第1292話 さて・・・。(4手目、思惑を外せ。)
引き続き東町の門外にて。
「では、これよりしましょう。
1回勝負です。
ダニエラ、キタミザト殿構いませんね。」
審判はフレッディがするようだ。
「はい♪」
「・・・ええ・・・」
ヴァレーリが楽しそうに、武雄は哀愁を漂わせながら言う。
ちなみに2人ともショートソードの木剣が渡されていた。
「双方、大怪我をさせないように!
これは厳命です!
有効打が入ったら終わりです。何かありますか?」
「私はありません。」
「あ・・・私は初級魔法が使えるのですが構いませんか?」
武雄が思い出したかのように言う。
「ええ、構いません。
周りを巻き込むような中級以降の魔法なら制限する必要があるとは思いますが、初級魔法では必要ないでしょう。
ダニエラも良いですね。」
「平気です。
どのような攻撃も構いません。
それこそ異種族との戦いの醍醐味でしょう!」
「模擬戦です!これは模擬戦です!
・・・ダニエラは魔法は使いますか?」
「あ~・・・私は・・・自身の身体系程度ですからキタミザト子爵様に当てるような魔法はしません。
あくまで自分に向けてとなると思います。」
「・・・わかりました。
双方無理はないように!」
「手でも握りますか?」
「良いですね。」
武雄とヴァレーリが握手をしてお互いに距離を取るのだった。
・・
・
2人の距離は6m程度。
武雄はヴァレーリに対し、木剣を順手で右手に持ち。右足を前に出して少し半身に構える。
ヴァレーリは左の腰に木剣を持って行き明らかに走り込んで横殴りか、左肩に向けて斬り上げるかの2通りであると宣言しているような体勢を取る。
「構え!」
「「・・・」」
「始め!」
「はぁぁぁ!」
ヴァレーリが勢い良く飛び込んでくるが。
「あ・・・」
ヴァレーリの片足が何かに躓き足が前に出ない。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぐへぇっ・・・・」
そして武雄の目の前に剣を横に構えたままヘッドスライディングをかましてくる。
・・・ヴァレーリが顔も上げられずにプルプル震えているが、意識はあるようだ。
「・・・えーっと・・・」
武雄は木剣の剣先でヴァレーリの頭をコツンと軽く突っつく。
とビクッとヴァレーリはするが、やはり顔は上げない。
武雄がフレッディを見ると、フレッディは何とも言えない顔をさせている。
「ゆ・・・有効な一打になるでしょう・・・」
その一言だけを絞り出してくる。
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「ダニエラ・・・そんなに楽しみだったの・・・」
「はぁ・・・楽しみにし過ぎです。
気持ちが追い付いていません。」
「ダニエラちゃん・・・足がもつれたのね。」
魔王国の観戦者3人が呆れている。
「♪」
タローマティは楽しそうだ。
「マイヤー様・・・」
「ええ・・・何とか上手く行ったみたいですが・・・
向こうにバレてないかが心配ですね。」
「ですよねー。」
魔王国の観戦者3人と武雄達を挟んで反対側で見ているマイヤーとミアは幾分ホッとしている。
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「・・・ダニエラさん・・・1回でしたが・・・もう1回しますか?」
武雄が倒れているヴァレーリに声をかける。
「ふ・・・ふぐっ!
か・・・かだじげない。」
ヴァレーリはやっと立つが顔は真っ赤で泣いていて恐縮しまくっていた。
「気になさらないでください。
仕切り直しで行きましょう。
今度こそ1回勝負です。」
「はぃ・・・」
トボトボとヴァレーリが開始した場所に戻って行く。
(あ~・・・パナ、やりすぎたのでしょうか?)
(タケオ、想定通りとなりました。
種族問わず精神的に追い詰めるのは効果的だということでしょう。)
(ああいう剣とかが得意な方はなぜか直線的に攻撃してきますよね。)
(それだけ腕に自信があるのでしょう。
タケオ、次は出来ませんね。)
(飽きるまで防ぎきるしかないかもしれませんね。
パナ、ケアよろしく)
(了解。)
「構え!」
フレッディが用意を言い渡す。
武雄は今度は木剣を逆手で右手に持ち。左手を前に軽く出し左足を前に出しての少し半身に構える。
ヴァレーリは木剣を順手で右手に持ち。右足を前に出して少し半身に構える。
もう走り込んでこないようだ。
そしてさっきまで顔を真っ赤にしていたのにもう普通の顔色で落ち着きを取り戻していた。
武雄は「流石は武の頂点というところですか」と感心するのだった。
「始め!」
「「・・・」」
始めの合図とともにヴァレーリは慎重に武雄に近づいて行く。
武雄は微動だにせずヴァレーリを見ている。
4m
3m
2m
「!」
ヴァレーリが右手を左肩に振り上げ、武雄の胸目がけて振り下ろしてくる。
武雄は「見えなくはない程度に速い・・・ビエラの言う通り本当にアリス並みか」と木剣を受けるために右手を上げると同時に左手で木剣と木剣の間にシールドを仕掛けるのだった。
「・・・くっ・・・」
「・・・っ・・・」
ヴァレーリが苦々しく、武雄も眉間に皺を寄せながら木剣を合わせている。
端から見れば木剣の押し合いをしているようにも見えるが、実際はヴァレーリの木剣と武雄の木剣の間にはシールド×25を展開していたが、久々に「ミシミシッ」と音が聞こえるのだった。
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