第1299話 久しぶりにジーナとスミス。(王都での情報源を共有しよう。)
スミス達は王都の東隣の町に到着して、スミスとジーナは大きな屋敷から出て来ていた。
「はぁ・・・王都の壁殿への挨拶は終わったね。
前の時はしなかったのに今回はするんだね。」
「前回王都で話をしたと聞いていますから、今回は必要です。
普通に挨拶程度でしたから問題ないでしょう。
あとスミス様、宿に戻ったら伝文3通にサインをお願いします。」
「うん、レイラお姉様と学院だとはわかるんだけど、残りは誰に送るの?」
「エイミー殿下です。
実質寄宿舎の統括をされているはずです。
なので今日の夜か明日の朝一で昼過ぎに到着する事を言っておけば受付が早いと思います。」
「・・・うん、ジーナの言う通りだね。
その通りで行こうか。
あ、それと厨房を借りるなら料理長には必要じゃないかな?」
「ん~・・・そこは私も悩んだのですが、一使用人という括りなのではないかと考えました。
なので、雇い主の一角であるレイラ殿下に挨拶をして、ご主人様のお願い書をお見せすれば問題ないかと。」
「・・・そうかぁ。
なら3通で良いんだね。
あとタケオ様とアリスお姉様が東町に行った続報は?」
「夕霧からはまだ・・・
悪い知らせが来ないのは順調という事なのではないかと、あとフレデリック様から王都向けのライ麦の用意が出来たそうです。
こちらは専売局からの定期便に乗せるそうです。」
「うん、順調だね。」
「王都に残したスライムからの連絡は特にありません。」
「・・・スライムは便利だね。」
「便利過ぎです。
普通なら王都とでは最短でも6日かけて渡す情報が2日程度で渡せます。
それにエルヴィス伯爵邸に夕霧を配置して全体のスライムの情報を管理し、領主の意向も確認していますし、領内の魔物の監視は時雨がしていて即命令が出せるでしょう。
遊びに行っているご主人様には初雪が付いて伯爵様や夕霧、時雨と連絡を取り合っているはずです。
さらに私には磯風が付いてくれているので寄宿舎と王都の情報が手に入ります。
何ですかね、この情報の伝達の迅速さと広範囲は・・・とても一領主、一貴族の情報量ではありません。」
ジーナが呆れている。
「夕霧達が僕達に付いてくれて良かったね。」
「ご主人様のおかげです・・・これに頼り切ってはいけませんが、有効に活用する必要があります。
スミス様、手紙や小包等は定期的にエルヴィス伯爵様に送りましょう。
そうする事で表向き私達が情報源であると周りに見せておく事が必要があります。」
「・・・タケオ様やお爺さまの王都側への公式見解は僕達の情報のみという事だね?」
「はい、領内の事が詳しいのは王都ではあまり気にもなさらないでしょうが、王都の情報が筒抜けになっているのは知られてはマズいかと。」
「・・・ジーナはするんだね?」
スミスが目を細める。
「はい、寄宿舎内の人員のみならず、王都に居る貴族の動向も手に入れます。
私が王都に来たのは人間社会を見る為でもありますが、キタミザト家、エルヴィス家の為に情報を集める為だと思っています。」
「うん、ジーナの覚悟はわかりました。
そうなると・・・スライムだけじゃないんだろうね。
そういえば前に寄宿舎に行った際に狼になったようだけど関係があるかな?」
「はい、寄宿舎の主を情報提供者として迎えています。
といっても寄宿舎と貴族の館のみですので些か頼りないとは思いますが・・・そこは磯風のスライム達も動員させ広範囲で対応します。」
「・・・ジーナ、磯風もだけど・・・やり過ぎないようにね。
いくらスライム達を使うにしてもこちらが覗いているとわかればその者とは敵対する事になるからね。
絶対に見つからない事、気になる事があってそれがリスクが高いのなら調べないというのも選択肢として正しいと思うよ。
まずはこっちが確実に安全でないといけないのだからね。
危険を冒して手に入れる情報というのは僕達の段階ではないと思っていないといけないよ。」
「はい、わかりました。
ちなみにリスクが高いが危険で有益な情報が手に入るとわかったらどういたしますか?」
「僕と交流がある方を頼るよ。」
「・・・レイラ殿下でしょうか。」
「それとタケオ様関係だね。
もちろんタケオ様に了承は取ってから依頼するけど・・・往復4日程度で回答がくるし、その間に僕達も準備は出来るでしょう?」
「確かに・・・ちなみにご主人様関係というと・・・」
「王都守備隊だよ。
レイラお姉様でも良いんだけど・・・ほらタケオ様の部下の方々は元幹部ばかりだしね。
その辺の情報を渡せば良しなにしてくれそうでしょう?
向こうも情報は欲しいだろうしね、情報を渡せば向こうで判断してくれると思うんだよね。」
「・・・スミス様も随分と貴族ですね。」
ジーナがスミスを感心している。
「貴族ってそういう物だしね。
ジーナだってお付だけど元貴族だから情報の大切さはわかるでしょう?
人を使う大切さも。」
「はい、どちらも大切です。
ですが、貴族としてのスミス様はご立派なのかもしれませんが、男子としてはまだまだのご様子です。」
「ん?どうしてかな?」
「はぁ・・・そういう情報はレイラ殿下やご主人様には当然渡して指示を仰ぎますが、エイミー殿下にも渡す事をお勧めします。」
ジーナが疲れた顔をさせる。
「なぜ?レイラお姉様とタケオ様で十分じゃないのかな?」
「・・・まずエイミー殿下のご気性ならスミス様を余所に追いやって情報を使うとは思えませんし、使うならスミス様がいる前で使われるでしょう。
さらにエイミー殿下は第2皇子ニール殿下の代行権限を持っています。
貴族達への詰問も出来ますし、エイミー殿下は得意そうです。」
「ん~・・・巻き込んで良いのかな?」
「どちらかといえば向こうの案件に私達が勝手に首を突っ込むのだと思いますが・・・まぁ情報は集めるだけ集めて上位の方々に有益な情報のみを渡して向こうで判断して貰うのが一番でしょうか。
私としては私達が動くのは悪手だと思いますので、他人を動かすべきでしょう。」
「・・・ジーナも貴族だねぇ。」
「元貴族令嬢です。
・・・そういえばこういった事が好きな方が近くに居れば意見を交換したいのですが・・・」
「それはレイラお姉様だね。
でもスライムが情報源とは出せないから情報源は秘密でと言って話を振るしかないかな?」
「そこはお任せください。
寄宿舎の主の情報源と言えば詮索は最小で済むと思われます。」
「ジーナ・・・用意周到だね。」
「ご主人様の部下ですので。」
ジーナがスミスの言葉に嬉しそうに返事をするのだった。
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