第1295話 戻って来て。(7手目、商品の受け渡し。)
アリスとエリカ、シモーナは荷台の確認を終えてお茶をしている。
「・・・ちょっと不穏ですね。」
「はい、身内と言えど少し警戒はしているのですが、陛下付きの侍女様が来たので率先して街道整備はしてくれています。」
「私達からは何も出来ませんが・・・出来るのは輸入品を定着させる事でしょうか。
そうすればシモーナさんの店の価値が上がると思うのですが。」
「確かに価値が上がりますが・・・いきなりは危険でしょうか。
ちなみにウォルトウィスキー以外でどういった物がありますか?」
「あ、それはもう用意しています。」
「既に?」
「はい。
ウスターソースという新しいソースになります。
ですが、まだ領内への普及が始まったばかりで国外への輸出は相当少ないのです。
なので、まずはシモーナさんに卸して頂いてファロン子爵領の酒場で使って貰えないでしょうか。」
「味はどうでしょうか・・・」
「あ、それは今日の夕食に出します。」
「夕食ですか?」
「はい、私達は米を食べてみようと思っていますのでこれから下準備をするんです。
シモーナさんにもその時に米の料理とウスターソースを楽しんで頂ければ良いですね。
気に入って頂けたら良いのですが。」
「ちなみに他国に輸出するという事は気に入られているのですよね?」
「ええ!
アズパール王国の全土でウスターソースの販路を今作っている最中です。
私達の受け持ちは魔王国に面している3伯爵領なのですが、生産が受注に追いつかないんです。
まだ領内へ行きわたってもいませんので生産者には苦労を掛けています。」
「凄いソースなのですね?」
「ええ、塩、トマトに次ぐウスターソースという3個目の味です。」
「なるほど・・・それは楽しみです。」
と武雄達が帰って来る。
「戻りました。」
「失礼します。」
「あ~♪」
「お茶飲む~・・・」
「「ははは。」」
「♪」
「「・・・」」
武雄を先頭にマイヤー、ビエラ、ヴァレーリ、ブリアーニ、レバント、タローマティ、カストにフレッディと入り席に座る。
と店員がやってきて皆にお茶を配膳する。
「ビエラちゃんとダニエラさん、服に土汚れが・・・」
アリスが若干驚きながら見ている「その予定はなかったですよね」という感じだ。
「ビエラ殿の楽しそうな顔・・・タケオさんは普通ですね。」
「まぁ・・・私はあまり土と戯れていませんから。」
「大丈夫だったのですか?」
「ええ、ちょっとあの2人で入念にやりあっただけです。
顔とか手は洗ったのですけどね。
服はこれから着替えて軽く洗った方が良いでしょう。」
武雄が苦笑している。
「おばさん?」
シモーナがレバントに聞く
「私は戦闘の事はわからないけど・・・まぁ・・・レベルの高いどつき合いだったかな?
ダニエラちゃんが満足したから終わりにしてきたの。」
「はぁ・・・心地よい疲れです。
あ、お茶が美味しい。」
ヴァレーリがゆっくりとお茶を飲んでいる。
他の面々は「無事に終わって良かった」という安堵の顔をさせながらお茶を飲んでいる。
「まぁ、こっちも終わりました。
アリス達はどうでしたか?」
武雄が聞いて来る。
「はい、双方の積み荷の確認は終わりました。
個数共に問題はありません。」
「はい、わかりました。
えーっと・・・個数が問題ないという事で・・・受領書と請求書はありますか?」
「はい!用意しています。」
シモーナが書類を取り出し武雄の前に置く。
「失礼して・・・はい、了解です。
えーっと・・・追加が堅魚のこの金額分ですね。
シモーナさん、今後も堅魚はこの金額でよろしいのですね?」
「はい!
価格については1年ごとの改定を予定していますが、突発的な事故や事変がない限りこの金額でお願いします。」
「わかりました。
こちらからは要請のあったウォルトウィスキーについてですが、仲介業者に連絡して何とか6か月分を回して貰いました。」
武雄が普通にシモーナに言うとその言葉を聞いた皆がシモーナを見る。
「あ・・・はい、ご無理を言ってすみませんでした。」
「いえいえ、こちらこそ米や堅魚節を持って来て欲しいと言ってこうも早く対応して頂いたのです。
シモーナさんの誠意ある対応に対し、こちらも対応させて貰ったのみです。
ですが、本音を言うと今回のようなウォルトウィスキーの急な一括購入は今後は避けていただけますか?
関係各所を回るのも大変ですので・・・2か月分は常時持っていたのですが、流石に6か月は今回たまたま用意はできましたが・・・2か月分以上の一括をする場合は1か月前くらいまでにご連絡ください。
あ、それと10月以降は3か月毎とさせてください。」
「ウォルトウィスキーについては急に用立てる場合も事前にご連絡します。
それと輸送が3か月毎になるとの事ですので魔王国内の分配方法はこちらで考えさせて貰います。
それにこちらも堅魚を3か月毎に納入をさせて頂きますので輸送時期を合わせられると思います。」
「それは今後の文面のやり取りで確認をお願いします。
と・・・こちらが私達の方からの受領書と請求書になります。」
武雄が書類をシモーナの前に置く。
「はい・・・失礼します・・・中身は問題ないですね。」
シモーナが書類の確認をする。
「では・・・お金ですね。」
「はい。」
武雄とシモーナはお互いに貨幣を数えるのだった。
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