
「導入段階としては十分ですね。
玄米でも十分食べられるという事がわかりました。
この分なら白米も期待できます。」
「これから忙しくなるわよ!」
武雄がコノハにグータッチをする。
「戻りました~♪
お!嗅ぎなれない匂いがしますね。」
「若干甘めの匂いですか?」
「パンとも違う匂いですね。」
酒場の入り口からヴァレーリ達の声が聞こえるのだった。
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