第1293話 試してみよう。(5手目、ヴァレーリからの試練。)
ヴァレーリは一旦武雄から離れて仕切り直しをしていた。
お互いに構えは先程と同じ。
ヴァレーリは今の事を考える。
今の一撃・・・予定通り5割の力で打ち込んだが体勢を崩す事も出来なかった。
この威力なら魔王軍兵士ならそれなりに踏ん張って耐えたりする者は居るのだが・・・人間種がかぁ・・・
体勢を崩せないのは何かしているという事か。
まぁ十中八九魔法となるし、キタミザト殿は『初級が使える』と言っていたか。
となると・・・シールドか?
ベッリ達エルダーリッチが使う手ではあるが・・・
確か、ベッリが言うにはシールドを厚くして我の攻撃を耐えうるとなるとそれなりに魔力をかけないといけないとかなんとか言っていたか・・・それなりに魔力量は持っているという事か。
5割で耐えうるとなると・・・次は6割か?
同じ軌道でやるか。
一方の武雄。
まさかシールド×25でギリギリだとはアリスでさえ×15か20程度なのに・・・それに明らかに手加減して貰っていそうなんですけどね・・・
それにヴァレーリ殿の顔は・・・あれは驚いていたかな?
となると次は攻撃力を上げるの相場なんですけど。
いくつ上げるか・・・たぶん今の攻撃を耐えるのはシールド×27か28として・・・
最大の35で耐えてみるしかないか。
半ば諦めているのだった。
「♪」
ヴァレーリが今度は先程よりも気楽そうに武雄との間合いを詰めて来る。
「・・・」
武雄はさっきの体勢のまま見ている。
と先ほどの位置でヴァレーリが右手を左肩に振り上げ、武雄の胸目がけて振り下ろしてくる。
全くさっきと同じ軌道で先ほどよりも若干速い程度だった。
武雄も先ほどと同じように木剣で受け止める。
今度はシールドから音はしてこない。
「ふふっ♪」
と3秒程度でヴァレーリが武雄から距離を取る。
「・・・」
武雄も警戒態勢を解きヴァレーリを見ている。
「ふふふ、いつまで耐えれるかな?」
ヴァレーリは少し趣旨を変え始めるのだった。
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魔王国一行。
「あ~・・・タローマティさん、これはさっきと同じなのですか?」
「はい、レバント様。
ダニエラが繰り出した先の攻撃をキタミザト子爵は受けとめていましたので、ダニエラは今度は先程よりも少し力を加えて攻撃したという事になります。
剣の軌道は変えずに全く同じで・・・です。」
「はぁ・・・何の為でしょうか?」
レバントが不思議そうな顔をさせる。
「さて・・・ダニエラが何か試そうとしているのでしょう。」
「はぁ・・・模擬戦なので剣同士を叩きつけ合うと思っていたのですが・・・
割と地味ですね。」
「そうですね。」
レバントの言葉にタローマティが頷くのだった。
「・・・カス・・・グラート殿どう見ますか?」
「カールラ殿あれはキタミザト子爵殿を褒めるべきでしょう。
今の一撃は先程よりも強そうでした。
それを受けて体勢を崩さないのは立派です・・・ですが・・・」
「あと何回耐えられるのでしょうか。」
「・・・ふむ・・・体を入れる覚悟は必要でしょうか。」
カストがにわかに覚悟を決めるのだった。
マイヤー達はというと。
「同じ位置から同じ角度で速さが速くとなると・・・明らかに力が増されていますね。」
「マイヤー様、どうでしょうか?」
「こればかりは所長にかかっているでしょう。
周りから見ているから私達はわかりますが、やっている所長とすれば結構ギリギリで剣が来ているはずです。
同じ軌道で来ているからというのも対応しやすいという事なのでしょうけども。」
「あ~・・・」
「ん?ビエラ、ヴァレーリ陛下は手を抜いているのは私達もわかっていますよ?」
「あ。あ~?」
「何ですそれ、『最速の連撃』ってなんですか?」
「それは聞いた事ありますね。
物語か何かだと思っていましたが・・・あるのですね。
ミア殿、早く言えば2回連続で振るという事ですね。」
「?」
ミアが首を傾げる。
「あ~。」
ビエラが一歩踏み出す間に2回腕を振る。
「・・・それって強いんですか?」
ミアが呆れている。
「あ~・・・」
ビエラが呆れた目をする。
「え?物凄く速いから結構威力あるのですか?
マイヤー様はどうですか?」
「私達だと振り上げてから振り下げるといった動作の2連続攻撃はするのですけど・・・
私達が1回振る動作の間で2回振るというのは・・・正直わかりません。」
「へぇ~・・・わかりません。」
「あ~・・・」
「いや、結構痛いよと言われても。
あとで見せてくれるか聞いてみましょうか。」
「はい!」
ミアの提案にビエラが返事をするのだった。
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ヴァレーリは再び武雄から離れて仕切り直しをしていた。
「ほほぉ♪」
ヴァレーリは想定よりも武雄が攻撃を耐えているのが楽しくなってきていた。
現状、目の前の男は自分の7割の力加減まで耐えていた。
ヴァレーリが考える物語上の鮮紅の実力と同等だと示していた。
「まさか人間種でここまでの逸材がいるとは。
今回の旅に付いて来て良かったな。
さ、次は耐えられるかな?」
ヴァレーリが軽く笑いながら武雄に向かって行くのだった。
武雄はというと。
「楽しそうにされてらっしゃる・・・」
今の攻撃でシールドが悲鳴を上げていた。
それに剣の振られる速さももはや目では何とか追えるが見て考える余裕はなかった。
武雄的には目の前のヴァレーリは人型でありながらドラゴンの尻尾と同等の攻撃を繰り出されているのに等しかった。
なので・・・次は無い。
「さて・・・耐える方法を変えるか。
はぁ・・・」
武雄が考えを巡らせるのだった。
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